キンブル氏の第二の提案
題名通りここで第二の提案がキンブル氏より出されます。
キンブル氏は赤ら顔を皺だらけにして笑って見せるとおおらかに言った。
キンブル「ははは……お前は商区を徘徊している悪ガキどもを従えて買い物の荷物運びをさせていたというではないか」
ミレーヌ「いや、それは……その」
キンブル「成人前の子供たちなので定職には就かせることができないのでああやってブラブラしてるが、彼らにもそれなりの役割があってな。
この商区に他の子供たちのグループが入って来るのを防ぐ働きがあるんだよ。
顔なじみの地区ではそんなに悪さをしないものだが、見知らぬ地区となると結構あくどいことをする子供もいる。
別に頼んだわけではないが、彼らは必要悪というか、そういう自浄作用があるんだ。
それでも小人閑居して不善を為すというから、何か目的や技術を授ければ良いかなとは普段から思っている。
どうだ、ここでまた提案があるんだが」
ミレーヌ「は……はい、なんでしょうか?」
キンブル氏が提案と言うたびに私はドキッとする。
提案を受けると大幅に私の環境が変わるような気がするからだ。
「実は商会の青果部から要望があってな。総務部から一人助っ人が欲しいということだ」
総務部というのは小番頭さんの管轄で、分かりやすく言えば何でも屋だ。
それが違う小番頭さんが采配する青果部という所から応援要請があったということだろう。
「けれども総務部も猫の手を借りたいほど忙しい。そこで一番下っ端ではあるが、よく気の利いたお前に行って貰いたいということだ」
「仕事の内容は……」
これとケリー団の子供たちとどんな関係があるのだろうと思いながら私は聞いた。
「それだよ。仕事はキノコの採集だ。青果部の方で冒険者や専門に採取している人たちを雇って集めさせているけれど、この季節どこも手が足りなくて困ってる。
そこでどうだろう? 手当は弾むからあの子たちをうまく使って採集をやらせたらどうかと思うんだが」
私はキノコと聞いてさまざまな食用キノコや薬用キノコを思い浮かべた。
ミレーヌ「あの、それは食用ですか、それとも薬用ですか?」
キンブル「薬用キノコについては薬師部の方で別途集めているが、お前は薬用キノコのことを知っているのか?」
ミレーヌ「ええ、まあ。村では日常的に集めていましたから」
キンブル「ここに各種キノコの種類と採取時の値段が書いてある。だがやっぱり多く必要としているのは収穫量も多く、一般に食されているリクラエ茸とニリ茸だ」
ミレーヌ「えっ?」
私は聞いたことのない名前なので驚いた。
キンブル「ここにキノコの図鑑がある。お前の田舎には生えていない種類かもしれない。確かめてくれ」
私は分厚い図鑑を受け取ってその形や色、特徴を確かめた。
その結果、最初の二つも私の良く知っているキノコで、ただ呼び方が地方によって違うだけだと分かった。
従って、私は図鑑を借りてこの近辺での呼び方を頭にいれることにした。
もちろん、キンブル氏の提案は一も二もなく引き受けるという前提である。
私は青果部の小番頭さんのソロンさんの所に挨拶に行った。
ソロン「やっぱりなぁ、総務部だって忙しいから沢山は来てくれないとは思ったが、お前ひとりかい?
まだ子供のようだがキノコの種類は分かるかな?
試験的に昨日採取して来てもらった見本がここに置いてあるから見てみなさい。まあ、全部は無理だと思うが、一番の売れ筋のリクラエ茸とニリ茸くらいはここでしっかり覚えておいてもらわないと」
私は小番頭さんと並んでキノコの見本を見ながら次々と名前を言い当てた。
ミレーヌ「リクラエ茸とニリ茸はこれとこれですね。それとここにあるのはフモズ茸の種類ですね。
シロフモズ茸、アカフモズ茸、本フモズ茸、これは高級なミテ茸で……」
ソロン「わかったわかった。
これは凄い助っ人が来てくれたものだ。
うまくいけば二人分か三人分採ってくれそうだな。
期待してるぞ。
そこで知ってると思うがキノコ類は足が速いから、常時店頭に並べる訳には行かない。
そこで来週六の曜日に一斉に採取したものをキノコ祭りという形で売り出す予定だ。
それまでに準備期間ということだが、採取用の籠とかはこちらで用意するから特にすることはない」
ミレーヌ「あのう、私が助っ人を集めても構いませんか?」
ソロン「それは構わないが、人をたくさん集めても収穫がすくなければ一人分に当たる手当は減ることになるが、それでも構わないのであれば使っても良いと思う。
人数を言ってくれれば、その分の籠も用意しておく」
ミレーヌ「はい、ありがとうございます」
そして私は当日ケリー団の子供たちを連れて現地に集合した。
最後まで読んで頂きありがとうございます。さてキノコ採りどうなるでしょうか?
次話に続きます。ぜひお読みください。