表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンジョイマン  作者: 久保屋マーユム
9/9

7話 刺客ドゥース その三

十二月十五日。

4年前のその日は、歳が五つ離れた妹の10歳の誕生日で、お祝いにと家族と車に乗って隣町にあるレストランへ向かっていた。

車内ではしゃぎすぎな妹を俺が宥めていたのをよく覚えている。

区間を越えようと、自分たちの住む町と隣町の間にある橋に俺たち家族を乗せた車が差し掛かった時だ。

突然轟音が鳴り地面が大きく揺れたと思った瞬間、橋はその場にいた全員を巻き込み真下にある川へ崩れ落ちた。

車が川に着水して間もなく、大きな瓦礫が運転席に落下して多分、父さんと母さんは即死した。

車が変形し窓が壊れ、車内に大量の水が流れ込んできた。

俺は妹を連れて死に物狂いで車から抜け出した。

対岸まで泳ごうと努力したが、真冬の川の水温は氷点下まで下がっていただろうし、厚着をしていたので服が水を大量に吸い、思うように身体が動かせなかった。その場で踠いているうちに、段々と意識が薄れてきて俺はついに泳ぐのを諦めそうになった。そのとき。

急に知らない男が現れ、俺たち兄妹を抱え上げて川の流れなどものともしない屈強な泳きで、俺たちを海岸まで運んだ。

お礼を言おうと思ったが、既に男は川に飛び込み、中心部へ向かって泳いでいた。…まさか溺れている人全員を救うつもりだったんだろうか。

数秒呆気にとられていたが、はっとして妹に目を向けると、妹は身体が冷たくなって、意識を失っていた。

数分後に救急隊員に保護された俺たちは病院へ運ばれ、治療を受けた。

俺の怪我は数ヶ所骨折、全身打撲程度だったが、妹はそれらに加えて、原因不明の昏睡状態に陥っていた。

病院での検査では、頭部の外傷は無し、脳機能共に特に異常はないと診断された。

両親を事故で失った当時、妹の入院費用を稼げるのは俺しかいなかった。今思えば、遠い親戚なりを頼れば良かったと思うがそこまで頭が回らなかった。

暫くして学校をやめ、バイトをして金を稼いでいたがそれでも金は足りず、俺は仕方なく危険な仕事に手を染めていった。それが今の汚れ稼業に繋がっている。妹はいまだに目覚めない。昏睡の原因が不明なら、俺にできることはとにかく治療費を稼ぐ、金を稼ぐことしかない。

あの日、何もかもを失った俺がたった一つ手に入れた物がある。

それがこの町に住んでいると言うターゲットたちと同じ力だ。

この力で、俺は今回の以来を必ず為し遂げる。

そう、妹のために、俺は金が必要だ。

次回で刺客ドゥース編ラストです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