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喫茶探偵物語  作者: ゆきんこ
27/27

別れ

ー喫茶探偵物語27ー  


別れ



喫茶店探偵物語。


制服姿の眼帯少女メイ。

無人の喫茶店内から探偵事務所のドアを開け中に入る。


ソファに所員のフジシマ、ヨシダ。


「チヨは?」


所長デスクにボス(犬)と俳優剣菱彩。


注目する4人の表情に察するメイ。



「見つけたのか?」


フジシマがコピーの資料を渡す。


「香港で有力な目撃情報がありました」


資料に目を通す。


「情報を黙認することもできましたが、約束でしたから」


読み終わる。


ヨシダが、


「今の生活を捨てでも復讐を遂げるのか?」


メイは一瞬悲しげな表情。


「・・万が一、みんなに、迷惑かかる」


「お前に弓引く相手なら、オレたちも闘うと言ってるだろうが」


顔を下げ押し黙る。


下唇を強く咬み血が流れ出す。


フジシマがハンカチで口元の血を拭う。


「自分を大切にしてください」


「・・・・・」


「ヨシダさん、何度も話し合ったじゃありませんか」


「メイは可愛い孫みたいなものだ。心配して何が悪い」


「・・ヨシダ、すまない。・・これだけは譲れない」


「ヨシダさんも分かってますよ」


「情報、感謝だ。フジシマ」


フジシマにハグ。


「ヨシダも、ありがとう」


「情報を隠蔽しようと考えたがな」


「ヨシダも、みんなも、そんな事しないのはわかってる」


ヨシダにハグ。



剣菱彩の元へ。


「アヤ、ボスを守ると言ったが、反故になる」


「事情は聞いたよ」


ブラックカードを渡す。


「2億ある。それぐらいは用立てられると思うけど、軍資金は多ければ多いほどいい。選別じゃないから、余ったら直接返してよ。手渡しで」


アヤはメイシーを抱きしめる。


「お金より、その言葉のほうがうれしい。アヤ、ありがとう」



ボスの元へ。


「ボス・・」


ボスはキーボードのエンターを押す。


<メイ、お前は妙にプライドが高い。

それは長所でもあるが短所でもある。

感情に流されず行動しろ。


不利を悟ったら迷わず避けろ。逃げるのもひとつの手だ。

妥協できるなら妥協して、利用するものは利用しろ。

状況を読み、生き残る確率が1%でもあるならそれに縋れ。

泥水を啜ってでも、生き続けろ。


以上だ。オレの2人目の娘。メイ>


「・・心に留めておく。ボス」


ギュッと首に顔を埋め抱きしめる。



フジシマに、


「師匠に伝えてくれ。大好きだと。それとチヨや沙希。友達にも、里帰りするとか、理由づけてくれ」


「了解」


スマホを取り出しアルバムの画像を見る。

喫茶店内。探偵事務所内。チヨ。沙希。マセ子。

その一枚一枚目に焼き付け、フジシマにスマホを渡す。


「預ける」


「着信やラインが凄いことになりそうだ」



一同を見回し、


「みんなはわたしの、家族だ」


お辞儀をする。


「ミヤコさんが車で到着します。空港まで送るそうです」





ミヤコ運転、走行中車内。


沈黙。


「我儘で、ごめん」


沈黙。


「怒ってるか?」


「お互い納得済み。そういう約束だったから」


「・・・・・」


「約束したその日、始めてお母さんと呼んでくれたこと覚えてる?」


「うん」


「最良の日だった。死んだ娘が帰ってきたようで」


「・・わたしも、なにか、吹っ切れた日だった」


「感情が垂れ流しで、2人でワンワン泣いてね」


「・・泣いたな」


「その後の生活はしばらくギクシャクしてたし」


「・・慣れるまで時間、掛かった」


「だんだん慣れて会話も自然になって。沙希や友達もできて、一緒に遊んで、学校に入学して。表情には出さなかったけど、毎日楽しかったでしょう?」


「・・わかってたか」


「親子だもん」


2人笑う。



「お母さん。喫茶店のみんな。友達。かけがえのない私の宝物」


ミヤコ頷く。


「何度も、話し合ったけど、復讐心は変わらない。何より、わたしが生きてることで、この宝物が狙われないともかぎらない。それはわたしにとって、死より辛いこと。わたしが死ぬか、あいつが死ぬか、決着をつけないと終わらない」


「・・・・・」


「お母さんに甘えて、こんな状況を作り、危険なー


「それは言わない約束」


「・・ごめん」


「後悔してないでしょう?みんなと出会って」


「してない。・・大好きだよ。みんな・・・」


涙が流れる。




「私の自慢の娘だ。きっと戻って来る」


「・・・・・」


「こういう時は、嘘でも「帰るよ」「戻るよ」と言うのよ」


「・・・うん」


「難儀な性格ね。嘘を口にしないって。そこは願望でいいのよ」


沈黙。


「帰って来ないと許さないから」


「・・うん」



「帰ったら、また一緒の、ベット寝てくれる?」


「子供かあんたは」


「・・子供だよ。お母さんの前では」


「16歳にもなってしょうがないな。寝てやるか」


「・・ありがとう。お母さん」





成田空港。


第1ターミナル北ウィング。ゲート前。


長い時間抱き合う親子。


アナウンスが香港国際空港行きを告げる。


離れる。お互い目が赤い。



「涙も枯れたか。よし、チャチャッと片付けて終わらせて来い」


「うん。行って来る。お母さん」


「いってらっしゃい」


その言葉に笑顔で応え、振り返りゲートへと向かう。


表情から笑みは消え、それとは対照的な鋭い眼差し。

全てを賭け、元凶の「影」を倒すべき死地へと望む。

育ての母、仲間の仇。日本での生活。今の家族や友達を守る為に。



飛行機が香港へと飛び発つ。






27 終わり


「喫茶探偵物語」 第一部完



主人公だったチヨ 


「あれ?私の存在は?格下げというか、

ほとんどサブキャラ、モブ扱いみたいなんですけど・・」




スピンオフ アメリカ編


「独眼の少女は殺しのライセンスを持つ」 へ続く


別投稿で投稿します


https://ncode.syosetu.com/n4841ge/


ゆきんこ



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