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寮へ…やっぱり寮はナシで

 それから数日。


「わあ…」

「デカ…」


 馬車の窓から見える帝都に思わず息を呑む。

 遠くからでも見上げる程の防壁。

 その向こうには天高く聳え立つ城が荘厳な雰囲気を漂わせている。


「そういえばアルティ様は帝都に来たことがありませんでしたね」


 御者がそう俺に喋りかけてくる。


「ああ、始めて来たな」

「ヴァーミリア領の発展具合も帝国で大変すばらしいものですが、帝都は更に凄いんですよ」


 なんて言いながら、馬車は更に速度を増して帝都への道を往く。









「ひっろ…」


 城門を潜り、帝都内へ。

 辺りを見渡すと、人、建物、人、建物、建物…。

 まさに大都会だ。

 エルは声を出す方法すらも忘れたかのように目を輝かせ、目前の光景に見とれていた。



「そろそろ着きますよ?」


 気が付けば、魔術学園の目の前まで来ていたようだ。

 城程ではないにせよ、かなり大きな施設が揃っている。

 門番に身分を証明すれば、


「ヴァーミリア侯爵家のアルティ様ですね、あちらの建物までお向かい下さい」


 と言われたので、馬車を降りて荷物を担ぐ。


「わ、私も何か持ちます!」


 とエルが申し出て来てくれたが、アホ重いから多分この年のまともに訓練してない女の子じゃ持てないよな…と思いつつ、適当に一つを渡せば、


「お、重い…」


 とは言いつつも荷物をしっかり持てていた。

 そういえばエルは身体能力に優れる獣人だったな…すっかり忘れていた。



 寮の管理人っぽい人が俺の部屋の場所を教えてくれた。

 どうやら四階の右端の部屋らしい。

 他にも何人か寮に荷物を運び入れていた生徒が居たが、そのほとんどが一階や二階ばかり。

 どうやら王族や公爵のような位の高い人間の方が上の部屋になるっぽい。

 そして見ていると…なんか、俺以外に貴族っぽい奴もちらほら見えたが、そのほとんどが従者を連れていない。

 従者連れてくるのって結構異端か?

 と言うか、日中は授業に出なくちゃいけないから…男子寮にエルを一人で置いていくことになるのか。

 おや? それって大丈夫か?

 エルの見た目はまさに天女の如き美しさ。しかしながら奴隷の首輪を付けていて…。


「どうしましたか?」


 そう顔を覗き込んでくるエル。


「やっぱり寮はナシ、ナシだ」


 もしかしたらエルが他の良く分からん男に襲われる可能性も0ではない。

 今すぐ寮を引き払って別の所に住居を構えよう。




「あー、わかりました」


 寮をやはりやめると管理人に伝えれば、意外とすんなりそれは通った。


「いやでも…なんでもないです」

「どうした、言いたいことがあるなら怒らないから聞かせて欲しいのだが」

「…ここら辺の土地の値段はバカになりませんよ…」


 痛い所を突いてくるじゃないか。

 確かに小遣いだけじゃ家を買う…のは少し厳しい。

 しかしながら、俺には心当たりがある。

 …いや、ヴァリアント商会のおっちゃんから金毟り取ろうとは考えてないぞ。


 俺の実力は海龍を打ち滅ぼせるレベル…頑張って鍛錬してきているから、それは既に超えている、と思うので、冒険者稼業でもやって金を稼ごうと思う。

 意外と冒険者の世界は甘くないのは百も承知だが…。

 何せ俺には実績があるのだ。これを生かさない手はないだろう。

 ローンで家を買うぞ。





 そう心に決めれば、早い所不動産に駆け込む…ってここもヴァリアント商会かよ!

 どれだけ事業を展開しているんだ。

 とりあえずヴァーミリア家の所の子供って伝えて、社会的信用を貰ってローンを組む。

 まあ…予想はしていたが小遣いだけじゃ到底足りないな。

 三カ月以内にまとまった資金を手に入れないと。



「あ、アル様…いきなりお屋敷を買ってどうしたんですか?」

「いや、特に深い意味はないけど」


 屋敷に荷物を運び入れて。エルが俺にそう聞いてくる。

 ここで君が他の男に襲われないか心配になった、とか言ったら束縛強い変態みたいで嫌だ。

 既に自分が変態なのは重々承知しているが。少し束縛強いという言葉に興奮してしまったのは内緒だ。


「本当ですか?」


 じとり、とした目線を向けてくるエル。


「……エルが怖がるかなって。他に色んな人が居るし」

「…そうですか、じゃあそう言うことにしておきますね」


 えへへ、と嗤うエル。

 まるで全てを見透かされているような感覚に陥って、彼女は恐ろしく強いな、と心の中でそう思った。

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