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君にこれだけは伝えたくて

作者: ちゃとらねこ

 あらすじを軽く読むことを個人的にはおすすめします。でないと、突然ファンタジー要素(微)が出てきてしまうので…


 短いお話なので暇つぶしになれば幸いです。


 ではどうぞ。

 王都から外れた小高い丘の上に、一人の少女が立っていた。


 装いは一般的な聖職者の法衣と比べると幾分か豪華で荘厳な雰囲気さえ纏っている。


 法衣が顔に影を差して表情は読み取れない。


 吹き抜ける風に長い黄金色の髪と法衣を靡かせながら歩を進めていく先には、一本の無骨でところどころ欠けてしまった剣が突き立っている。


 剣の前で歩みを止めた少女は、懐から紙束と小さな箱を取り出した。


 紙束を開き、少女はぽつりと呟いた。






「嘘つき」








 ◇




 改めて手紙を書こうと思ったんだけど、いざ書こうとしたら何書けばいいかわからなくなりました。


 出だしがこんなのでごめんね。


 君は僕にどんな印象があった?


 昔の僕は自分でもわかるくらいにオドオドしてて情けなかったり頼りなさそうだったよね。


 僕が君を見た第一印象は“真面目そう”とか“凄くしっかりしてる”ってかんじだったな。


 昔はお互いに距離感を測りかねて、素っ気ない態度だったのが懐かしいよ。



 さて、茶番みたいな話はここまでにします。


 僕がこの手紙を書こうと思ったのは、一つだけ、絶対に伝えたいことがあったからです。


 別に旅の途中でとんでもない借金をしたとか、そういう話じゃないよ?


 絶対に自分の口で言葉にして伝えるつもりだけど、もしも喋れなくなったりしたらいやだから、ね?



 君もこれまでの旅で知った、というより、思い知らされたと思うけど、この世界は残酷です。


 非情で、無情で、それでもあるのは覆しようのない現実だけです。


 子供の頃に読んだ英雄譚なんて比じゃないくらいには辛いことだらけです。


 そんな中、今まで止まらずにいられたのは、君がずっと、僕を支えてくれていたからです。


 だから、ありがとう。


 本当に、ありがとう。


 これが言いたいことの一つ目です。



 まだあるの?とか思わないでね、もう一つだけだから。





 ◇


 ◇ ◇





 貴方が剣なら私は盾になるって言ってくれたこと、凄く嬉しかったです。


 貴方と私で、平和な世界をつくるって言葉は、今でも僕の心に刻まれています。


 辛いのは私達だけじゃない、今もどこかで誰かがもっと辛い思いをしてるのと言われて、はっとしたこともありました。





 ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇





 でも、かっこいい君だけじゃなくて。


 なんでこんな思いをしてまでって涙を流して。


 私じゃないとできないことだからって自分を励ましながら。


 私が、私達が世界を守るんだってやっぱり前を向く姿に、僕はとても勇気づけられました。






 ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇ ◇






 でも年頃の女の子らしいところもあって。


 街でかわいいって小声を漏らした時に赤くなってたのは可愛かったよ。


 孤児院の子達と無邪気そうに笑い合っている姿も見たし。


 流行の服を着ている人達を羨ましげに見ている時もあったのも覚えてるよ。






 ◇ ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






 そんな、多くの君の姿を見て、僕も、守りたいって思えるようになったんだ。


 これ以上はまだ恥ずかしいから言いたくないので、全部終わったら直接言います。


 やっぱり、こういうことは、ちゃんと生き残って、直接言いたくなるものだね。


 それでも、もしものために、続きも残します。






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







 守りたいという思いは、嘘じゃないよ。


 でも、僕が守りたいって思ったのは、君なんだ。


 誰かのためなら自分が傷つくことも躊躇しない君が、心配だったんだ。


 いつも影で一人泣いているのを見て、これ以上泣いてほしくないって思ったんだ。


 だから、僕は自分の気持ちに正直になることにしました。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「嘘つき…」




「嘘なんか…つかないでよ…」






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 君のことが、好きです。


 ずっと、好きでした。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「私はそんなの望んでなかった…!」






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ずっと僕のそばにいてください。



 僕に君のことを、守らせてください。



 守り続けさせてください。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「なんで…なんであんなことしたのよ…ッ!」







 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




 僕が、君を幸せにしてみせます。





 勇者の僕が、聖女の君を幸せにする権利をください。





 勇者の僕に、君を苦しみから救わせてください。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








 少女の脳裏にフラッシュバックするのは、あの日の記憶。



『僕が!僕が君を守り抜いてみせるからッ!!』



 あの日、貴方は世界よりも私を選んで。



 私も心の底から歓喜して。





 その罰が、下ったんだろうか。



 貴方の顔が柔らかくゆがむ様を見ることも、もう叶わない。


 貴方の喉から響く優しい声を聞くことも、もう叶わない。


 貴方の暖かい手に触れることさえも、もう二度と叶わない。




 これは、罰なのだろうか。






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






 最愛の君へ、愛情と祈りを込めて。






 君の顔が、いつまでも笑顔で輝いていますように。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇









「うそ…つき……っ」








 一際強い風か法衣を捲り、髪を揺らす。





 


 少女は静かに箱を開く。





 そして、もう口から言葉が溢れることはなく。






 立ち尽くす少女の顔(少女の手元の箱の中)には。






 瞳から(片方がはまる先)溢れた雫が(を失ったペアリングが)、輝いていた。



 

 いかがだったでしょうか。


 正直、思いつきを書いただけなのでちょっと粗い部分が多かったかもしれません。


 もし面白かったと思っていただけたなら、評価もしていただけると嬉しいです。

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