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田舎娘ミレーヌが妖精になるまでの物語  作者: 葉裏
第一章 見かけは十才の女の子
14/52

逃亡劇

作者は逃亡場面が好きなので、主人公を逃がすことはこれからもちょいちょいあると思います。

でも作者個人の人生は決して逃げていませんよ。本当ですっ。(汗)

 どうやって脱出しようかと考えている時に、部屋のドアを叩く音がした。


「ミレーヌ、俺だ。開けてくれ」

 こんな時にアークス坊ちゃんがやって来るとは。

 だが、これは良い機会だ。

 私の本心を打ち明けて諦めてもらうしかない。

 ドアを開けるといきなりアークス坊ちゃんが飛び込んで来て、私を抱きしめた。

アークス「嬉しいぞ。ミレーヌ、お前は俺の申し出を受け入れると返事をしたそうだなっ」

ミレーヌ「坊ちゃん、まず離して下さい。苦しいです」

アークス「悪かった。嬉しくてついつい抱きしめてしまった」

ミレーヌ「実は一応返事はしましたが、本心ではありません」

アークス「なんだってっ、どういうことだっ。俺の妻になるのが嫌なのかっ」

ミレーヌ「落ち着いてください。坊ちゃんは何故私の気持ちを確かめずにご領主さまたちに話を持って行ったのですか?」

アークス「あっ、ああ……」

ミレーヌ「何故です。どうして私を飛び越えて、ご両親に打ち明けたのですか?

 仰ってください。黙っていてはわかりません」

 すると、坊ちゃんは重い口を開いた。

アークス「……自信がなかったからだ。なにかお前に言いくるめられてしまいそうで、悪いが是が非でもお前を妻にしたいので、父の権力に頼った」

ミレーヌ「今まで愛について質問されたことには答えて来た積りです。

 その中にこんなやり方はお教えした覚えはありません。

 お互いの気持ちを知ることから始めなくてはいけないのでは?」

アークス「分かってる。だがお前の教えの中には、一方が好きでも相手がその気がないときは愛は成り立たないとある。

私はお前が好きだ。

 だが万が一お前にその気がなくて俺を拒否した場合、お前は俺から逃げる積りだろう。

 だがそんなことは認めない。

 百%俺はお前を手に入れたい。

 だから一番確実な方法を選んだのだ。

 もう一度聞くが、お前は俺を受け入れる気持ちはないのか?」

ミレーヌ「はい、私にはお坊ちゃまの気持ちを受け入れることのできない事情があります」

アークス「それはなんだ?」

ミレーヌ「私はお坊ちゃまとの間に跡継ぎを産むことはできません。

 その訳は勘弁して下さい。

 たとえ、お坊ちゃまが無理やり為さっても、駄目なのです。

 そういう深い訳があるのです」

アークス「石女うまずめなのか? 

 それなら違う女に跡継ぎを産ませれば良いことだ。

 お前は一生俺の伴侶として側にいることを命じる。

 逆らうことは許さない」

 ああ、これはあかんやつだ。

 激しい感情で目が見えなくなっている。

 良識もどこかへ飛んでしまった。

 私は黙ってお坊ちゃまと私の間の空間を腕で真横に動かして線を引いた。

アークス「なんだ? 今の動作はっ。何なんだっ。どういう意味かと聞いているっ」

ミレーヌ「申し上げることはありません、アークス・サマーセット・ノストリア様。

少し休みたいので、部屋を出て頂けませんでしょうか?」

アークス「そうか。お前がその態度ならそれでも良い。お前は俺のものだ。

 誰にも渡さない。

 逃げようとしても無駄だ。

 部屋の外には兵を見張らせる。

 また後程会おう。今度は父上も連れて来る。

 父上の前で今と同じことを言えるかな?

