四話 ロストグル松本 その三
「くそっ!出てきやがれ!」
影に潜む松本に向かって吠える清阪、相変わらずなにもない空間にパンチやキックを繰り出す。
「じゃあ出てきてやるよ・・・そらっ!」
「グヘェー!」
「もう一発!」
「うげっ!」
松本はちょうど清阪の死角に現れ、ヒットアンドアウェイ戦法で後頭部や脇腹を殴打した。
相手が床に倒れ込むとまた松本は影の中へ消えていく。
「いてえなくそ・・・卑怯なケンカしやがって!」
「卑怯で結構だ、お前みたいな喧嘩っ早い能力者は痛め付けておく必要があるからな。」
「また声だけ!!」
「何しに来たのか知らんが、うちの子分を一人で相手しようなんざ、よっぽどの馬鹿だなお前。昨日の野郎の復讐ってんなら受けてたつぜ。」
「がっ!!」
そう言うと松本は清阪の腹を踏みつけて、地面に押さえつけた。
「うわー、清阪さん、やられちゃってますね・・・」
「松本の能力はあいつ一人じゃどうしようもないな。考え無しで突っ込んでいってるし。」
外の入り口から場を覗きこむ回収班二人組。
「雷坂さん、どうするんですか?」
「俺にまかせろ、能力を使うから巻き込まれないように下がってろ。」
「わかりました!」
二、三度清阪を蹴りつけた後、松本は影の中へと消えた。
「痛ってぇ・・・立たねぇと・・・」
体制を取り直そうとする清阪目掛けて松本が蹴りかかる。
「上か!清阪アッパー!!」
「ふん・・・」
飛び上がって突き上げた拳は松本をすり抜け照明に直撃し、ガラスが割れて部屋の明かりが消えてしまった。
「あっしまった。」
「馬鹿が、俺に完全に有利なフィールドを作るとはな。部屋のほとんどが影、お前に勝ち目はない!」
「うるせぇ!出てきた瞬間に殴ってやる!」
「無駄だ、間に合わん。」
とどめを刺そうとした瞬間、照明が使えないはずの部屋が隅々まで明るく照らされ、松本が潜んでいた場所の影までも消えていく。
同時に、松本の姿はそこにしっかりと現れた。
「お前風に、雷坂フラッシュってとこか・・・チャンスだ!清阪!」
「サンキュ!トオル!」
「・・・来てやがったのか!!」
部屋を隈無く伝う雷坂の電流により、隠れ場所を失う。
「やっと隙が出来たぜ・・・うおおおおおおおおおおおお!!!」
清阪は今日一番の力を解放する。
「くらえ!!清阪パァァァアンチ!!!」
凄まじい一撃により吹っ飛んだ松本の体が壁に叩きつけられ、そのままめり込んだ。
「ぐぁぁあっ・・・このパワーは・・・単なる筋力じゃねぇ、それがお前の・・・」
そう言うと、松本は気絶した。
「ざまみろ!俺の勝ちだ!」
「や、やりましたね!清阪さん!」
「あれ、岡島も来てたのか。」
「あ、はい。」
「それより清阪、どうすんだよ、あいつ。」
気絶している松本を指差す。
——————————
朝を知らせる太陽の光に包まれ
松本ケンは目を覚ます。
「朝か・・・あれ昨日は確か・・・」
まだ体の節々が痛むが、無理やり体を起こす。
「そうだ、昨日は負けて・・・そんで・・・」
「・・・知らない天井だ・・・」
部屋から出て、一階へ降りるとリビングで因縁の四人組が朝食をとっていた。
「雷坂さん、醤油とってくださいよ!」
「はいはい醤油ね・・・なんかお前先輩使い荒くない?」
「そ、そうですか・・・?」
「自覚無しかよ、やベーなぁ。」
「雷坂のじっちゃん、白飯おかわり!」
「駄目、おかわりは一人2杯までじゃ。」
「いいじゃねぇか!俺は三食フルパワーなんだぜ!」
「前から気になってたけど、三食フルパワーってなんだ?」
呆然としていた松本が、ようやく口を開く。
「おい、こりゃどういう・・・」
「おぉ起きたかの、弟子4号よ。」
「あん?弟子だぁ?」
「そうじゃ、はよう朝飯くっちまいな。」
「チッ・・・・・・・頂きます・・・・・」
おいしい朝食だった。
続く
松本 が 仲間に なった !
次回から新展開です。