表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名も無き者  作者: Shingetu
9/10

土壁の部屋 3

入り口を入るとホコリだらけの靴箱がある、

おそらく、ここで靴を脱いで一段高くなった廊下へと上がるのだろう。

しかし、佐野さんは靴を履いたまま廊下へと上がったではないか?!


まっ、まさか? ここっ?!


今朝までピカピカにしていた廊下とは大違いだ!

施設より酷いやないか!シンは目を疑った。


廊下のすぐ右には欠けたタイル張りの流しがある。

蛇口が3つ並んでいる排水口には、

得体のしれない異物が詰まっていて淀んだ水が溜まっていた。


流しと洗面所と共有なのか?横に並んで、腐りかけた、

木の開き戸がひとつ。ツーンと嫌な匂いがした。

おそらく汲み取り式のトイレだろう、

思わず息を止めた。


軋む廊下を歩く、そのすぐ角の左の部屋の前で佐野さんは立ち止まった。

ところどころガラスにヒビの入った引き戸を開けながら、


「ちょっと、汚れてるけど掃除すれば大丈夫、ここが君の部屋だよ」

とシンの肩を叩いた。そして、

「荷物があるなら運んでください」と平気で言った。


おいおい!まじかよって思うシンの心が通じたのか、

流石に親父も問いかけた。


「先ほどの社宅は空いて居ないのですか?」と聞く。

すると佐野さんは、

「そうなんですよ、いっぱいで、それに独身者は

こちらの社宅になるんですよ」と答えた。


「わかりました、おい、荷物運べ」


親父はあっさり納得しやがった。どうせ人ごとである。

さっさと運んでこの場から立ち去りたい感が半端ない。


「じゃ、如月くん、7時に夕食用意してるから、私の家にきてね」

と言って佐野さんは会社へと戻って行ったのだ。


親父は車のトランクを開けた。荷物と言っても家具やラジオ、

ましてやテレビなどあるはずもない。

そこにはひと組の布団が詰め込んであった。


たった、ひと組の布団と施設から持ってきた手提げカバンひとつ。

それだけを朽ちかけた部屋へと運び込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