 言えばお前は終わりだぞ。

 良いか、今度はきちんと受け入れることを誓うのだ」

 ドアが閉められた。

 廊下の方で兵たちに命令するアークスの声がする。

 決して部屋から出すなと。

 監禁する積りだねっ。

 もう坊ちゃまではない。ただのアークスで良い。

 私はさっきの無言の動作で、彼との間に一線を引いたのだ。

 それは心の中で引いた誰にも超えさせたくない一線なのだ。


 私はキンブル氏の手紙を出した。

 そこには走り書きながら優しい文字でこう書いてあった。


《 ミレーヌ、お前の領主館での活躍は密かに伝え聞いている。

 だが最後になると必ずお前は無理にでも伯爵一族の手足として取り込まれるだろう。

 お前はもっと自由な気質の娘だから逃げ出したくなるかもしれない。

 もしそれができたなら、ここに書いてある所に行くと良い。

 同封の木札の紋章を見せれば、相手は一度だけお前の言うことを聞いてくれるだろう。

 だが、もし逃げ出す気がないなら、この手紙も紋章も処分して欲しい。

 ではどちらに転んでもお前が幸せに生きられることを願っている。

    ジョナサン・キンブル》


 旦那様の名前がジョナサンだと初めて知った。


 私はこんなときの為に買っておいた真っ赤なドレスを身に着けた。

 その上で私はドアを開けて、見張りの兵士にその姿を見せながら声をかけた。

ミレーヌ「これから少し休みますので、部屋に入らないようにして下さい」

 兵士が何か言う前に私はドアを閉めた。

 私はそっとドアの鍵をかけてから、急いで着替えて男の子の服装にした。

 頭にはバンダナを巻いて髪の毛を隠し、身軽にすると窓を開けた。

 行動開始だ。時間の無駄は厳禁だ。

 ベッドを窓際まで持って行き、ロープを結んで下に垂らす。

 そしてロープを伝いスルスルと下まで降りる。

 それから私は素早く裏庭を横切ってお屋敷の塀の所まで来た。

 領主館は三メートルの高さの石塀に囲まれているので、門以外からは出入りできないようになっている。

 うまい具合に庭師が使う長梯子が無造作に立てかけてあったので、それを使って塀に登った。

 そして新たなロープを長梯子の一番上の段木に結び付け、そのロープを伝って塀の外に降りた。

 梯子は多少動いたが幸いにそれ以上は揺らがなかった。

 私は少し走ってからさっき着た赤いドレスを出して木の枝に引っ掛けると、また元の道を引き返した。

 急いでロープを登り梯子を下りて塀の中に入り、さらに窓から垂れているロープをよじ登り部屋に入るとそっとクローゼットの中に入ったのだ。

 何故ならもうドアは激しく叩かれているからだ。

「ミレーヌ殿っ、開けて下さいっ。開けなければ合鍵を使いますよっ」

 これは騎士のスミスの声だ。

 間一髪だった。

 ドアが開け放たれ窓際まで駆け寄る音。

スミス「しまった。このロープで脱出したんだ。

 みんな私に続くのだ。待て、ロープが弱いから一人ずつだ」

 少しすると声が遠くなる。

スミス「梯子だ。しまった。庭師の長梯子を使って塀を登ったんだ。

 でも登れても降りることはできない筈。あっ、なんだ、これは?」

スミス「ロープだっ。一番上の段木にロープを縛って垂らしている。

 でもこれでロープが固定できるのか、梯子が浮いてしまわないのか、やってみる。どうだ?」

兵士「梯子の下が少し浮いてます。スミス殿は無理かと?」

スミス「待てよ、向こうの林に赤いドレスが見えるが」

兵士「ミレーヌ様が確か赤いドレスを着てました」

スミス「ドレスだと動きにくいから脱いで行ったのか? それとも着替えて行った? よしすぐ領主様に知らせて追手を出すぞ」

 再びバタバタ走る音がして、今度は知らせを受けてやって来たらしい領主とアークスの声がした。

アークス「逃げました。でも捕えても罰しないでください」

領主「やはり頭の良い娘だ。

