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クラス決め 決勝

 会場の外では日が傾き始め、だいたい六時ごろかな~、朝早くからこんな時間まで生徒を働かせるとはなんたる学園だ…なんてそんなことを考えながら、決戦の地へと歩みを進める。決戦の地とかちょっと重苦しい言い方ではあるけど。


 そこに足を踏み入れれば、かつてない程の圧をその全身で感じさせられる。

 話程度にしか聞いていないが、大会で彼女と当たった人間のうち何人かが突然の体調不良で棄権したそう。

 なんたる軟弱者かと思っていたが…そりゃ、こんな圧をまともに浴びたら気持ちも悪くなるだろうな。

 聖剣を持ち込むのは流石に、と言うことで普通の剣を右腕に保持している。

 勇者ロアナ。父が言っていたあの勇者。

 聖剣を扱える稀有な存在。

 勇者についてはよく知らないが…とにかくこれから先順風満帆な人生が約束されているであろう人間であることは間違いないだろう。

 そんな人間に俺は興味を持つことはない筈なのだが…どうにも彼女の事が気になる。

 これが…恋!? ……嘘嘘冗談だって。


 彼女も少なからず俺の事を脅威だと思っていてくれるのか、今までは特に表情が変わる様子も見えなかったが、少し警戒の色が浮き出ている。


「それでは決勝戦を行います!」


 そう実況が告げると同時に…斬られた。

 ガードが間に合ったのはシンプルに奇跡と感覚。運命の能力が開花してからは、こうやって未来が見えているかのような動きを無意識にできるようになった。が、自分から能動的にやろうとしてもうまくいっていない。

 なんて余談は置いておいて。


 早すぎて見えなかったというのが正直な感想。

 純粋な剣技、体術において、彼女は俺の数段階上を行っている。

 近接戦で次はないだろう。すぐ距離を取り、巨神を召喚。

 雷を纏ったランスで地表一体を薙ぎ払う。

 それを跳躍し躱したロアナに


「雷槍!」


 雷の槍を数百本生み出し、彼女を狙う。

 ついでに突風も巻き起こし、空中で身動きが取りづらいように小細工。

 そんな工夫も虚しく、あちらも青い雷と眩い光を纏った斬撃で槍を全て撃ち落してしまった。

 しかしながら、これでロアナの使う魔法の傾向が分かった。

 光属性に雷属性だ。

 光属性に適正のある人間はそうそう居ない。俺は持ち前のアホ魔力量で無理矢理回復魔法程度なら使えるようにしているが、光魔法の攻撃魔法は使っていない。

 それに対面するのも初めてで、どんな攻撃が襲ってくるのか未だ不明。


「ッ!」


 ロアナが光を纏った剣を一振り。黄金の斬撃が飛び、それだけで巨神の左腕が粉砕された。


「な―――!」


 巨神の一部が破壊されることは幾度かあったが、ここまであっさりと破壊されたのは初めてだ。

 すぐさま俺の魔力を勝手に使い、体を修復する巨神だが、ロアナが剣を振る度にガンガン体が壊れていく。

 このペースだとワンチャン魔力切れで負ける…!

 準決勝とかで魔力結構使ったから余裕もないんだよな…!

 巨神への魔力提供をやめ、巨神が音を立てて崩れるのを尻目に、その崩れる体を足場代わりに彼女の方へ跳躍。

 今回もまた運命の能力に頼ることになりそうだ。


「はああッ!」


 自分の魔力の三割が飛ぶ。

 残りは五割あればいい方か。

 思い描くのは、不可視で防御不可の斬撃により、彼女が敗北する未来。

 レイピアに魔力が集まるのが感覚で理解でき、それがうねるような斬撃へ姿を変え、彼女を襲う。

 




「はあっ?」


 確かに、俺の斬撃。運命を捻じ曲げる理不尽の一撃は彼女を捉えた筈だ。

 しかし何故…何故()()()()()

 百歩譲って、超人的な感覚で不可視と言う部分は解消されたとしよう。

 しかし、防御不可の一撃だった筈なのだ。

 万が一にでも止められてはいけないのだ。


「くぅ…」


 彼女は斬撃を止めたには止めたが、荒い息を繰り返している。

 それを見て、合点が行く。

 さっき俺が無意識的にマリアの魅了を抵抗したときのように、魔力を使えば俺の運命の能力も抵抗することが出来る…のだろう。

 にわかには信じられないが、結局運命を変えると言っても魔力を使った魔法の域を出ないので、それ以上の魔力をぶつければ消えるというロジックもまあ分からないでもない。


 俺の切り札を止められた事には心底驚いて、柄にもなく声を出してしまったが、冷静に考えてみるとあの疲れようなら抵抗自体でかなりの魔力を消費したっぽい気がする。

 先ほどまでの動きも出来ないだろうし。

 ならば次もう一度運命の能力を使えば多分勝てるだろう。

 念には念を入れて、適当に数回撃ち合って、魔力と体力を削ってからしっかり決め切ろう。

 と言っても、巨神をもう一回出すと運命の能力で使う時の魔力が足りなくなる気がするから、生身で戦わないといけない。


 レイピアを構え、またも剣を発光させるロアナの前に立つ。

 互いに言葉は不要。

 先に動くのはロアナ。

 体中に雷を纏い、神速のスピードで踏み込み、俺の目前へ。

 しかし、先程までのキレはない。ギリギリ俺でも見えるレベルだ。

 こちらもお返しとばかりに、レイピアに電流を走らせ――互いの剣が交差する。

 恐ろしい程の風圧。

 これを活かさんと、風魔法を発動、その風圧全てを手中に集め、暴れ狂う暴風を弾丸のように彼女へと射出。

 近距離からの魔法の発動にも動じず、素早くバックステップで距離を取られる、が。

 既に彼女の背後には数百の雷槍が待ち構えている。

 さあ、チェックメイトだ。

 後ろの槍を全て撃ち落そうなんて考えてそっちを向いた瞬間、背後から俺が襲うぞ。

 かと言って、槍を全無視して俺の方へ走ってくる程の馬鹿ではないと俺は思っているぞ。

 ならば、先程のように空中へ跳び上がって回避を試みるんじゃないか!?

 さあ、跳べ、跳べ! 無防備に跳び上がったところを仕留めてやる。


「――ふぅっ!」


 瞬間、彼女の剣に光の粒子が集まってくる。

 この期に及んで何をする気だろうか。

 その後、彼女は剣を構え、体を一回転。

 それと同時に集まった光の粒子が刃の形を模し、一気に巨大化。


 ――――俺もろとも全部薙ぎ払うつもりか!?

 これは不味いと上空へ跳び上がる、と同時に、俺がさっきまで立っていた所を光のレーザービームが焼き払い、背後の槍たちも瞬時に消滅した。どんな威力の技だよ。

 刹那、ロアナが俺の方へと跳び上がる。

 跳んだところを狩ろうと思っていた俺が、まさか跳ばされて狩られる側に回るとは。


 そのまま彼女の渾身の一撃が無防備な俺の体を襲う――――!


 確かに、彼女の剣は俺の体を捉えた。()()()()()()


「な!?」


 目の前で、確実に当たると確信した刃がその体をすり抜けたら、そりゃ驚くよな。

 まさか能力を攻撃ではなく防御に使わされるとは思わなかった、が。


「初めてここまで追い詰められたぞ。流石だな」


 そのままこちらへ飛んでくる彼女を抱き留め、残る魔力を全て使って体中から雷を流す。

 そして…


 ――――ビーー! と。


 ブザーが鳴った。

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