ゆうちゃん
実は私は天使である。
枦田 優子、小学4年生。友達はたくさん居ます。
「母さん!見て、母さん父さんと私だよ!」
「あらゆうちゃんとっても上手ね。将来は画家さんかしら?」
図画工作の授業で書いた「大切な思い出」、私は胸を張って家族旅行の時の絵を描いた。
水彩絵の具が体操着にべったりと着いてしまったけど、私は母さんに褒めて貰える事の方が嬉しくて、先生に何か言われた事など全く耳に入っていなかった。
「さん、たすさん、はー?」
宿題をしていれば母さんは私をとても褒めてくれる。だから私は音読の宿題は大好きだし、算数や他の宿題でも問題文を声に出すんだ。
「ろくー!」
「あらゆうちゃんは足し算が出来るのね、とっても凄いわ」
「ゆうちゃんは何でも出来るんだよ!空も飛べる!!」
あらあら、なんて言いながら母さんはまた笑ってくれる。私は母さんの笑顔が大好きだった。
「ただいま」
玄関のドアが開く音も大好きだ。大好きな父さんの音だから。
「父さんおかえりー!」
「おー優子、ただいま」
にっと歯を見せて笑う父さんの鞄を母さんが受け取りながら二人はキスをする。
「ずるい!私にも!私にも!」
腕を大きく広げバタバタと動かしなが私は母さんと父さんの足に抱きつく。
「ふふ、ゆうちゃんはまるで天使さんね」
母さんは私の右頬にキスをした。
「当たり前だ、俺たちの子供なんだから」
父さんは私の左頬にキスをした。
私達は天使である。
枦田 優子、享年6歳、今日は私達が死んでから3年目の夜。