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田舎娘ミレーヌが妖精になるまでの物語  作者: 葉裏
第三章 樹海王国レストーシャン
32/52

捜査開始

今話ではミレーヌを見つけようとする、二通りの捜査が始まってます。

いや、考え方によると三通りかも。

 調査官のアーシャーは宰相リスベルトに報告していた。

アーシャー「十七地区担当のブランシュ失踪事件について報告致します。

 彼は一昨日このレステントランスの街に入った後失踪したということになってますが、交代のロトレックス警備員が調べたところによると、彼は十七地区で死亡していることが分かりました」

宰相「それは魔獣による殺害か」

アーシャー「いえ、死亡した後食い荒らされた痕跡はありますが、何者かが侵入した結果と考えられます。

 大型の魔獣など、彼の右腕と言うべき魔獣や魔物が殺されて死んでいました。

 それから判断するに、犯人はブランシュのふりをして街の中に入った後、一般人に紛れていると推察いたします」

宰相「すると単なる国境侵犯者ではないな」

アーシャー「北の森を通過した時点で、国家的密命を持って侵入した者と考えます。

 通常の者ではサザーンランの砦を越えることはできませんし、国境警備の壁を破ることはできません」

宰相「国王陛下に報告するとしよう。捜査は続行するように」

アーシャー「はっ。もっか魔獣たちの死因を調べており敵がどのような手段を用いていたかを調査中です。」

宰相「分かり次第、追って報告せよ」

アーシャー「はっ、畏まりました」



 国王エルパソ・ロード・レストーシャンは、マークス王子とキャサリン王女の報告を聞いていた。

国王「なるほどその薬師の少女と眼帯マスクの少年とは明らかに関連があるというのだな」

王子「はい、後で迎えに来た兵の話によると、狼煙を上げた場所…つまり私が倒れていた場所から、馬車が襲撃された場所までところどころ木の幹に短剣で傷をつけて目印にした跡があったとのこと。

