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田舎娘ミレーヌが妖精になるまでの物語  作者: 葉裏
第一章 見かけは十才の女の子
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ケリー団の少年たち

今話では今までそれほど話題にならなかったミレーヌの童顔ぶりがどの程度か明らかになります。

「おい、お前名前なんて言うんだ?

 誰の許しを貰ってこの辺を歩いている?」

 そう言って来たのは一人先頭に進み出て来た男の子だ。

 年のころは十四五才、灰色の髪に灰色の瞳、がっしりした体格の子だ。

 でも何故そんなことこの子供に言われなきゃいけないのか?

 わたしは真っ直ぐその灰色君の目を見て言った。

 なめられたらお終いだ。

「お前こそ何者? 人に名前を聞く前に自分の方が名乗るのが礼儀というものでしょう?」

「な……なに? 生意気言うな、餓鬼のくせして。

 俺はケリーだ。ケリー団のボスだ。驚いたか?」

「ぷっ、なにそのケリー団って。子供の集団なの? で、ケリー君は餓鬼大将ってわけ」

「お前だって子供だろうっ。目上の者を敬えっ」

「そうだ、そうだっ。ケリーさんを敬えっ」

「じゃあ、敬うのはケリー君の方だよ。

 わたし見かけは若いけれどこれでも勤め人の大人だよ。

 十六才なんだから」

 この世界では十五才から大人だと言われている。私も自分では十五六才だと思っているが、決して適当に盛って言ったわけじゃない。

 少年たちは急に顔を見合わせた。

 ふふふ恐れ入ったか、これで彼らはお姉さまには逆らえないことに……

「「「ぎゃっはっはっは」」」

 えっ? みんな笑ってる。

ケリー「連れて行け」

 そして私を少年たちが取り囲むと両脇背中を何人も取り付いて連行し始めたのだ。

 そして十才くらいの少年が老けた顔を向けて歯を見せて笑った。

「お前、どう見ても俺っちとタメだろ? もう少しうまい嘘つけよ」

はぁぁぁ? 私ってそれなら可愛すぎるだろっ。っていうかお前らが爺くさいんだよぉ。

 私はどんどん寂しい裏通りの方に運ばれて行き、廃屋のようなところに引き込まれた。

 そこに私と同じくらいの男女が待っていた。

 彼らは武装していて、少年は剣、少女は弓矢を持っている。

ケリー「先輩たち、来てたんですか?」

男「ああ、様子を見にな。いったい誰を攫って来たんだ?」

ケリー「ノリスさん、それがですね。

 商区を見慣れない餓鬼が歩いていたんで、詰問したら生意気言うもんでちょいとしめてやろうかと拉致って来ました」

ノリス「お前、そいつの服見て何も思わないのか?」

ケリー「えっ、服って? 変な服ですよね」

ノリス「冒険者ギルドに依頼を持って来た下働きの女がそんな服を着ていた気がする。

 お前、商会の下働きを引っ張って来たんじゃないのか?」

ケリー「そんな馬鹿な。こんな子供商会じゃ使わないでしょう」

ノリス「確かに十五才以上は使わないことになっているが、以前どこかの番頭が自分の家族を使っていたことを聞いたことがある。家族筋ならありうる」

ケリー「おい、どうなんだ? お前は何にも言わなかったろう」

ミレーヌ「聞かれなかったからね。私はキンブル商会で働いていて、その関係で用事で出てきたんだけれど」

「「「キンブル商会っ」」」

ノリス「よりにもよって、最大手じゃないか」

ケリー「ノ……ノリスさん、どうしよう」

ノリス「あそこにはサムソンとかいう凄腕の傭兵出身の護衛がいるんだ。以前冒険者ともめて相手をこてんぱんにやっつけたって話だ」

ケリー「ミリー姐さんっ」

ミリー「わかったわ。ねえ、あなた、私はミリー、冒険者なの。この子たちの先輩なんだけど、ちょっと手違いがあったようなの。お名前聞かせてくれる?」

「ミレーヌって言います。ミリーさん。

 その前にどうもみんな誤解しているようですが、私はこう見えても十六才なんです。

 だからそんな年下の子に話しかけるような口ぶりはやめて下さい」

「そ……そうなの? 人族でそれだけおさな……若く見えるのは確かに珍しいわね。失礼したわ。

 この子たちのことだけど、子供同士である程度勢力分布があって、そこにミレーヌさんが引っかかってしまったって訳なの。

 お詫びするわ。ほら、お前たちも謝りなさい」

「「「すみませんでしたっ」」」

ミレーヌ「全然大丈夫です。ただ、私が店に戻ったときにどうして遅れたか聞かれたときは、正直にあったことを報告しなきゃならないことは理解して下さいね」

「「「えっ」」」

 えっじゃないだろっ。お前ら男たちがよってたかってうら若き女性を拉致したんだぞ。

ミリー「ケリー、あとはお前たちが誠意を見せる番だよ」

ケリー「ミ……ミレーヌさん、本当に失礼しました。これから大通りまでお送りして、用事のお手伝いをしますからどうか今回のことはキンブル商会には宜しくお願いします」

 ケリーが跪くと他の少年たちもそれにならった。

 顔は怖いけどこうしてみると可愛く思えて来るから不思議だ。

 人相が悪く見えたのは、彼ら独特の敵を威嚇する表情のせいで、素に戻れば意外と可愛い顔だと思った。

 何度も断ったのだが、ケリーが私の三メートル先を歩いて曲がり角ごとに振り返って愛そう笑いして道案内する。

 そして私の五メートル後から妙に畏まった姿勢で整然と他の少年たちが付いて来る。

 私が振り返ると立ち止まって下を見たり明後日の方向をみたりして誤魔化す。

 ついて来るなと言ってもついて来るので正直困ってる。

 普通買い出しは私一人で両手と背中に荷物を持って、荷物が歩く状態で運ぶのだが、彼らは私に僅かな荷物も持たせない。

 小さい子が抱きかかえるように持ったところ、少し上の子が注意した。

「おまっ、体につけたら汚れるだろっ」

 両腕を伸ばして体に触れないように荷物を持つのだから、疲れると思うのだが、みんなそうやって運んでいた。

 商会が近づいて来たので、さすがにそのまま行く訳にはいかないので、全部返してもらって運ぶことにした。

「分かったから、君たちに悪いようにはしないから、もう帰りなさい」

 そう言って追い返し、荷物だらけの私がいつものように帰還したのだった。

 だが今回は荷物運びがいたので、結局戻る時間はいつも通りになり、遅れた言い訳をしないで済んだのだ。


 ところがどこで誰が見ていたものか早速ご主人様の耳に入ったらしく、また呼び出された。


最後まで読んで頂きありがとうございます。次に続きますので、是非ご愛読下さい。

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