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第四話 ミカドと愉快な仲間達 中編

廃ビル一階

 暗闇の中を四つ影が音もなく侵入した。そして探索を始めた。正面フロアはカウンターと待合席がありまるで病院の様だった。

 カツーン…カツーン

 足音が聞こえた瞬間、四つの影はビクッとしたがすぐに落ち着きを取り戻し音がする方…階段があるであろう廊下の死角に素早く音も無く隠れた。

 カツーン

 階段を降り終えた。四人からは階段を降りて来た者が全く見えない。

 一つの影が鏡を使い確認しようと腰のポーチを探ろうとした時

「いるんだろ。そこと、そこと、そこと、あとはそこ」

 降りて来た者は声から相手は男とわかった。四つの影は男がどこを指したか判らなかったが相手は四ヶ所を指し示した。男は相手が四人だということが判っている。恐らくは場所も、四人は覚悟を決めた。

「動くな! 我々は警察だ。このビルのオーナーから相談を受け調査に来た。君達が最近この辺りを騒がしている不良か? 大人しくしなさい! 大人しくしたら厳重注意だけで今日の所は帰してあげよう!」

 四人は姿を見せず警察を装い油断を誘った。ここには憑かれ人かいると十中八九は確定していたが万が一の為の意味も込めていた。しかし

「嘘こいてんじゃねえよ。日本にそんなゴキブリみたい格好した警察がいるかよ。特災だろが。嘘つくなよ公務員」

 階段から降りてきた男…斎藤が言った。

「我々の事を知っているとは、やはりお前達は憑かれ人だな! 大人しくしろ!」

 四人は死角から飛び出し斎藤を半円の形で囲った。四人とも同じゴーグルにコートを着ていた。

「あーあ、はぁ、小物か。俺が出るまでもなかった様だな」

 斎藤は相手をぐるっと見渡し頭を掻きながらつまらなそうに言った。

「何を!」

「おい、落ち着け。つまらん挑発にのるな」

 右端の大柄な男が憤慨し前に進もうとしたがリーダーらしき男に止められた。

 そして四人と一人はどちらも黙ったまま睨み合い動かなくなった。いや、動けなくなった。

「ん?」

「今だ!!」

 斎藤がよそ見をした瞬間、四人は一斉に憑き物を出した。赤鬼、青鬼が二人、烏天狗一人そして金属の板を張り合わせた細長い物、まるで機械の蛇のようなが一匹現れて斎藤に襲い掛かった。

「おお、何あれ、メタルドラゴンか? あんなのいたっけ?」

 斎藤が目を丸くして嬉しそうにに言った。

 シャッ

斎藤が鉄蛇に気を取られると烏天狗が葉っぱで出来た団扇…ヤスデを振るった。

 スッ……パクッ

 すると風に当たった斎藤の右腕が大きく裂け、血がダラダラと流れ出始めた。切り傷はかなり深く赤い血の間に白い骨が少し見えていた。

「うぉっと! いってー。油断したな」

 そう言いながら斎藤は何でもない様に傷口に手をあてた。

 ボッ!

 傷口がいきなり手の下で燃えた。そして傷口から手をどけるとあれだけ深かった傷口が完全に無くなっていた。

四人に動揺が走った。

「再生系能力持ちか! 巻き付け! 捕獲するぞ」

 リーダーらしき男が指示すると鉄の蛇が斎藤に巻き付いた。鉄蛇は頭から尻尾まで八、七メートル位あり太さは半径二十センチメートル以上はある。そしてその鋼鉄の体で斎藤を拘束した。

