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初日

 大会も無事終わり、俺は急ぎ帰路に就く。

 誰がどのクラスかは、明日貼り出されるらしい。まあ俺は多分Sだと思うし、あんまり関係ないけど。

 それよりエルだよエル。いきなり屋敷から連れ出しておいてなんだけど、寂しくなってないかな。



「お帰りなさいアル様!」


 家の扉を開ければ、そこで待っていたらしいエルが俺に飛びついてきた。

 なんとかそれを受け止める。


「ただいま…俺が帰ってくるって良く分かったね」

「いえ、四時間くらい前から待ってました!」


 ああ、それはなんとも…。


「じゃあ今からご飯作るから…」

「私もお手伝いします!」


 俺の最高のお気に入りであるエルだが、仮にもメイドなので、屋敷で少しだけ料理に洗濯等の手ほどきはしておいた。いつかは一生働かずに食っちゃ寝できる環境に置いてあげたい。それで、放置して偶に『本当に私は必要とされているのかな…』なんて不憫な姿を見せて欲しい。高望みし過ぎか…まあ、別にそうならないとしても手放すつもりはさらさらないのだけど。

 


「うーん…明日…いや、明後日、うん明後日。冒険者ギルドに顔を出しに行くから帰るのが凄い遅れると思う」

「はい、わかりました」


 寮にエルを置くのは不味いと判断してこの屋敷を衝動買いしたのは良いが、この屋敷のローンと維持費がヤバい。

 ヴァーミリア家に泣きつけば最悪何とかなるとは思うけれども、それはみっともない。何故ならば、今屋敷では俺の弟か妹が生まれているからだ。

 弟か妹に「おにいちゃんお金せびるのださい」なんて言われたら発狂して死んでしまう。気がする。

 まあそれと、単純に冒険者と言う仕事に興味があるだけだ。前世の記憶では、異世界に何らかの要因で飛ばされてしまった人間は、大半が冒険者として名を上げてなんか凄いことになるらしい。

 俺もちょっとだけそう言うの、体験してみたいのだ。

 命懸けで仕事をするのは流石に御免だが、災害級モンスターでも出てこない限り俺が負けることはない…と思うので、そんなシチュエーションは来ない筈。多分大丈夫だろう。


「今日は疲れたからもう寝る。片付けを頼んでいいか? 明日は俺がやるから」

「アル様の頼みとあれば、なんでもやらせてください。でも…」


 テーブルの反対側に座っていたエルがおもむろに立ち上がり、俺の傍までやって来たかと思うと俺をぎゅっと抱擁してくる。


「今日の分と、明日の分のアル様チャージです」

「じゃあ明日はチャージしなくていいのか?」

「…明日は、明日の分と明後日の分のアル様チャージがあります」


 なんて戯けたことを抜かしながら、とろんと溶けた目をして俺の体に体を擦りつけてくる。

 昔は、獣人はやっぱり獣みたいなマーキングが癖なのかな…なんて思ってたが、今はそれだけではないと分かる。

 息は荒くなってきたし、俺の体を弄り始めた。

 胸も腰も押し付けてくる。

 …いつも夜寝るときとかにこうやって体を擦りつけてくるのだが、その度にまだ時期ではないな…と何故か気分にならない。

 そういうことは、もっと依存させてから、あるいはもっと彼女が追い込まれてから。多分そうでもしないとそういう気分にならない気がする。自分でも良く分かっていないが。なんとも、面倒臭い癖を生まれつき与えられてしまったんだとつくづく嫌になる。


「…じゃあ、俺は風呂入って寝るから」


 まだ名残惜しそうに頭をグリグリと擦りつけてくるエルを振り払い、風呂へと足を進めた。











「朝…」


 俺はあまり朝が得意ではない。しかし、初日から遅刻は流石に不味いだろう。

 泣きそうになりながらベッドから出…横にエルが引っ付いていた。

 申し訳ないが、その両腕の拘束を取り払い、すぐさま制服へと着替える。

 さて、いざ登校と行こうか。



 学園の敷地に入れば、凄い沢山の生徒が集まっている所があった。

 何とか人込みを掻き分け、俺も何事かとそれを見てみれば…やはりと言うべきか、クラス分けについてだった。

 とりあえず一番上から見てみると…俺一番上にあった。


 Sクラス

 ――アルティ・ヴァーミリア 一位

 ――ロアナ 二位


 みたいな感じで俺の名前が載っていた。

 一番上に自分の名前があるとちょっとこっ恥ずかしいけど嬉しいもんだな。


「アールッティ!」


 なんて物思いに耽っていた俺に後ろから飛びついてくる者が。


「マリア…」

「良く分かったねー!」

「こんな悪質なタックルをかましてくるのは俺の知るところだとお前しかいないから」

「えー、何それ」


 不服そうな顔をしているマリアを無視して、Sクラスの教室がどこにあるのかを探し始めることにする。


 校舎に入って、通路を進み、一階の一番奥。

 「一年 Sクラス」と書かれた教室が確かにあった。


「よし、入るか」

「うん! 行こう」


 マリアも当然と言えば当然だが、Sクラスらしい。準決勝まで残っているのだから上位四位なのは確定だもんな。

 そして俺達は教室へと入っていった。






 至って普通の教室。だが、やはりと言うべきか。

 椅子の数は十個程度、そのせいか教室はガランとした印象を受ける。


 既に教室には何人か席についている者が居て、その中にはロアナの姿もあった。


「…」


 彼女は俺の事を一瞥するなり、すぐさま視線を逸らした。

 嫌われちゃったかな?


 改めて他の人を見てみると、俺と同じの黒髪をぼさぼさにして机に突っ伏している少女や、何故か椅子に座らず座禅を組んでいるヤツとか結構変なのが居た。

 とりあえず俺も指定された席に座るとしよう。

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