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田舎娘ミレーヌが妖精になるまでの物語  作者: 葉裏
第一章 見かけは十才の女の子
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ボクはギルドに行きたくない

今日のアクセス数二百になるのを目指して、もう一話アップします。

短いですけど……。

 ニューロイヤーの街はそれほど大きくはない、子爵領の管轄になるが、代官と市長が置かれている商人街といえる。

 だから領主はこの町にはいない。

 代官は子爵領の騎士が兵士を連れて治安を守っていて、商店の取り締まりは市長が行うそうだ。

 そんなことを荷馬車に揺られながら来る途中でローソンさんに聞いた。

 ローソンさんのような『物売り』は、メインストリートの『一番街通り』ではなく、『二番街通り』で商売するように指定されている。

 『一番街』はさすがに流通で成り立つこの市を支えているだけあって、繁盛して人の行き来が激しい。

 けれども『二番街』は割とさびれていて人通りも少ないのだ。

 物売りは商店街の中で店を閉めてしまった所の前で行う。

 そうするといくらか活気が出るので、もともとそこで商売している者も歓迎してくれるのだ。

 そして約束した通り野菜や果物の売り子をやって手伝いをすることになった。

 いきなり来たのがカボチャを十個の大量注文だ。

 きっと食堂をしている親父さんだろう。

ミレーヌ「ローソンさん、二十ギニーのカボチャ十個買えば一個サービスで良いですか?」

ローソン「ああ、構わない」

客「いやそれなら十個で良いから値引きしてくれ」

ミレーヌ「じゃあ、十引いて百九十で」

客「坊や、渋いな。二百で一個負けるっていうんだから、もっと安くなるだろう」

ミレーヌ「仕方ないなぁ、百八十五で」

客「もう一声っ」

ミレーヌ「百八十、これいじょうは無理。でも二百出せば十一個にするよ」

客「分かった。定価の二百を出すから一個負けろ」

ミレーヌ「さすがぁ、毎度ありぃぃ」


 客が帰って二人きりになったときローソンさんは驚いている。

ローソン「どこで商売覚えた?

この野菜は原価が定価の五割だから定価は一割までは値引きをするがそれ以上は無理だと言ったよな。

 一個二十ギニーのカボチャ十個なら二百だが一割引けば百八十だ。

 だがミレーは定価通り十個二百で買ってくれれば一個おまけするからと、その方が客が得するように持って行った。

 だが実際十一個を一割引きすれば百九十八になるから、あの客は二ギニー取り損なったことになる。

 感心したよ。その調子でやってくれ」

ミレーヌ「いやいやそんなにおだてないで、ボクもそっちの方がお客が得だと勘違いしてただけだから」

ローソン「本当か? 怪しいもんだ」


 次にリンゴとトマトとカボチャは全部五ギニーにしている。

 だから一個買いには値引きはない。二個買えば一ギニー引けるがそれがぎりぎりだ。

 だからと言って三個買えば二ギニー引けるかと言うとそれも無理一ギニーしか引けない。

 二ギニー引けるのは四個買ってくれたときだけだ。

 だからこういうことを咄嗟に判断して、ほかの客に悟られないように小声で素早く言わなければならない。

ミレーヌ「お姉さん、リンゴ一個かい?

じゃあ五ギニーで、あっ、でもトマトも買ってくれれば一引いて九で良いよ」

おばさん「じゃあ、キュウリも買ったら」

ミレーヌ「十四でいいよ」

おばさん「坊や、けちけちしないでもう一ギニー引いてよ」

ミレーヌ「分かった。敵わないなぁ、綺麗なお姉さん。キュウリもう一本つけて二ギニー引いて十八で」

 これは予定通りの一割引きなのだ。

 こんな調子で私は無邪気で陽気な田舎の少年のふりをして売りまくって、ローソンさんの二倍も売りあげた。

 一時間ほどで完売したとき、ボクは言った。

ミレーヌ「買って行ったお客さんが余計なことを考えないうちにここを引き上げましょう。

 じゃあ、ボクはこれで」

ローソン「待ってくれこれ一個貰ってくれ」

 ローソンさんは避けておいたリンゴを放って寄こした。

 それを片手で受け取るとボクは皮ごと齧りながら歩き始めた。 するとローソンさんが後ろから声をかける。

ローソン「おい、ミレー、どこへ行くんだ? 冒険者ギルドは反対方向だぞ」

 げっ、覚えていたか。私は振り返って笑ってみせた。

ミレーヌ「その前に腹ごしらえってね」

 と誤魔化した積りだが……。

ローソン「そうか、実は俺もだ。うまい所を教える。一緒に喰おう」

ミレーヌ「いやいや、良いよ」

ローソン「遠慮するな。俺のおごりだ」

 肩に太い腕を回され、私は拉致されたのだ。

 