「よしっ! 確保おぉ!」

蛇に巻き付けられ身動きが取れない斎藤を鬼やら天狗やらが素早き押さえ付けた。

 黒コートの一人が安堵のため息をはいた。

「やりましたね班長」

右から二番目の小柄な黒コートが話し掛けた。

「こいつが油断してたからな、まぁ何とか上手くいったよ。しかしまだ油断するなよ。こいつ一人とは限ら無いからな」

リーダーは緊張を解かぬまま周りに注意しながら斎藤に尋ねた。

「おい、ここにはお前の他に後何人憑かれ人がいる」

 しかし、斎藤は余裕の顔で笑った。

「ハハッ、これで勝ったつもりかよ」

「何?」

 リーダーが困惑した顔になった。

 今、斎藤は身動きが出来ない。そして例え自分の憑き物を出そうとしても宿主である斎藤本人を押さえられている以上例え再生能力が有ろうとどうしようも無い筈だ。

「はっ! まさか」

リーダーは何かに気が付いた。

「分かったか?」

 斎藤は不敵に笑った。

「お前は偽物だな! 捕まったと見せ掛け油断した所を不意打ちをするつもりだな」

 リーダーは焦った様に周りを見渡した。

「はぁ? ちげぇよ。お前のだろ? この蛇。よく見ろよ。ココ」

ゴポンッ…………ゴポッ

「なっ!? 」

 いつの間にか蛇が赤く熱されて泡立ち熔けかけている。

 鬼や天狗も蛇ごしに押さえ付けていたが余りの熱かに思わず手を離した。

「ハーハッハッハァ! 不死鳥の如く復活!」

 どろどろにけた鉄蛇の融解金属を腕で払い斎藤は無傷で立ち上がった。斎藤の体の周りに炎が舞っている。

「俺は斎藤、斎藤康介! 不死鳥の憑かれ人、人呼んでフェニックス斎藤!!」

 炎を背にやたらにカッコイイポーズをビシィッ!! と決めた。

「チッ、化け物が! 近付くな! 距離をとって戦え! 鋼弾!」

 鉄蛇が鞭の様にしなる。

 ヒュゴッ!

 鉄蛇の尾から拳大の鉄塊が撃ち出された。

 ドゴッ!

 音速を超えんばかりの速さで撃ち出された鉄塊は斎藤の腹をたやすく貫通し後ろの壁をめり込みようやく止まった。

「よしっ! やったか?」

 局員達は注意深く斎藤を確認する。斎藤は腹に大穴を開けられ仰向けにぶっ倒れている。だが

ボッ!

 斎藤の腹が燃え始めた。

「チッ、まだだ! 鋼弾! 鋼弾! 鋼弾!」

 鉄塊がまた撃ち込まれる。斎藤の頭、肩、左足を吹き飛ばす。だが火は消えずに少しずつ強く拡がっている。あまりの炎に斎藤の姿が見えなくなる。

「まずい、グヒン。風だ! 炎を散らせ!」

 部下の烏天狗の憑かれ人の指示を出す。そして烏天狗は団扇を扱い素早く風を起こし炎を散らそうとするが炎の勢いが強すぎて消えない。

「消えるかよ。そんなそよ風で俺の炎が」

 斎藤完全復活。傷一つ無い斎藤が炎の中から現れた。

「くぅ、我々だけでは倒し切れんか。ジリ損になってはつまらん、ここは一時退却か。引くぞ皆、散開」

 リーダーは戦力比較をし一時退却を決定した。そして四人はばらばらの方向に素早く逃げ始めた。

「おおっと、逃がすかよぉ!」

 斎藤は腕を振るった。

「オラァ!」

 斎藤の腕から炎がボールの様に投げられた。

 轟音!

 高密度に圧縮された火球が一番最後の局員の背中に直撃した瞬間、轟音と共に爆発した。直撃した奴はもちろん周りの局員も衝撃で吹き飛ばされた。

「荒木ィ!」

 吹き飛ばされた局員の男が直撃した局員の本名を思わず呼んだ。

「ほっとけ! 今は自分の事だけ考えろ!」

 リーダーが叫ぶ。

「クソがぁ!」

「逃がすか、ボケェ!」

 斎藤か追い掛ける。天狗の遠距離攻撃で足止めしようとしても無駄だった。

 切り裂いても切り裂いてもすぐに回復してしまう斎藤にはこれッぽっちの足止めにもならなかった。

「焦らず、迅速に退却しろ!」

 リーダーの怒声が廃ビルの中で響き渡った。

次は多分月曜日には

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