表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喫茶探偵物語  作者: ゆきんこ
5/27

二つ名   喫茶探偵ショート その1


ー喫茶探偵物語5ー  


二つ名



事務所。


パソコンでデータを打ち込んでいるチヨ。


私が喫茶店でウェイトレスを給仕してる時、事務所では多くの案件を抱え、様々な事件を扱っている。ここ探偵事務所本部から支部へ、支部から本部、警視庁、警察庁へと大量の情報が行き交っている。


数日前に起こった新宿での連続殺傷事件。

神奈川での小学生女児行方不明事件。

北海道の資産家殺人事件。


どれもニュースやワイドショーで連日報道されている大きな事件。


数多くの事件に関わっているが、ここは決して表舞台に立つことはない探偵事務所。



頼まれたデータを各支部に転送する。


<浅田大輔 汚職>

データの中にこの前追い出した政治家の名前がある。


「フジシマさん、このデータはどこに?」


「それはそのままで。世間には公表しません」


「・・・・・」


「今回限りの義理です。マスターに借りを作った形ですが、いま逃れてもいずれ自滅するでしょう。その時は見限ると言ってました」



ここで仕事をすれば、世間の闇が見られます・・。



事務所での手伝いが終わり店内に戻る。


ミヤコとヨシダが雑談中。


「ーあの製薬会社か。あれは目論見が外れ大ダメージを喰らったな」


「2億だっけ?回収の総額が300万、大赤字。あの時のボスの顔は見物だったねー」


また物騒な話しをしてる。ここにも闇が渦巻いている・・。小説や事務所でのお仕事で耐性がついてるとはいえ、まだまだ私は入っていけない領域・・・ボスの顔?


「そういえば私、ボスの人間の時の顔知らないんですけど」


「おっ、じゃあ見せましょうかね」


「お願いします!」


ミヤコがスマホの画像を見せてくれる。 


禿げた赤ら顔、体格のいいステテコ、腹巻きの男性。満面の笑顔。


「・・・・・」


「どう?」


「・・思ってたより・・個性的ですね」


イメージと真逆なんですが・・。


「想像と違った?」


「小説のキャラと全然ちが・・!」


「ミヤコさん、そのスマホいつ買いました?」


「半年前かな?」


「どうしてそのスマホ画像にボスが?」


「バレた」 てへ


「誰ですか、その人」


「チヨがまだ会ってない二つ名持ち」


「・・・・・」



「ワシのスマホの待ち受けはボスだ」


「お願いします。ヨシダさん!」


「ワシが惚れた唯一の漢」


待ち受け画像、石原裕○郎(太陽にほえろ時)


「これは別のボスですよ!」


「この人がボスよ!」


ゴットファーザー画像。


「その人ドン!マーロン・ブ○ンド!」


「チヨは打てば響くねー」


最近はツッコミ要員になっている私・・。



スマホ画像を指で移動させ、


「写真はボロボロで直接撮ったやつね」


指で拡大して、


「この美女、だーれだ?」


ポーズをとる茶髪ロングの女性(峰不○子風)


「ミヤコさん、峰不○子みたい」


「ありがとー私も年取ったわねー」


「今でも十分魅力的ですよ」


「そう?じゃあ今晩一緒にどうですか?」


写真を指し、


「隣がボスですね?」


「チヨがスルーを覚えた!」


黒いコートに煙草をくわえたボス(松田○作風)


「渋いですね」


「アウトロー気取ってんのよ」


ちょっとカッコいいかも・・。


左に移動。


ボスの隣のサングラス白髪ロングの男(内田○也風)


「・・このロックンローラーみたいな人は?」


ヨシダを指す。


「・・・・・」


「懐かしい写真だな」


この変わりようは衝撃だよ!


画像を通常に戻す。喫茶店内での集合写真。


パンチパーマでフンドシ姿。眼光鋭い日本刀所持の男(菅原○太風)


え?順番からいって、まさか・・いやウソと言って!


「・・この、パンチさんって・・」


「マスター」


これ以上ない最大級の衝撃だよ!温厚な優しさも面影もないよ!


「ちょうど、1巻、2巻辺りの頃ね。あの頃は皆若かった」


小説のイメージが完璧に掴めました。マスターは塑像以上でした・・。


「フジシマ君はまだいないわね」


写真の隅に、オバQの等身大の着ぐるみ。


「・・・・・」


着ぐるみだが人間の腕が出ていて気味悪さが際立つ。


リアルQちゃん?


「その人も二つ名持ち」


「・・Q太郎?」


「ハットリくんよ」


「え?何で!?」


「なかなか出現しないレアな人物。素顔は私たち古参しか知らない。変装名人、武術の達人。忍者の末裔だって」


そういえば1巻に忍者みたいな人居たな。


「他にもいるけどこれが主力メンバーね。他を知りたかったら、はい」


小説、喫茶探偵物語2を渡される。


「読むがいい」


「・・ありがとうございます」




真夜中。


一気読みした小説のページを閉じる。

ため息。死人がバンバン出てるよ・・。


産業廃棄物の土地の利権を巡って、探偵社と対立する悪徳業者との闘い。基本探偵側は悪に容赦はなく弱者を陥れない、狙わない、筋を通す義賊(?)みたいな存在。

後半の見どころはミヤ(ミヤコさん?)が捕まり人質となり、喫茶店マスターが日本刀で乗り込むシーン。背中には鬼の入れ墨。ヤクザも避け恐れる男。通り名、鬼夜叉の健二郎。