 見かけは幼いから騙されがちだが、いったいどこからロープを持って来たのやら。

 しかし固定されてない梯子の上段からロープを垂らすとは、なんと奇抜なことを考える娘だ。

 だが、安心しろ。都市の門以外に出入り口はない。

 しかも部屋の外に姿を見せてから半刻もも経っていないから徒歩では市街地にも辿り着いてないだろう。

 じきに捕まると思うぞ。

 さて、居間に戻って茶でも飲んで待つことにするか」

アークス「お父様お願いです。ミレーヌは処罰しないでください」

領主「いや、お前の妻にはしない。その代わり奴隷に落としてしまう。

 その後お前が自分の奴隷にするのは構わないがな」

 おお、なんと恐ろしい領主だ。

 やっぱりここにはいられない。


 さて、そろそろ追手が市街地に入った頃だろう。

 恐る恐るクローゼットから出てみると窓からまだロープが垂れたままだ。

 私は再び窓からロープを伝って下に降りた。

 降りたらすぐに手に土をつけて顔を泥で汚す。

 これでずいぶん印象が違う。

 そして、梯子を見るとロープをつけたまま屋敷の壁に戻されていた。

 余計なことをする奴がいるっ。

 私は再び長梯子を石塀の所まで持って行き立てかけた。

 今度は不安だったので梯子の最下段の段木に布を渡しその両端に重い石を置いて浮かないようにする。

 それから梯子を登って、ロープで塀の外に降りた。

 今度はぐらぐらしないで安心だった。

 私は林を抜けて行く。

 赤いドレスはそのまま枝にかけたままで無傷だったのでふるさとバッグにしまっておく。

 市街地が見えて来たが兵士の姿はもう見えない。

 もっと先の方を進んで行ったのだと思う。

 確か追手は馬と徒歩の二段構えで包囲網を作っている筈だ。

 だが肝心のターゲットの魚は網の外からのんびり歩いているのだ。

 だから網を掬い上げても私という魚は入ってないのだ。

 これは山火事作戦と似ている。

 燃えた後のところを歩いても山火事で死なないのと同じだ。

 

ケリー「ミレーヌさんじゃないですか? どうしたんです? その恰好は」

 街中を騎士や兵士が捜索しているので、ケリー団が様子を見に出ていたのだ。

 私はすっと彼らの中に紛れ込んだ。

ミレーヌ「無理やり奴隷にされそうになってるんだ。ところで街の外に出る用事はあるかな?」

ケリー「いやこれから木苺を採りに仲間と出かけるところだったんです」

ミレーヌ「木苺のジャム作りの季節だものね。頼まれ仕事かい?

じゃあ、ちょっと門の外まで一緒に行こうか?」

 私は彼らと一緒に都市の門を出ることにした。


兵「どこへ行く」

ケリー「はい、森の入り口まで行って木苺を積んで来ようかと思います」

兵「そうか、今時は良いジャムが作れるからな」


 門番の兵にそう言って七人ほどの少年たちがケリーを先頭に出て行く。

 彼らは本当に木苺を摘んで戻るのだから怪しまれることは後々もない。

 

 ケリー「ここでお別れです。気をつけて」

 ミレーヌ「ありがとう」

 ケリーたちと別れたのは森へ行くこみちの手前だった。私はそのまま街道を進むが、追手がかかった場合は捕まってしまう。

 多分馬で追ってくるだろうから、すぐ追いつかれる。

 私は更に服を着替えて目立たない緑色の服を纏った。

 そして街道から百メートルほど離れた森の中を移動した。



 その頃、スミスが領主館に戻って報告をしていた。

スミス「不思議です。ミレーヌ殿はどこにも見当たりません。

 たとえ走っても市街地に着く前に追いつく筈なのですが。

 さらに市街地も大勢の兵士で虱潰しに捜索しましたが、誰も彼女を見ていません」

アークス「ああ、どうしよう。ミレーヌが消えてしまった。俺の前から消えて……」

領主「うるさいっ。うろたえるでないっ。

 さてさてあの小娘め。どんな手品を使ったのだ?

