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第三話 ウスツキ反省会

特殊災害対策事務所

一室にて

 学校の教室位の部屋の真ん中に長机と四脚の椅子があった。片面に三脚あり一番右に変な男…数本の赤いラインを引いて掌に小さなアンテナ………いわゆるパラボラアンテナを付けた正に変な男としか言いようの無い男が座っていた。服装が普通の背広なだけに余計に奇異に写る。

 そして真ん中は、ニヤニヤし少年がいた。どこにでもいそうな、少しチャラチャラした服を着ていたが右のおかしな男に比べればごく普通の少年だった。

 そして一番左はウスツキだった。

 三人は黙っていた。変な男はピクリともせず。少年は頬に手をついて、そしてウスツキは物静かに背筋を伸ばし目をつぶっていた。

 しばらくして一人の男が部屋に入ってきた。

 ボサボサの髪に髭面、まるで休日のおっさんみたいな男だった。

「ウィース、ちったぁ反省したか? 馬鹿どもぉ」

 男の声に誰も答えない。男はため息を吐きながら三人の向かいの席に座った。

「ドッコラセット。おーい、口付いてんですか? えぇ?」 

 おっさんが三人の顔を見る。

「ん?」

 よく見ると目をつぶったままのウスツキの体がうっすら揺れている。

「クゥ……クゥ……」

 ………小さくかわいらしい寝息が聞こえる。

「寝るなー起きろー」

 男は怒気を含みながらも落ち着いた声でウスツキのほっぺたをペチペチ叩きながら話し掛けた。

「あ、あぁ、課長、おはようございます。ふぁー最近寝不足でして………ちょっと、セクハラですよ。止めてください」

 ウスツキは頬を叩いていた手を結構な力でバチンッと弾いた。

「はっはっは、お前は反省室に入れられても偉そうだな、おい」

 課長はにこやかに笑いウスツキの頭を撫でた、がすぐに弾かれ課長はまた、悲しそうなため息を吐いた。

「まあいい、さぁて、お前等、なんで呼ばれたかわかるか?」

 気を取り直し神妙な空気で話し掛ける。

 変な男は答えない、少年はそっぽを向いている。仕方がないのでウスツキが答えた。

「何か問題を起こしたんでしょうか?」

 すると課長はニコリと笑った。

「そーだ、そーだ、お前等は馬鹿だから何故呼ばれたか、わからないと思っていたが安心したぞ」

「あーーーー! 来たぁ! 脳内電波がきたぁ」

 突然変な男が叫んだ。

「うおぉ!? な、なんだ、何が来たんだ?」

 すぐに課長が慌てながらも聞いた。すると落ち着いた声で

「課長。また奥さんと喧嘩しましたんですか。しかも原因は子供の成績。そんな事で私に当たら無いでくださいよ。あ、あと一応言っときますけど私は仕事を理由に奥さんに責任をすべて押し付けるより貴方も少しは何か考えるべき物があると思いますが」

「だーぁぁぁあ! まれぇい! お前にゃ関係ないだろ。あいつと不仲でお前に迷惑かけたか? ん?! 関係無いだろ! なら黙ってろ!」

 課長は早口でまくし立てた。

 変な男の名はクダンといい、有名な人頭牛体の予言妖怪からとっている。能力もそのまま予言。

 しかし、何時、何処で誰がなんぞは自分で決められず本人は電波といい不規則な予言をする。近くの人間の過去は故意に見ることが出来てプライバシーを侵害しまくるので組織で二番目の嫌われ者。等級は第五種。

 小さな方はカゲバミ。少しマイナーだが影を食う妖怪。力は影に入れる事。自分だけでなく。あらゆる物の影に入り影の続くままに移動が出来る。夜の闇に紛れたらもう無敵。等級は第二種。 

 第五種とか第二種とかは強さのランク、正式には第二種規模特殊災害という。

長いので縮めて第何種と呼ばれる。

組織の名前からあるように憑かれ人による被害は基本的に災害として扱われている。

そして第一から第十三まであり数が減るほど大規模災害………つまり強くなる。今では多数の憑かれ人が存在するが第一種の憑かれ人は現在、特災で確認されているだけで十七人しかいない。ちなみにウスツキも第一種。一応最強の憑かれ人だ。ウスツキの力はかけ算で道具さえあれば理論上無限の力が出せると言われている。

 つまり憑かれ人は強くなるほど珍しく特災としてはウスツキやカゲバミを失う訳にはいかない。何故なら特災には敵対者がいるから。新しく生まれた憑かれ人はもちろんの事だが組織だって抵抗する憑かれ人の団体が二つ存在する、夜光と四凶だ。

 憑かれ人は基本的に迫害される存在。

昔はこの特災に憑かれ人はいなかったし重武装した局員で事足りていた。

しかし憑かれ人が増えると一人の強い憑かれ人が現れた。

その憑かれ人は自らを夜光と名乗り。自分の元に憑かれ人を保護し始めた。そしてどんどん大きくなり特災も迂闊に手出し出来なくなった。そして夜光は憑かれ人の国を創ると言いだし各地でテロ行動に出た。しかし、これをよしとしない連中も夜光の中にいた。そして彼等は夜光と敵対し分離した。それが四凶である。

 四凶は夜光の中では元は三番目に高い地位だった。夜光とナンバーツーのカグツチが裏切り者を倒すべく四凶に戦いを挑むものの敗北。夜光は四凶に四人掛かりで襲われ死亡。カグツチは足止めされ動けず、夜光が敗北を知りやむを得ず撤退。これが初めての憑かれ人同士の大規模戦闘であった。

 この時を特災は好期とみ殲滅すべきと動き出したがこれまでの戦いの為戦力不足か深刻だった。そこで一部の憑かれ人に安全の変わりに自らの下で働くように呼びかけた。国の下で働く事に安心感を覚える者も多くそれなりの数は集まった。

 ……その後結果として三つの組織は争い。強力な憑かれ人を多くを失ったが決着はつかなかった。

 そのため強力な憑かれ人は貴重で少しのやり過ぎは許されていた。

「まあまあ、課長落ち着いて下さいよ。今日は何するんです? 事務仕事? 反省文? まるで学校みたいですね」

 ウスツキはなだめるように課長を馬鹿にした。

「ウスツキとクダンは事務、カゲバミは反省文だ」

「なんで俺だけ反省文なんだ?」

 課長の決定にカゲバミが質問した。

「お前は事務に使えないからだ」

「そーかい」

 するとカゲバミは猛烈な速さで用意されたペンを走らせ反省文を書き始めた。

「ちっ、よーしお前等はこっちこい。」

 スラスラと反省文を書くカゲバミを見てわざわざ聞こえる様に舌打ちしてから課長はウスツキ、クダンを連れ歩きだした。


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