 それは最初は私がつけたものだと判断して、そこを辿って現場まで行くことができたそうです。

 きっとその少女が私を看病したときに、その少年はそばまで来ていたのだと思います」

王女「後でその目印は私も見ましたが、きっと走りながらすれ違いざまに短剣か何かで削って行ったような傷でした。

 薬師の少女がつけられるような傷ではありません。

 実はその少年が森の中を走って来たのを私は気づいておりまして、お兄さまの所からあの方が駆けつけて来たのは明らかだと思います」

国王「ふむう、その者たちは迎えが来ることを知っていて、狼煙を上げ更に木に目印までつけて王女の所に導いたと申すか」

王子「はい、間違いないでしょう」

国王「まさしくその者たちは我が王室の守護神の如き働きを示してくれたことになる。

 それだけのことをして名も告げず立ち去るとは、我が王室への強い忠義心を感じるではないか。

 また少年の腕は百戦錬磨の戦士のごときである。

 是非見つけ出し高い位に召し上げたいと思うが。

 既に捜索はしたのであろう?」

王子「はい、少年は眼帯マスクをしていたので正体は分からず、少女の方は人相描きも加えて捜しておりますが、不思議にどこにもおりません。

 それで少年と少女の二人連れの者を片っ端から当たっておりますが、そっちの方面でも見つかりません」

国王「少年の方はきっと名のある戦士に違いない。

 また、王室の医師がお前の傷の縫合の仕方を見て、一流の外科術の心得のある者だと言っておった。

 故にその少女も只者ではあるまい。

 そのような貴重な人材を野に遊ばせておくのは実に勿体ないことだ。

 してその赤毛の娘についてはどうなんだ?」

王子「それが本人を見つけて礼を言う一方、何故あそこに居合わせたのかを聞きました」

国王「してなんと言っておったのじゃ」

王子「まずその赤毛の娘は薬師としては、街の薬屋に卸しているくらい腕が良いのですが、その時は薬草を採る為に森に来ていて薬の持ち合わせはなかったのだと言います」

国王「それではどうしてそのときは持っていたのだ」

王子「実はその娘が薬草の採取をしていた折に目の前に現れたのは眼帯とマスクの少年だったのです。

彼は娘に襲撃場所の位置を教えて、そこに薬を持って行くように頼んだのです。

 その駄賃に銀貨を何枚か貰ったそうで、その薬を持って行けば向こうでも謝礼が貰えるだろうと言われたとのこと。

 ただし、その少年も赤毛の娘のことをただの薬草採りとしか思ってなかったようで、彼女が薬師だったことは知らなかったようなのです」

国王「なるほど、ただ届ければ良いと言づけたのだな。

 とすればその背後に薬師の少女の存在を感じるな」

王女「あの眼帯のお方も応急処置と言いながら騎士に手当やポーションを」

王子「やはりあの二人は関係があるのだろう」

王女「お兄さま、お二人がどういう関係か気になります」

王子「私の読みでは恐らく兄妹ではないだろうか」

王女「そうですね、きっとそうですわっ」


宰相「国王陛下、ご歓談中申し訳ありません。緊急にご報告が」

国王「なんじゃ、悪い知らせか?」

宰相「調査官アーシャーの方から例のブランシュ失踪事件に関しての調査結果が」

国王「で、どうだったのじゃ?」

宰相「恐らくサザーンランの密偵が北の森の防御網を破って侵入する際ブランシュ及び守護魔獣の数体を殺戮したものと」

国王「してそやつは?」

宰相「ブランシュになりすましてレステントランスの街に入り込みそののち潜伏しているものと」

国王「おのれっ、国境警備隊員と魔獣を殺して我が国に入り込むとは、許せんっ。厳重に捜査せよ」

宰相「ははぁぁ」

国王「犯人を捕まえたときは、この王都で公開処刑にしてくれるっ」

 エルパソ王は顔を真っ赤にして両の拳を握りしめた。


 