 もう一度あの現場に行ってみるか」

 そして領主たちはとうとう石塀に立てかけられた長梯子を見つけてしまう。

領主「やられたっ。あの長梯子は外から侵入されたら困るので、一度片付けさせたものだ。

 それが再び塀に立てかけられていて、おまけにぐらつかないように重石まで使っている」

スミス「これはどういうことですか?」

領主「陽動作戦だ。しかも一人時間差陽動作戦だ」

スミス「どういう意味でしょうか?」

領主「お前は窓からロープが垂れさがっているのを見て外に逃げたと思ったろう?」

スミス「はあ、もちろん」

領主「だが、部屋の中にまだ隠れていたのだ」

スミス「どうしてですか? わざわざ逃げられるのにどうして部屋に戻って来たのです?」

領主「そのまま逃げれば追いつかれるからだ。

 その証拠にお前はミレーヌが部屋に鍵をかけたのを怪しんで合鍵を使って入ったろう。

 お前たちが追いかけて行った後なら、誰も追いかけて来ないだろう? それを狙ったのだ」

スミス「…………あっ」

領主「なんだ? どうした」

スミス「へいの向こうの林が見えますか? あそこにあった赤いドレスは、女の物だから触らずにそのままにしておけと言ったんですが、なくなってます」

領主「そうか、あの赤いドレスも小道具だったか。

 あそこで脱ぎ棄てて逃げたという風に思わせるために。

 その後回収していったのか」

スミス「驚きました。賢いですね」

領主「あの小娘め。危険すぎる。必ず奴隷に落としてやる。

 だが生け捕りが難しかったら多少怪我させても構わない。

 行くのだ。

 恐らく頭を使って門を突破したに違いない。

 街道が分岐点になるまでに追いつけば必ず捕まえることができる。

 行けっ」

スミス「はっ」


 


