二十一話。今から3時間前。前編
今からおよそ3時間前。和希宅にて。
「.....。」
男がテーブルを挟んで、向かい合って座ると少し不気味だ。
「.....なあ。和希。」
「なに?」
そして、冬馬は本題に入る決心がつかないでいる。
「.....。」
「じれったいなー。男なら聞きたいときにスッと質問しなくちゃ。持つもの持ってるんだから。」
「あー、分かった!もう。保健室での続きだ。率直に聞く。俺は、異世界に行かされるのか?」
冬馬は、頭をクシャっと掻くと、身を乗り出す形で和希に聞く。
「はぁ。だから、行くんだって、異世界に強制連行だよって何度も言ってるじゃん。」
そう。冬馬は、学校からここまで帰ってくる途中、ずっとこんな感じだった。
呆れてしまう和希。
「マジか、マジなのか?だって、なんでそんなに簡単に言いきれるんだよ。」
「だって、も何も、模様が冬馬の右腕に浮かび上がっている。それが異世界の扉が開く証し。」
ここまでは、散々説明したよね?と和希がぼやく。
「模様ね.....。」
色々と受け止めきれていない冬馬は、制服の袖から見える右腕の蛇の模様を見つめる。
「あと、色々と焦ってるみたいだから、言っとくけど、異世界には僕も行くから。」
「え?」
冬馬は、自分の耳を疑った。もう一度と目で促す。
「僕も、異世界に冬馬と一緒に行くの! Do you understand?」
「お、おう。」
まだ、半信半疑である冬馬に和希がさらに説明を加える。
「僕は異世界帰還者。異世界帰還者には元の世界に帰る条件としてある役割を与えられる。」
「役割?」
「それは、自分が帰還した世界から一人、自分の変わりに異世界に行ってくれる人を選ぶこと。」
「自分の変わり.....?異世界には必ず誰かが行かなくちゃならないってことなのか?」
「分かんない。僕も、前の人から聞かされて、情報を引き継いだだけだから。」
「引き継いだ?前の人?誰から?」
冬馬は、和希の説明に、いきなり第三者が出てきて驚く。
「僕の前に異世界に行って、この世界に帰ってきた人だよ。」
「へー。」
「じゃ、そいつが自分の身代わりに和希を選んだってわけか?」
何だか、自分の運命を人に押し付けたみたいで感じ悪い奴だな。
「いや、基本、異世界に行かされる人はランダム。
誰って言う特定の希望は受け付けてない。
その人も、ある日突然、前異世界者に教えてもらったって言ってたし。」
「でも、ランダムだとしても、誰かが決めるから異世界に行く人がいるんだろ?」
「まあ、そこは神のみぞ知るってことでしょ。」
「じゃ、和希もランダム選択したら、俺になったってことか?」
「...うん。そうだね。偶然ってあるんだね。」
冬馬が聞くと、少し、含みのある返事が帰ってきた。
「あと、それと、和希も異世界に行くってどう言うことだ?」
「ああ、うん。初めて異世界に行く人に、初日だけ異世界帰還者が同行する決まりになっているんだ。」
「うぉ!マジか!それは心強いぜ。でも、あれだな、俺の知る限り、異世界召還とかで綺麗なお姉さんとかが出てきて、『トウマさん。貴方は、異世界に行くことになりました。初陣は何かと不便ですので、私がサポートいたしますわ!』とか言ってくれるのかと...。」
「僕に、女装しろと?」
「あー、お前なら似合うかもな、ポニテとか...、じゃなくて...、せんでいいわ!!」
「あと、本来付き添いは初日だけなんだけど、僕の場合は特殊と言うか...、まあ行ってみたら分かるから。」
和希は何か言いかけたが、なんとなく、話を濁した。