 調査官のアーシャーは宮廷医師の診断が終わったので所見を聞くことになった。

アーシャー「で、何か死因について特になにかありますか?」

医師「見た通り両目に細い尖ったもので突き通した跡があります。

 そして頭蓋骨はハンマーのような鈍器で砕かれていますね」

アーシャー「だが、これだけの魔獣が、簡単にそうなるのが信じられない」

医師「目や鼻孔、そして口が少し爛れています。

 そこから唐辛子の成分が検出されました。そして……」

アーシャー「そして?」

医師「目に突き刺した凶器には痺れ薬が微量に検出されました。

 もっともそんな量ではこの巨体の動きを封じることは無理ですがね。

 動きを封じる鍵となったのは多分唐辛子でしょう。

 それで魔獣の魔力に乱れが生じて攻撃に対する耐性が一瞬失われたものと思います」

アーシャー「すると犯人像は?」

医師「薬に詳しい者で、筋力が並外れています。

 そしてこれがゴブリン兵が受けた武器です」

 頭のない長釘のようなものを数本見せられた。

医師「武器には詳しくはありませんが、これが寸鉄というもので、魔獣熊の目に刺さったのも同じものと判断します。

 これを見れば投擲技術にも優れている者と考えられるでしょう。

 けれども男女の別は分かりません。そんなところです」

アーシャー「けれど、筋力が並外れているとなれば、ゴリラ並みの筋肉と体格が必要だろう。

 けれども門番が見たフードマントの男は中肉中背だった」

医師「もし魔力を自在に動かせる者だったら、普通の体格でも怪力を出す場合があります」

アーシャー「そうか、ますます分からなくなったな」

医師「それから門番の目撃を重視しているようですが」

アーシャー「ああ、貴重な目撃者だからな」

医師「相手も目撃されることを予想していると思います。

 とすれば、体格についても偽装しているという考えも選択肢の中に入れておいて下さい」

アーシャー「なるほど、わざわざ身分証まで見せているからな」

医師「私の言えることはこれだけです。

 結局何も分からないと同じですが」

アーシャー「いやそんなことはない。参考になった」



 私の所に、そのアーシャーという役人が来たのは夕食を食堂でとっているときだった。

アーシャー「ちょっと良いか?」

ミレーヌ「はい? 今食事中ですけど」

アーシャー「俺はこの国の役人で調査官をしている。

 いま捜査していることがあってな。

 国境警備員を殺害した犯人を追っている」

 この言葉に思わずスープを噴き出しそうになったが、私はこらえた。

ミレーヌ「すみません。食事中に刺激的な話をしないでください。

 驚いてスープを噴き出すところでした」

アーシャー「それは悪かった。君は薬師のアンナさんだな。薬師の立場で意見を聞きたいのだが、犯人は唐辛子と痺れ薬を使って魔獣熊を倒していた」

 危ない、危ない。こういうドンピシャの話をされると顔に動揺の色を浮かべてしまいがちだ。

 かといって平気な振りをするのもわざとらしい。

 それで私はパンにスープを浸して口に入れ、モグモグさせながら頷いてみせた。

アーシャー「そこで君に質問だ。痺れ薬とか唐辛子を持ち歩く人間はどういう人間だと思う」

 こういうとき、私は昔の海外テレビドラマの『刑事コロ〇ボ』の場面を思い出す。

 その刑事は犯人に向かって色々と意見を聞くのだ。

 すると犯人は助言をする振りをして自分とは違う人間を疑うように誘導する。

 けれどもそれが刑事の罠で、最後には犯人はボロを出してしまうという筋書きだ。

 そういう路線に乗ってはいけない。

ミレーヌ「まず私のような薬師なら持っていると思います」

アーシャー「じゃあ、犯人は薬師ということか?」

ミレーヌ「薬師からそれらのものを買った人も入るかも」

アーシャー「どんな人間が買うんだ?」

ミレーヌ「町場だったら綺麗な女性とか? 

 男に絡まれたら唐辛子の粉をぶつけて逃げるのに使いたいと買って行く人がいました」

アーシャー「町場以外だったら?」

ミレーヌ「弓矢で狩りをする人ですね。私もよく売ります。

 その場合は唐辛子でなくて、痺れ薬になりますけど」

アーシャー「いやいやそれくらいは俺にも分かるよ。やじりに唐辛子をつけて矢を飛ばさないだろうっ」

ミレーヌ「ナイス・ツッコミです」

アーシャー「なんじゃそれは?

 とにかくその唐辛子と痺れ薬の見本を売って欲しいのだが」

ミレーヌ「何するんですか、それで?」

アーシャー「どんなものか捜査資料として欲しいのだ」

 ははぁぁん、たぶん分析して犯人が使ったものと同じかどうか調べる積りだな。

ミレーヌ「分かりました。ちょっと部屋に行って取って来ますから、待ってて下さい。

 痺れ薬は薬屋で買うより安くしておきます。

 小瓶一つで矢に塗って使えば百回は使えます。

 唐辛子は薬屋よりも雑貨屋の方が安くて、それと同じ値段です。

 これは粉を団子状に包んで丸めたものを買って下さい」

 私は走って階段を上り、部屋に入って二十数えてからまた駆け足で戻って行った。

ミレーヌ「はい、どうぞ。料金はここに書いてある小売価格でお願いします。

 では夕食の途中ですので食事続けさせて貰います」

 アーシャー調査官はお金を払うと、こんなにたくさんいらないのにとか言いながら小瓶と紙包みを掴んで出て行った。



アーシャー「どうですか? 分析結果は?」

医師「痺れ薬は全く違うものですね。魔獣熊の眼球の痺れ薬は時間が経つと痺れ効果が消えるもので、狩人が使うものです。

 でもこれは戦争で使う物で、痺れ効果は永遠に続くものです。

 解毒剤で分解しない限りとれません。

 だから狩人は使わないものです。

 これで倒してもその肉は食べられないからです」

アーシャー「あの薬師、わざと違うものを寄こしたなっ。

狩人が使うとか言ってたくせにそれを寄こさなかったっ」

医師「後は、唐辛子ですが、魔獣熊の鼻からは激辛唐辛子が検出されましたが、これは普通の調味用の唐辛子です」

アーシャー「あのチビデブ女ますます怪しいっ」



 その調査官が顔を赤くして来たのはその翌日の夜だった。

アーシャー「おいっ、お前何故狩人用の痺れ薬を寄こさなかったんだ?」

ミレーヌ「えっ、狩人用のが欲しかったんですか?」

アーシャー「当たり前だろうっ。お前は狩人に売るって言ってたじゃないかっ」

ミレーヌ「でも、事件の為の捜査資料なんですよね?

 魔獣熊を倒した痺れ薬だって言いませんでしたか?