 私は街道の上を歩いて行く訳には行かなかった。

 必ず馬を使えば追いつかれて捕まるからだ。

 だから街道沿いに森の中を歩くようにしているのだ。

 森の中を緑の服を着て歩けば見つかりづらいからだ。

 しかし森も街道から一キロ以上離れている。

 そして森がうまい具合に街道に沿っていれば良いが、そうはいかない。

 だんだん離れて行くのでどんなに遠くても街道が見える範囲で歩いて方向を見失わないようにした。

 最後は森から外れて草原を歩いた。

 見通しが良いので、ときどき人馬の気配がしたら、草の中に伏せて身を隠した。

 大部分はただの旅の馬車とかだったが、物凄い勢いで数頭の馬が駆けて来たときは、やって来たと思った。

 その時街道からの距離は一キロ半だ。

 来たのは伯爵領の兵士たちだった。

 待てよ、あれはスミスとかいう騎士だ。騎士その二もいる。ほか三名だ。

 この世界の人間は目が凄く良い。

 そしてスミスが私の姿を見た。

 草の中に座っていたのだが、目と目が合ってしまったのだ。

スミス「おーい、そこの少年っ。女の子を見かけなかったか?」

 私はわざと聞こえないふりをして首を傾げた。

 だがスミスは見破ったらしい。

スミス「ちょっとそっちに行くから待っててくれ。

 聞こえないならもう少し近づくから逃げないで」

 これはやばいっ。

 私は森の方を見た。一キロ以上も離れているっ。

 逃げるんだっ。

 私は森に向かって走った。

 だが、スミスは馬に乗ったままこっちに来る。

 他の連中も来る。

スミス「あれだっ。門番は女の子は通らなかったと言ってたから、男に化けていたんだ」

騎士たち「「待てぇぇぇぇぇ」」

 絶体絶命だっ。

 手練れの騎士が五人馬に乗って追いかけて来る。

 そのうちの一人とだって戦えば敵う訳がない。

 捕まったら奴隷にされる。

 そのとき森へ行くのとは少し斜めに逸れた所にある花を見つけた。

 その花の色で分かったのだ。

馬留草ホースストッパーだ。私はその方向に走った。森からは逸れるが仕方がない。

 後五十メートルで捕まるというときに、馬が立ち止まってくれた。

 馬がうまい具合に目的の茂みに辿り着いたのだ。

 馬が酔ったようになり馬留草ホースストッパーを食べ始めた。

 すると幾ら騎士が鞭を鳴らし拍車をかけても動こうとしない。

 中には転がって良い気持ちになっている馬もいる。

 猫にマタタビというが馬に馬留草ホースストッパーだ。

 私は今度は森に向かって走った。騎士たちも馬を放置して走った。

 男の足は速い。コンパスが長い。

 どんどん距離が縮められて行くが、後十メートルというところで森に入ることができた。

 森に入ると脚力だけでは追いつけない。

 私は騎士たちより森の中に慣れている。

 露出した木の根に躓かないように、枝打ちしていないので下枝にぶつからないように、茂みを上手に避けるようにと、色々コツがあるのだ。

 もっとも騎士たちだってそのくらいは知っているだろうが、森の中を歩いたり走ったりしている期間が私は彼らより長い。

 うまい具合に風上に位置を取って走ると、私は唐辛子の粉を振りまく。

 少しは効いた感じで三人ほどは目を擦っているが、追いかけながら物騒なことをスミスが言った。

スミス「仕方がないっ。殺さなければ多少傷つけても構わないっ」

 そして、短剣を抜いて投げようとするっ。

 それなら、こっちも。

 私はふるさとバッグから石を取り出した。

 投擲用の石は使いたいときには転がっていない。

 野原でも森でも石くらい転がっていそうなものだが、案外必要な時には見つからない。

 だから私は手ごろな石を武器としてふるさとバッグに入れておいてある。

 これなら地面から拾った石を投げたと思ってくれるだろうからだ。

 私は騎士たちの頭には投げない。

 命中すれば効果はあるが、避けられることが多い。

 だから足に投げる。もちろん骨折はしないが、相当痛いので少しでも走る速度が落ちるようにだ。

 だが、命中しても夢中に走っているせいかあまりスピードは落ちない。

 そのときある気配がしたので、私は慌てて手近な木に登った。


 高さ五メートルほどの枝に登ったとき、木の下に騎士たちが追い付いた。

「降りて来いっ。ミナール、お前はもう手配されているのだっ。ここから剣を投げて串刺しにしても良いのだぞっ」

 ミレーヌ殿がミレーヌという呼び捨てになっている。

 つまり罪びと扱いだ。

 どうせ伯爵家の金を盗んで逃げたとかなんとか罪をでっち上げているのだろう。


「「「いててて……」」」

三人の騎士が足の脛を押さえる。

「「目が……鼻が……」」

スミスと騎士二が目や鼻を痛がってる。

 おっ、今頃唐辛子とか石礫の効果が……。

 多分追い詰めたせいで緊張が解けたからか。

 だが次の緊張がすぐ始まるよ。


ウォォォォン、グルルルル……

 そのとき唸り声が周囲に響いた。

 狼たちの気配に最初に気づいたのは私だ。

 だからいち早く木に登ることができた。

 でも彼らにはそうする時間がない。第一、騎士様が木に登るのは恰好が悪いのでしないだろう。

 彼らはもちろん戦う積りだ。

 剣で斬れば殺せるから。そうそれがせいぜい十匹前後ならば。

  けれども集まって来たのは二十数匹だ。

 となると、一人につき四匹以上同時にかかることができる。

 腕の良い騎士様でも三匹までだと思う。両手に剣を持って、片足で蹴飛ばせばうまく行けば三匹は相手にできる。

 ところが四匹いれば四匹目は軸足に噛みつくことができるのだ。

 私は目を瞑って枝にしがみつきました。

 彼らはこの場に留まらず、逃げながら戦っています。

 戦う音がだんだん遠ざかります。

 そして目を開けると、木の根元には五匹だけ残っていました。

 私は痺れ薬を塗った寸鉄を投げ下し、油断している五匹に突き刺しました。

 その後、動けなくなった狼たちの体から寸鉄を抜いて回収し、獣避けの香草の匂いをプンプンさせながら森を抜けました。

 馬たちはまだゴロゴロと草の上を寝転がっていましたが、それには構わずに街道に出ました。

 

 通りかかった野菜を摘んだ荷馬車に声をかけた私は、御者の青年に言いました。

ミレーヌ「お兄ちゃん、途中まで乗せてってよ。お金払うからさぁ」

青年「坊や、俺はこの先のニューロイヤーの街に野菜を売りに行くんだ。

 野菜を売るのを手伝ってくれるのなら、ただで乗せてってあげるよ」

ミレーヌ「本当っ。じゃあ、手伝うから乗せてって」

青年「俺はサンクス村のローソンというんだ。坊やは?」

ミレーヌ「ミレー……っていうんだ」

ローソン「ミレー君か、街になんの用事?」

ミレーヌ「うん、ボク。冒険者になるんだっ」

 あっ、しまった。ついノリで適当なこと言ってしまった。

ローソン「はははは……小さな冒険者さん、それじゃあ俺の横に乗りな」 

 そして再び荷馬車は動き出しました。 

ここまで読んで頂きありがとうございました。ブックマークもいつの間にか少し増えてます。そのことについても感謝しています。

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