prologue Side A
あぁ、あぁ
フェリシアは声も出さずに泣いた。
まただ、と思いながら。
また一つ、消えてしまった、と。
意識よりももっと遠くにある超感覚が、それを非情にも伝えてくる。
まだ、若芽だったのに。
フェリシアは届くはずもないその両手を、必死に伸ばした。
…伸ばしたところで、宙を掴むだけだと理解しても、止められなかった。
ほろほろと、飴のように、それが消えていく。
どうして、何故。
フェリシアの心は張り裂けそうなほど痛みを訴えたが、その瞳から涙が流れることはなかった。
何度も何度も受けた痛みは、フェリシアの涙腺を壊してしまったのだろう。
…その痛みを受けるのも、もう両手程しかないだろうが。
悲しい、苦しい、痛い、辛い
そして、消えてゆくそれが、愛おしい。
ざわざわと空気が鳴る。
フェリシアに中てられたのだろうか。
それとも、フェリシアの代わりに泣いてくれているのだろうか。
それとも、泣けないフェリシアを…また置いて行かれたフェリシアを、憐れんでいるのだろうか。
どうか…どうか…
フェリシアは伸ばした手を下ろした。
どうか、安らかに
次に生まれてくるときは、同じようなことが起こらないようにと必死に願う。
輪廻転生があるかどうかは知らないが、それでも祈らずにはいられない。
そうでもしないと、フェリシアの心は壊れてしまいそうだった。
いっそ、壊れてしまえば楽になるのだろうかとすら思う。
だが、先に行ってしまった者たちのことを思えば、それは出来ないと思う。
ほろりと、最後の欠片が溶けて空気に消えていくのだけが、鮮明に分かった。