 魔獣熊を倒すなら強力な痺れ薬でないと効かないと思うんです。

 狩人が使う痺れ薬は後で肉が食べられるように、時間が経つと痺れ効果が消えるもので、痺れ効果もそれほど強くありません。

 それに魔獣の肉は食べられませんから普通魔獣に使うのなら痺れ効果の消えない強力タイプなんですよ」

アーシャー「じゃあ、狩人用の痺れ薬を作ってくれと言えば寄こすのか?」

ミレーヌ「えっ、魔獣熊に使ったのは弱いタイプのですか?

 ええ、構いませんよ。後で持って来ます」

アーシャー「それとまだあるっ。

お前それなら何故唐辛子は激辛にしなかったんだ?

 魔獣用なら激辛だろっ。

 さっき言ったことと矛盾してるぞ」

ミレーヌ「ええとっ……激辛が良かったんですか?

 唐辛子で魔獣熊は死にません。ただ目や鼻の粘膜がやられるだけです。

 それなら激辛でなくても十分効果があるのです。

 私は仕入れるときは保温剤や調味料としても使えるように通常の唐辛子を求めます。

 野生のものではなく畑で作るので、森や野原で採取でいないので雑貨屋から買うのです。

 それと同じ値段でお分けしたので儲けはありません。

 激辛唐辛子は雑貨屋でお求めください。

 でも辛すぎてあまり食用としては人気がないので在庫を仕入れていない場合もあります。

 ちょっと待って下さいね。いま痺れ薬を取って来ますから」

 私は食後だったので普通に階段を上がって部屋に入り、今度は三十を数えてまた食堂に戻って行った。

ミレーヌ「どうぞ、これが狩人用の痺れ薬です」

アーシャー「これが料金だ。ところで聞きたいことがある」

ミレーヌ「はあ、どういうことでしょうか?」

 その調査官は私にやりこめられて腹が立ったのだろう。

 こんなことを言いだした。

アーシャー「君は薬屋に『痩せ薬』を卸して儲けているそうだな」

ミレーヌ「はい」

アーシャー「だが、その薬インチキじゃないのかね?

 だって、君の体型を見れば効き目があるとは思えないからさ」

 この野郎っ、セクハラだろっ。

ミレーヌ「アーシャーさん、あなたは役人ですが汚職とかしますか?」

アーシャー「する訳がないだろうっ。何故そんな話になるっ?」

ミレーヌ「そうですよね。私も商売物しょうひんにはできるだけ手をつけないようにしてるだけです。

 お互いに仕事をがんばりましょう」

アーシャー「失礼するっ」



 その後、アーシャーはミレーヌに渡された狩人用の痺れ薬を宮廷医師に見せたが、医師の答えは次のようだった。

医師「この痺れ薬は効果は犯人が使ったものと同じですが、成分が違いますね。

 ええ、主成分は同じですよ。

 でも配合比とか補助的な成分がまるで違います。

 こっちのは肉が腐敗しないようなハーブ成分を入れてありますから、狩人には重宝がられると思います」

アーシャー「分かった。そうか。アンナの線では犯人には辿り着けないな。

 他の薬師にあたることにしよう。

 しかし何故なんだ。あいつの顔を思い出すとやたらと腹が立つんだ」

医師「調査官さん、女性を見るときその容貌だけで差別してませんか?

 私が伺ってる限りでは、その薬師さんは調査官の捜査に非常に協力的に対応してくれたと思いますよ」

アーシャー「そ……そうか。さ…差別してるのかな? そうだったのかな?」



 レストーシャンの街に立派な馬車がやって来た。

 それに付き従うように騎乗の二人がいる。

 二人とも私服を着ているが、その腰に差している長剣、背筋をピンと伸ばした乗馬姿勢などを見るとこれは貴族に従う騎士だとすぐ分かる。

 二人とも美形であるが片方は

茶髪の女性、もう片方は銀髪の男性だ。

女騎士「ハマーさん、ここがレストーシャンなんですね。

 果たしてこの街にその薬師の女性がいるのでしょうか?」

男騎士「コリーさん、いるかどうかじゃなくて、いると思って捜すということなんだ」

女騎士「でも殿下はその女性を見つけたらどうする積りなんでしょうか? 