一文字違いで、そうきたか・・。

ミヤという人は政治家にパイプ持つ謎の女。現実とリンクしてる?新たなキャラは武器屋の順義さん。土地転がしの有田さん。どう見てもアウト過ぎる職業です、怖いです。




三日後。


カウンターにマスター。

コーヒーを運びヨシダとミヤコの前に置く。


「で、どうだった?」


「・・はい、なんかもう言葉がみつかりません」


マスターの背をチラッと見る。


「そっか、気になるわねー。マスター、2巻読んだよ」


「・・読んじゃったか」


笑顔のマスター。


どう見ても写真と同一人物とは・・。


「久しぶりにマスターのモンモン見たいねー」


「いや、若い娘さんに彫り物はさすがにね」


「チヨもここの一員よ。見せるべき!」


「んー、・・刀とフンドシも用意してないしな」


ん?マスター何言ってるの?


「セットじゃないんだから、日本刀はチヨもビビるって」


いや、フンドシの方がビビるんですが・・。


「じぁあ、背中だけね」


見せるの!?


服を脱ぐと背中全面に般若の入れ墨。


生で見る初めてのタトゥー。


「いやー眼福ですな。私がいま生きてるのもこの鬼のおかげ」


ヨシダは手を合わせブツブツと拝んでいる。


唱えるようなことが?


服を着る。


「いや、些末なものを・・」


笑顔。


「いえ・・貴重なもの、ありがとうございました」


これってもうみんな私に対して確信犯だよね・・。絶対打ち合わせして計算して見せてるよね?



スピーカーからボスの声。


<チヨの二つ名が決まった>


「おっ、ついに襲名披露か」


「・・・・・」


<決まりで一つ目は却下できるが二つ目はできんぞ>


二つ名、正直いらないんですけど・・。


「私の時は極妻だった。二つ目の姉御で妥協した」


なにその昭和の香り。



<お前の二つ名は若い女性ということで>


ゴクリ


<「姫」だ>


「却下!いい歳してこれはない。恥ずかし過ぎるよ!」


<いいのか、二つ目は訂正できんぞ>


「・・・・・」


プリンセスとか言わないでしょうね・・。


<二つ目は>


ゴクリ


<「チヨッペ」>


ガッカリだよ、このセンス・・。


「どうせボスしか使わないから。フジシマ君は「ハンサム」を断って「ナイスガイ」よ。姫の方がいいなら私も姫って呼びたいけど」


「チヨッペでいいです・・」


二つ名ってこれ意味合い違うでしょう・・。


<第三候補もあったが男の名になってしまった>


ぶっきらぼうに、


「なんですかそれ」


<キクチヨ>


キク・・姉とかぶる。調査して知られているのか?いや2階の映画のポスターの可能性も・・微妙だけど前のよりは・・。


「キクチヨがいいです。なんとかそれでお願いできませんでしょうか?」


<そうか、キクチヨにしよう>


「キクチヨってなんか元ネタあるの?」


「・・好きな映画の主人公の役名です」


「最後に死ぬがな」


ヨシダさん、フラグ作らないで!




5終わり



6 初めてのコウカク




補足


チヨの双子の姉の名前は季玖キク

父親が黒澤ファン、七人の侍、役名菊千代から。

父親は藤子不二雄、太陽にほえろ等DVD所持。

その影響でこれらの知識有り。





喫茶探偵ショート その1


ショート1



キッチンでコーヒーの特訓中のチヨ。


コーヒーを味あう。


「・・・うん、いいかも。この感覚を忘れないように」


コーヒーミルを片付けるとスピーカーからボスの声。


<来てくれ!大変だ!>


「!」


急ぎ事務所へと入る。


小型犬シェパードが5匹、事務所中を走り回っている。


ワンワン! キャンキャン!


「ん?ん?んー?」


スピーカーから、


<分裂してしまった!>


「???」


<早く捕まえて合体させろ>


「???」


<早く!>


意味も分からず1匹を捕まえる。


クーン


うわああ!めっちゃ癒されるんですけど!!


てか、合体ってボス分裂できるの!?これボスの一部?


<早くしろ!>


もう1匹を捕まえる。


合体?身体同士をくっつける。


嫌がる2匹。


「くっつきませんが・・どうすれば!?」


<耳と尻尾をくっつけろ>


耳?・・ほんとに?


「おとなしくして」


くっつけようとすると抵抗。1匹が逃げる。


「あっ」


逃げた方向の柱の陰にボスの姿をとらえる。


チヨ ボス「・・・・・・」


子犬見る。ボス見る。子犬見る。ボス見る。


ジーッとチヨを見てるボス。


「・・・・・」


ゥオン、と鳴き満足そうなボス。



何という手間掛けたドッキリ!


なに考えてんだこのイタズラセクハラ犬!





ショート2



チヨ、キッチンで料理。


ボスの昼食を届けに事務所へ入る。


「ボス昼食です」


机の後ろのボスの定位置に虎。


「ぎゃあああああ!」


動く素振りがなく、よく見ると等身大虎の剥製と分かる。


「・・・・・」


柱の陰に目をやると満足そうなボスの姿。


暇人め・・・。仕事しろ!



おわり









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