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退院そして卒業5
職員室に着いたシンはお世話になった先生に別れの挨拶をした、なんてことはない、ただただ、上目遣いで頭をさげるのみである、どの先生も良い思い出などこれっぽっちもなかったからだ、現代と違い、この時代の教育はなんでもありだ、罵倒、体罰などは当たり前の時代であった。事あるごとに、恫喝され、身体的苦痛を浴びせかけられる。
退院してから、仕返しに来るヤカラもいるくらいだ。閉ざされた空間の中では口車を合わせれば表には出るはずもない出来事が山ほどあるのだ、なんとも恐ろしい。
奥の待合室で待つように言われたシンは少し高台にあるこの施設の窓から、遠くに小さく見える田舎の街並みを眺めていた、1年数ヶ月、短い時間に思われるだろうがシンにとってはとてつもなく、長く苦痛の日々であったのだ。
これから、あの小さな田舎町でどんな日々が待ってるんだろう、不安なんかこの時は微塵も感じなかった、やっと自由になれるんだ!
誰にしばられることなく、監視などもない補導されて捕まることもない、自由だ!自由なんだ!この日が来るのを指折り数えた日々を振り返っていた。