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田舎娘ミレーヌが妖精になるまでの物語  作者: 葉裏
第一章 見かけは十才の女の子
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ノストリア伯爵とのやり取り

初めて貴族である領主との顔合わせです。貴族の腹黒さを見せつけられます。

 ノストリア伯爵はここの領主様だ。確かキンブル氏は私の引き抜きに不賛成だった筈だ。

『お前のことは伯爵家にも聞こえていて、引き抜きの話も囁かれているぐらいだ。

 だが私としても今お前を手放したくない』

 私はこの言葉を思い出した。

ミレーヌ「あのぅ、今これから商会に行く所なのです。出勤しなければ心配しますので、ご主人様に一言断って行きたいのですが」

騎士「いや、商会にはこちらから連絡しておきます。領主様の命令ですので、すぐにご同行下さい」

 ああ、これってほぼ拉致に近いよね。それに領主命令には絶対逆らえないし……。

 どうしよう、このまま引き抜かれてしまったら。

ミレーヌ「分かりました。参りますが、また戻って来れるのですよね?」

騎士「大丈夫です。私物などの荷物があれば、後で取りにいかせますので」

 って、ほぼ戻れないじゃないか、これってっ。

 するともう一人の騎士が馬車から降りて来て、二人がかりで私を抱きかかえるようにして馬車に乗せた。

 私は途中一度も足を地面につけないまま馬車の中に入って、両脇に騎士様にがっしり挟まれたまま座らされたのだっ。

騎士二「出してくれ」

馭者「はい」

 私は途中で気が付いたのだが、何故か体が動かない。どうしてかと自分の両腕を見たら原因が分かった。

 騎士様たちの腕が両側から私の腕を押さえつけているのだ。

 私の二の腕は騎士様たちの腕と椅子の背もたれに挟まれてロックされているのだ。

 そんなことしなくても逃げやしないからっ。

 そして馬車から降りるときも私は地面に足を着けることができないままどんどん先に運ばれて行った。

 そしてやっと足が床に着いたと思ったときは、正面に怖い顔した男性がふんぞり返っていた。

 渋い感じのナイスミドルってとこだが、金髪と青い目が貴族の威厳と威圧を感じさせる。

 顔全体は鷹のような印象だ。眼力が怖い。

騎士一「ご領主さまのドナルド・サマーセット・ノストリア伯爵様だ。ご挨拶せよ」

 えええっ? 貴族様への挨拶って知らないよ。ファンタジー小説じゃ、確かスカートを摘まんで、膝を曲げるんだったか?

 いや、あれは貴族のお嬢様がやる挨拶か? 平民は…ええい、面倒だ。日本式土下座で顔は伏せたままって奴で行こうっ。

 でもって、私は土下座をして額を床につけたまま微動だにしなかった。

領主「おい、何をしている? 平民の挨拶なのか、それは?」

騎士「「私たちの真似をするのだ」」

 左右を見ると片膝立ちで顔を伏せ右手を胸に置いている。

 そういうのは事前に教えてっ。

 早速、私は真似しながら声を出した。

ミレーヌ「キンブル商会の下働きをしているミレーヌです」

領主「立つが良い」

 私が立ったまま顔を伏せていたので、追加の指示が来た。

領主「顔もあげよ」

 ああ、面倒くさい。いったい何の用事で私を拉致して来たんだ。

領主「お前のことは耳にしている。本来はここの小間使いとして雇われる筈だったものを商業ギルドの担当が勝手に候補から外して商会の方に廻してしまったようだな」

ミレーヌ「いえいえ、私はあのときは田舎から出て来たばかりで訛りも酷く、都市のことは何も知らなかったので、外して頂くのが当然の処置だったのです」

 でも領主さまは私の話を聞いた感じではなかった。

領主「二人を呼べ」

騎士二「はっ。商業ギルドのノラ主任とトニー事務員中に入れ」

 すると畏まって進み出て来たのは、ギルドで応募者の整理をしていたお兄さんとその上司らしい綺麗なお姉さんだった。

領主「お前たち二人がこの者の面接もせずに勝手に候補から外したのだな。何か当伯爵家に優秀な人材を入れたくない理由でもあるのか?」

 二人は首がもげるのじゃないかと思うくらい激しく首を横に振った。

領主「まあ、仮に訛りがひどかったとしてもだ。初めから面接もテストもせずに候補から外すのはどういうことだ?

