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名も無き者  作者: Shingetu
8/10

土壁の部屋 2

「あとの事は、この方に任せてあるので頼むよ」

そう言って社長は商談室から出て行った。


「佐野です、よろしくね」と挨拶された。


シンは目を合わせないまま、会釈した。

小柄で少し猫背ぎみの彼は40前後くらいか、

シンから見ればかなりおじさんに見えた。


これから、社宅に案内してくれるらしい。

親父と佐野さんと3人で社宅へ向かうことになった。


会社から車で30分ほど走った町外れの路地裏に社宅はあった。

2階建の長屋で8戸ほどある。木造瓦屋根で

古くはあったが良い感じの社宅だ。


佐野さんの社宅は一番手前の1階部分である。

「ただいま」と言って引き戸を開ける佐野さん。

「お帰りなさい、早いのね!」と奥から声がし、女性が現れた。


「あっ、いやっ!社長に案内しろと言われてね!

こないだ話してた、新入社員の子、連れてきたんだよ」

と説明していた。


どうやら、ご夫婦らしい。今日から、佐野さん宅で

朝、昼、夜と食事を用意してくれると言うことなのだ。


当然のことながら、食事代は給料から差し引かれ、

佐野さんに払う事となる。施設出のどこの誰かも解らない

ガキの面倒を押し付けられたのだから、

何らかの旨味がなければ誰も引き受けないだろう。


「それで、この子は佐野さんの社宅で一緒に

お願いできるのですか?」親父が問う。


「いいえ、ここは私たち家族だけです」

と佐野さん。家族?どうやら、子供も居るようである。


「食事はここでとってもらいますが、部屋は別の所です。

こちらです、どうぞ」そう言って

引き戸を閉めた佐野さんのあとを親父と着いて行く。


社宅から30メートルほど進んだ空き地の奥に

木造モルタル2階建の今にも朽ち果てそうな

建物が茂みの中に建っていた。

人が住んで居そうな気配は感じ取れない。まるで廃墟に近い建物だ。


ガ!ガガガッ!「こ、ち、ら、です」佐野さんは何度も

引っかかる引き戸を力ずくで開けながら建物の中へ案内する。

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