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プロローグ

 古本屋で面白い本を見つけたのでその設定を真似ました。解る人もいるとは思いますが内容は全然違うのであしからず。

 白い………白い廊下がある。壁も床も天井までもがまるで汚れを嫌う様に真っ白だ。その真っ白な廊下に少年がいる。

 そしてその少年の目の前をたくさんの行き交う人々がいる。皆同じ目をしていた。

 無機質な蛍光灯に照らされ白く太い入り組んだ通路をそれぞれの目的地に向かうその姿はまるで蟻の巣の中光景の様に見える。

 だがしかし、その光景には全く現実味が無い。まるで人の形をした趣味の悪い人形のようだった。人々は一人も喋らず、そして皆揃ってガラス玉のような意思の感じる事が出来ない伽藍洞な目をしていたからだ。

 ふと横の壁にある鏡の様に磨かれたネームプレートを見る。そこには同じ様にガラス玉の様な目をした少年がうっすらと写っていた。歳は十代後半、髪の毛は適当に整えられ少しつり目気味の少年だ。それが己の姿であることもまるで現実味が無かった。

 写りこんだ自分から目を逸らし自分の目的地に向かう。自分は考える必要も無い。ここでは考える事は意味が無い。

通り過ぎた壁には [特殊災害対策安全保持事務局管理課 伽藍管理室 ]と書かれていた。

 白い通路の端まで来た時ふと足を止めた。窓があり外は見える。どこにでも在るような街が見えた。しかし、自分は何故足を止めたのか自分でも解らない。本来ならこのまま右に曲ってそのまま三番目の部屋三十秒後に入らなくてはならない。

 頭にズキリと小さな痛みが走った。窓の向こう沈みゆく太陽を見る。

その方角に何が有るのか少年は考える事は出来なかった。しかし、じっと少年の視線は一点に向けられそのまま動か無かった。

「何年間、そう五年間だったかのぉ」

 背後から、突然声が聞こえた。

 少年がゆっくり振り向くと、小さな少女が立っていた。少年と同じ白い服を着、顔も美人では無いが不細工でも無いという特徴の無い顔達だった。

 さっきより強い痛みが走る。

 目の前の少女を少年は知らない。だが、知っている。だがどこで会ったのかは思い出せない。思い出したいとも思わなかった。

 少女は少年を見上げながら、ニコリと笑った。

「五年もの間ずっとそうしていたのか? 何も考えずに、何も欲さずに」

 細い指が少年の頬を撫でた。

「なんともったいない。お前の心はとても強かったのに………だが安心しろお主はすぐに思い出すお主の心を」

 ダンッ、と大きな音が二人の隣で響いた。

「お前達、何をしている!」

 特殊部隊が付ける様なゴーグルをかけた人物が、歩み寄ってくる。黒いコートを着込み誰かわからないが大柄な身体から男だという事だけはわかった。チラリッと私達を見て今度は厳しい声で

「お前は何者だ!」

私ではなく少女に向かって怒鳴った。

「特殊災害対策事務局の監視兼管理者か。このフロア担当なのかのぅ?」

「質問しているのはこちらだ質問に答えろ!答えないなら」

 男の後ろからさらに大きな人影が現れた。

「カッカッカ、お主の憑き物はそんな形か。都合がいいのぅ」

「何だと?」

黒コートは訝しがりながら尋ねた。

 しかし、少女は無視し少年の方を向いた。

「お主は今何がしたい? 何が欲しい? どこに行きたい? もうお前の好きなようにしていいのだ。そしてお前の心の輝きを見せてくれ!」

 少年のガラス玉の瞳に揺らぎが生じた。少女の言っている意味はよくわからないが何かが自分の中に苛立ちを感じた。

「お前、何者だ?」

 黒コートは少し恐れながらも近づいた。

ピキッ

「な、何だ?」

 少女の背中にひびがはいった。

メキメキッ……ボコッ

少女がまるで卵の殻の様に割れて中からどう見ても少女以上の大きさをした巨人が出て来た。

ピクリッと黒コートが硬直する。

「その姿! 俺の、お前はまさか写り神か?!」

 しかし、またも黒コートを無視し巨人は少年の方を向いた。

「お主の魂の輝きは実に素晴らしい。その輝きをもっとわしに見してくれ」

 異形巨人がさらに変形していった。

「願い想うは人の常。そして聞き叶えるが神の常」

 いくつもの生き物をごちゃまぜにした様な姿で元少女だった者が高らかに言った。

「余計な事するな」

 少年はポツリと呟いた。

 つづく

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