 テストに落ちてから商会に廻すのなら分かるが、最初からというのは気に入らないな。

 お前たちにはこの者の有能さが見分けられなかったというのか?」

二人「「も……申し訳ありません、ご領主様っ」」


 見てて二人が気の毒だった。私はこの二人が間違ったことをしたとは少しも思わない。

 伯爵の方が言いがかりをつけているように感じる。

領主「もういい、下がれ。今後は気を付けるように」

二人「「ははぁぁぁ」」

領主「ミレーヌ、という訳でお前が商会の方に行ったのは、あの二人のミスだと言うことが分かった。

 間違いは改めなければいけないが、あくまでお前の意思を尊重したい。

 どうだ、商会に留まるか? それともこっちに来るか? 選ぶが良い」

 えっ、選べるの? じ……じゃあ……。

ミレーヌ「ご領主さま、え……選んでも良いのでしたら、折角縁があって今キンブル商会にひと月以上勤めていますので……」

領主「そうか、やっぱりな。いやいや良いのだ。大事なのは本人の意志だからな」

 はぁぁぁ、良かった。やっぱり今のところを変える気は……

領主「さて、となるとどうやって帳尻を合わせようか」

騎士一「伯爵様、当然この事態を招いたあの二人を処刑して責任を取らせれば良いと思います」

領主「そうか。そうだな。そうすればこっちの体面も保てるし、ミレーヌの希望も生かしてあげられる」

 ええっっ。 あの二人の命が引き換えなのっ。

ミレーヌ「ま……まっ……待って下さいっ。ご領主様っ。私がこちらを希望すればお二人は許してもらえるのでしょうか?」

領主「いやいや無理することはないぞ。そもそもあの二人のミスが原因なんだからお前が責任を感じることはないのだから」

ミレーヌ「あっ、ご領主様、私はさっきの返事最後まで申していません。さ……最後まで聞いて下さい」

領主「ほう、そうだったか? 返事の途中だったか。それは悪いことをした。では最後まで言ってみよ」

ミレーヌ「では最初からもう一度言います。

 ご領主さま、え……選んでも良いのでしたら、折角縁があって今キンブル商会にひと月以上勤めていますので……

 本来ならこのまま引き続き勤めたいという所ですが、ひと月以上勤めてみて、実は……やはり商会の仕事は私に向いてない気がしてどうしようかと悩んでいたところなのです」

領主「そうだったのか、知らなかった」

ミレーヌ「そこへご領主様から声がかかり、お誘いを受けてようやく決心がつきました。ありがたくこちらに来させて頂きたく思います」

領主「そうか、そうか。じゃあ、あの二人はどうするかのう」

騎士一「伯爵様、間違いが改められてミレーヌ殿が当家に来られるのであれば、無駄な血を流す必要もないかと」

領主「そうか、それじゃあ、あの二人には何もせずに帰してやれ」

 それを聞いて私は全身の力がどっと抜け落ちた感じになった。

 貴族って怖いっ。


領主「ところでお前の話は色々聞いている。中でも半端者の少年たちを導いて真面目に勤労に就かせたという話に興味を持った。

 そこで物は相談だが、わが息子にできの悪いのがいてな。

 我儘で不真面目で阿保なのが一人いるのだ。

 世話する侍女をつけても長くはもたない。

 そこでミレーヌ、お前がなんとかそのバカ息子付きの侍女を引き受けてはくれないだろうか?

 いや、これはあくまでも相談で強制ではないのだが」

 その手は喰わないですよ、ご領主さま。あなたの相談というのはほぼ逆らえない命令ですよね。

 断ったら今度はどんな無理難題を吹っ掛けられるか(汗)

ミレーヌ「た……大切なお坊ちゃまのお世話をさせて頂けるとは光栄です」

領主「そうか、引き受けてくれるか? 感謝するぞ。スミス案内してやれ」

 するとスミスと言われたのは騎士様その一で、私を手招きしてその場所から外に連れ出した。

スミス「事の次第は商会にすでに伝えてある。後で向こうの方で私物の荷物をこちらに届けてくれるそうだ。

 だが、今着ている商会の服は脱いで廃棄してもらう。

 それと侍女の部屋があるが、伯爵の坊ちゃんのアークス・サマーセット・ノストリア様の隣の部屋になる。

 呼ばれたらすぐに駆け付けることができるように、ご本人の希望でそうして来た。

 だがそこの住人は長続きしない。ミレーヌ殿は少しでも長くいて欲しいと思う」

 それを聞いて少し希望が湧いた。

 私も少しは頑張るが、そのバカ息子にそのうちクビにされると思うのだ。

 そうなったら伯爵には失望されるかもしれないが、ここを出ることができる。

 まさかその後商会に戻るという訳にはいかないから、追い出されたら違う都市に行こう。

 だがそれとは逆だが、クビにされるのも癪だなとも思う。どうしたら良いだろう?



最後まで読んで頂きありがとうごいざいます。次回は馬鹿坊ちゃまとの顔合わせです。

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