蠱毒
虫も殺せぬ善人は
青息吐息、虫の息
まさに浮世は蟲毒の如し
虫唾が走る事ばかり
氷を疑う夏の虫は
ついに蓼の辛さを忘れ
玉虫色の世界を望む
納まるべき虫の
その居所はまこと悪し
虫の好かぬ相手に
殺す虫は無し
虫のいい話には
虫が起きた愚者を
艶華に虫付けば
十月経って虫が齧る
身中の虫を恐れ
塞ぎの虫が世に蔓延る
蟄居屏息の果てに
地を這いずる孤独な『蟲』は
一寸の身体と
五分の魂を
この彫虫篆刻に捧げた
■日本語の特に好きな要素の一つに『諺』がありまして。
由来を踏まえたうえでその比喩を読み取る、ってとても素敵なことだと思います。まあこれは日本語に限ったことではありませんが。
ただ、日本の諺は、簡潔で尚芸術的要素に溢れ、それで居て読み手の心を深く抉る―――そんなインパクトの強さがあると思います。
まあ飽くまでも私見なんですけどね。
ただそれだけ日本語が好きというわけでして。
この詩は、『虫』に絡めた諺・四字熟語のみを用いて作成しました。
結構楽しかったです。