 聞けばまだ幼い顔の少女なのでしょう?」

男騎士「コリーさん、それは俺たちが踏み込む問題ではない。

 殿下はその少女がいなければ命を落としていたのは間違いないのだから。

 人として命の恩人を捜そうとするのは当然のことだろう?」

女騎士「でも、どうして姿を消したのですか? 

 命を助けたんだから逃げることはないじゃないですか?

 それとも捜し出して見つけて貰うのをどこかで胸をときめかせながら待ってるのかしら。

 だとしたら面倒臭いっ」

男騎士「コリーさん、勝手に想像して怒ってはいけないよ。

 殿下が襲われて怪我をしたんだ。

 危険な状況だからその場を離れたとも考えられるじゃないか」

女騎士「ハマーさんは女の子に優しいのですねっ」

男騎士「そうかもしれない。

 だから殿下は同性をシビアに見ることができるコリーさんと俺を組ませたのだと思うよ」

 

 一方馬車の中はこれもまた庶民風の服を着ている四人だが、そのうちの二人はご存じマークス王子とキャサリン王女。

 そのキャサリン王女の左右に畏まって座っている二人の女性は、その様子から王女の侍女と分かる。

 二人とも美人だが、一人は真っ赤な髪の大人の女性。

 鋭い目つきでいかにも武芸を身に着けている戦うメイドと言った感じだ。

 もう一人は王女と変わらぬ年齢だがやや小柄で眼鏡をかけている青い髪の少女だ。

 王女のそばなので控えているがバッグの中には愛読の本だろうか三冊入れてあるのが見える。

赤侍女「王女さま、もうすぐ宿に着きます」

王女「王女は駄目。キャシーって呼んで、ミカーラ」

赤侍女「はい、キャシーさま。もう一度聞きますがその少年の髪の毛は何色なのでございますか?」

王女「あの方は確か茶色だと思ったわ。コリーさんと同じでね」

赤侍女「目の色は?」

青侍女「ミカーラ、黒の眼帯をしてたから分からないってさきほどキャシーさまが言ったじゃない」

赤侍女「マーナ、眼帯と言っても目の所に穴が開いてなきゃ、見えないじゃないですか」

青侍女「多分眼帯の生地が目に当てると外が透けて見えるような生地なんだと思いますよ」

赤侍女「そうなんだ。じゃあ、体つきはどうでしたか?」

王女「あの方は精悍でセクシーな体つきでしたわ」

赤侍女「と言われても身長とか肩幅とか分からないと捜しようがないと思うのですが」

王女「ミカーラから見て魅力的に見える少年を捜してみれば、きっと見つかるわ」

赤侍女「ええっ、そんなんで良いんですかぁぁ」

青侍女「ミカーラ、安心して体格とかその他の特徴は私がメモしてあるから、後で見せるよ」

赤侍女「それ早く言ってよ、マーナ」

青侍女「ミカーラ、あなたはキャシーさまにからかわれてるのよ、きっと」

赤侍女「ひどいっ。キャシーさま」

王女「ほほほほ、ごめんなさい、ミカーラ。

 だって何度も聞くんですもの。

 ついからかいたくなっちゃって」

王子「キャシー、この二人に世話になるんだから」

王女「はい、分かっております、お兄さま。

 ミカーラ、本当にごめんね、頼りにしてるわ」

赤侍女「ま……任せてくださいっ」


王子「先ほどからその少年のことを話題にしてるが、むしろ、その少年よりも、薬師の少女の特徴を覚えて捜した方が確実だと思うよ」

青侍女「はい、それも殿下から伺ってすべて特徴をメモしております。

 そして私はあることに気が付きました」

王子「なんだねそれは? マーナ」

青侍女「はい、それは二人とも背格好も体格も同じくらいだということです。

 声の質も似ています。

 薬を扱う手際もそっくり。

 ということは、二つの結論に辿り着きます」

王子「二つとは?」

青侍女「二人は双生児だということです。それなら色々な点で類似点があることに納得できます」

王子「おいおいもう一つって、まさか」

青侍女「はい、二人は同一人物だということです」

ここまで読んで下さってありがとうございます。

もちろんまだ続きます。

愛読し続けて下さってる方々に深く感謝致します。

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