表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎娘ミレーヌが妖精になるまでの物語  作者: 葉裏
第一章 見かけは十才の女の子
10/52

ゴブリンの正体

ミレーヌが隠していたことがキンブル氏にばれてしまうと言う話です。

 キンブル氏はいつものようににこやかではなかった。

「ミレーヌや、お前は今回も素晴らしい働きをした。

 全くお前の能力は阿保なせがれのボビーに少し分けてやりたいぐらいだ。

 お前たちだけでどれだけの収穫があるかと思ったらなんと全部で十キロ近くになったという。

 それも籠の数が一人に一つずつ当たっていたら。もっと多かったのではないかとも言われてる。

 プロの女の人たちも舌を巻いているから、お前の子供たちへの指導力が高く評価されていると思っている。

 お前のことは伯爵家にも聞こえていて、引き抜きの話も囁かれているぐらいだ。

 だが私としても今お前を手放したくない。

 本当にお前はよくやってくれる。

 と褒めるのはここまでにして」


 キンブル氏は急に難しい顔になっている。

キンブル「ところで今回お前は私に何か隠し事をしていないか?」

ミレーヌ「えっ、それはどういう……」

キンブル「何か恐ろしい目に遭って、そのことを隠しているのではないかということだ」

ミレーヌ「……」

 いったい何のことだろう? もしかしてあの怪物のことか?

キンブル「実はお前たちが谷に降りて採取したことが冒険者ギルドにも伝わってな。

 あの場所はおばさんたちには無理だが、冒険者ならいけるのではないかと新しい採取場所の開拓のため調査団を派遣したそうだ。

 確か報告にはなかったが、お前は謎の女性冒険者に川に落ちた所を着替えを貰うなどして助けて貰ったそうだな?」

ミレーヌ「はい、実はそういうことがありました。ドジな話なので報告を控えさせていただきました」

キンブル「実はリクラエ林の奥の方でゴブリンの死体と狼の死体が発見されたのだ。

 お前たちのケリーグループが採取していたすぐそばの場所だ。

 狼はゴブリンに殺されていたが、ゴブリンは全身に毒が回っていて、腹や顔や頭部に様々な武器で攻撃された跡がある。

 詳しく調べると弓矢と槍と何か鎌のようなもの、それとモーニングスターとハンマーや寸鉄のようなものが使われていた。

 つまり最多で六人の者が武器で攻撃して倒したことが分かったのだ。

 お前が川に落ちたとき出会ったのは女性の冒険者一人ではなかったのだろう?」

 うわぁぁ、まずい。これはまずいですぅぅ。なんて言おうか……。

ミレーヌ「実は……恐ろしい者を見ました。そのゴブリンとかいうモンスターがやって来て私は逃げようとして川に落ちたんです。

 でもそのことを言うとあの子たちはパニックになると思って言いませんでした。

 私が川から上がるとゴブリンは死んでいて、冒険者の六人パーティが立っていました。

 その人たちは男五人と女一人で、弓使いの女の人が私に着替えの服を着せてくれたのです。

 それでお礼がてらお名前を伺ったところ、訳あって名乗るこちはできないとのことで、自分たちに会ったことは内緒にしてくれと頼まれたのです。

 命の恩人の頼みですから報告しませんでした。

 どうやらその人たちはその怪物を追って奥地から来たみたいで、目的を果たした後また奥地の方に戻って行きました。

 これがすべてです」

 私はそう言って神妙な表情でキンブル氏の言葉を待った。

キンブル「そうか……やはり怖い思いをしたのだな。

 しかし、少年たちを怖がらせまいとそのことを言わなかったのは正解だ。魔物の存在は広くは知られていないからな。

 しかし恩人との約束を破らせてすまなかった。

 だがこれでギルド長にも報告できる。ギルド長は直接お前に尋問すると言ったが私は保護者の立場で断ったのだよ。

 もしかするとお前が出会った冒険者たちは世に言う『モンスターハンター』ではないかな。

 それとこれは固く口留めされていることだが、お前にだけは話しておく。

 そのゴブリンは普通のゴブリンではないそうだ。

 変異種というよりゴブリランという特殊な種類だということだ。

 ゴリラの雌を苗床にした結果、なんらかの突然変異が起きて生まれた怪力の種だそうだ。

 まあ、生きていられただけでもお前は運が良い。

 怖い思いをしたね。さあ、部屋に戻ってゆっくりお休み」

 キンブル氏はやさしくそう言うと私を送り出してくれた。

 そうやって私は普段の生活に戻りたかったのだが、狩人バッグにはまだ私が採ったキノコが手つかずのまま眠っている。

 早く処理しないと劣化してしまうので、私はケリー団を招集した。

 彼らは目の前にある山のようなキノコを見て目を皿のようにして驚いている。

ミレーヌ「これは昨日こっそり私の所に届けられたキノコだ。

 だいたい十キロはある。

 この処理を頼まれた。汚れやゴミを取り除いて、根に着いた菌をカットしてくれないかな」

ケリー「その後どうするのですか?」

ミレーヌ「領民区の所で路上販売して適当な値段で売りさばいてください。商区では行わないこと。

 売った売上の七割を貰います。

 三割は売り子をやった君たちが貰ってください。

 それで良いと頼んだ先方の人も言っているので」

 なんだか私は嘘ばかりついているなと思った。

 けれどもふるさとバッグや狩人バッグの存在を知られる訳には行かないのでやむを得ないのだ。

 私が商会で働いている間、彼らはすべて売り切って七割の金額を持って来た。

 これが是非欲しいという訳ではないが、頼まれたキノコということでそうしなければ不自然になるので、貰っておいた。

 いつか何か頼みごとをしてもらった手当としてあげようと思う。

 

 そして再び平穏な毎日が戻って来たと思っていたら、青天の霹靂の出来事が起きたのだった。


「ミレーヌ殿ですね? 伯爵家からお迎えに参りました」

 突然商会へ通勤する途中騎士様に捕まってしまった。

 どうしよう?


  

最後まで読んで頂きありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