ローソン「ほら、あそこだ。二番街にしては流行ってる店だ。

 ところでミレー、お前普段何を食べてるんだ?」

ミレーヌ「な……何故そんなこと聞くんだよ、ローソン」

ローソン「いや、お前の体から何か甘い匂いがするから、聞いたんだ」

 私はローソンの腕を振りほどいて二メートルくらい横に飛び去った。

 その身のこなしがあまりにも素早かったのか、ローソンの下あごは大きく下がって呆気にとられていた。

ローソン「えっ、どうした? 何か気に障ったか?」

ミレーヌ「ローソン、まさか……あんた、少年愛とか……」

 その時素早くげんこつが頭に飛んで来た。いてぇぇぇ、目から星が出た。

ローソン「馬鹿野郎、見損なうな。俺は村に戻れば最愛の恋人がいるんだっ」

ミレーヌ「し……失礼しましたっっ」


 そんな調子とノリで入ったのが『馬喰ばくらい亭』という食堂兼宿屋。

 その名の通り料理の量がやたら多いっ。

 値段は安いし、味もまあまあなんだが、一人前が二人前あるのだっ。

 だから私は半人前にしてくれと頼んだが、もうできていたので間に合わなかった。

店主「坊主、ちゃんと食わなきゃ大きくならねえぞ」

 なんかスキンヘッドの頬に縦傷がある店の親父さんが、ドスの効いた声で言った。

ローソン「親父さん、言ってやってくれ。

 こいつはミレー、冒険者になろうって田舎から出て来たらしいが、頭は良いんだが、どうも男としての迫力が足りない」

 やめてくれぇぇぇ、ローソン、余計なお節介だぁぁぁ。

 無関係な人を巻き込むなぁぁ。

店主「坊主、いや、ミレーだったか。俺の名前はドルトンだ。これでも昔は冒険者をやっていた。

 はっきり言えば喰わない奴は使えない。いっぱしの冒険者になりてぇなら、しっかり喰えっ」

 ひゃぁぁぁ、殺されるぅぅ。

 胃がパンクするぅぅぅ。

 それでも二人前くらいある料理を無理やり一・二人前くらい詰め込んでギブアップした。

 ずっと荷馬車に乗るだけの生活で大した体を使わなかったから、それほど食べられなかったんだ。

 野菜の売り子だって腹がすくって程じゃないし。


 私は今度こそローソンから解放されると思い、腰をあげた。

ミレーヌ「それではローソン、ご馳走様。ボクはこれで」

ローソン「待て、これから冒険者ギルドに行って登録するんだろ?

 それならドルトンさんについて行って貰え」

ミレーヌ「えっ? だってお店をやってるからそんな迷惑なこと頼めないよ」

ドルトン「迷惑じゃねえっ。行くぞミレー。

 ギルドに登録するってのは一生に一度の男の門出じゃねえか。

 そんなことに遠慮するもんじゃねえっ。それに冒険者デビューは最初が肝心だ。

 不心得な奴に睨みを効かせて、お前に手出しできないようにしなきゃな」

 多分私は顔の血が全部抜けて真っ青になっていたと思う。

それを見てドルトンさんは言った。

ドルトン「言ったろ、ちゃんと食えって。

 だから体に血ができないっ。

 良い若い者が貧血起こしてんじゃねえっ」

 私はなんか言ってギルド行きを回避しようとした。

 だが何か言葉を思いつく前に丸太のような太い腕が私の肩にドンッと乗っかった。

ドルトン「行くぞ」

 ど……どうしてこの人たちは他人の世話をこんなに焼きたがるのか?

 お願いだから、お店で大人しく商売しててっ。

ここまで読んで頂きありがとうございました。私は早めに寝ます。おやすみなさい。

それとユニーク数ですが、百五十人くらいの村の村人全員がこの小説を読んでくれているのと同じくらいの感動をしています。

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