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エンジョイマン  作者: 久保屋マーユム
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一話 カツアゲ少年と岡島

ハルトの死から数年、清坂タケルは格闘家である雷坂(タカシ)というじいさん、そして息子のトオルと三人で暮らしている。

ジョンソン・セールスの出現によって世界中には<異能力>を持った人間が数多く存在していた。一個体が強力な能力を入手出来てしまった為、世界中では力を持った人間が優遇されるようになり、力を持たない人間は差別を受けるようになった。タケルたちが住む”K市”でもそれは行われていた・・・


時期は六月_真夏の日差しが照り付け、青い空のイメージとは対照的な程の熱気が篭る。タケルは二階にある稽古部屋の真ん中に大の字で寝転がっていた。暑い日特有の、床のひんやりした感触に、タケルはぐったりとしていた。隆は同じ部屋に置いてある”雷坂流道場”と書いてある看板を掃除していた。その迫力のある書体と、欅の鮮やかな木目が相俟って誰が何処から見てもそれは立派な道場の看板に見える。門下生はタケルとトオルしか居ないが・・・


時間という存在すら忘れてしまう程ゆったりと過ごしている中、道場の外がやたら騒がしい。


「ひぃぃぃいごめんなさいぃぃい!!」


そこには子供と思わしき人物の声が聞こえる.

どうやらカツアゲされているようだ。


「なんじゃ、この雷坂流道場にでも入門しにきたのか?」

隆は冗談めかして言う。


「そんな訳ねーだろジジイ、ちょっと俺が見てくるぜ」


さっきまでぐったりモードだったタケルも、さすがに自分の家の前が血塗れの殺人現場みたいになるのだけはヤバイと感じたのか、念のため窓から外を覗いて様子を見ると、そこには中学生ほどの身長の少年と、それを覆う程_と言ってもタケルと大して変わらない大きさの男が二人で囲むように立っていた。


「兄貴ィ!このガキ、俺に任せてもらって良いですか!俺の<相手の強さを図る能力>で見た結果、こいつの強さの数値は1!ゴミだ!」

「そうか、殺さない程度にしておけ」


そう言うと兄貴と呼ばれるリーダー格の男は道場とは反対側の壁に寄りかかる。どうやら今からこの少年は半殺しにでもされるらしい。


「ひぃぃぃい誰か助けてえぇぇぇ!!!」


少年も自分が今から殺されることを察したのか、喉が潰れる勢いで助けを呼ぶ。しかしこの通りは滅多に人が来なく、わざわざ助けに来るような人間は居ないだろう。現実は非情である。


「清坂キック!!」


待ってましたと言わんばかりにタケルは窓から飛び出し少年に掴みかかっている男の頭に蹴りをいれる。

瞬間、その頭は鈍い音と共に地面に叩きつけられ、ボールのように跳ねた後、そのまま動かなくなった。



少年はあまりに突然な出来事に「うわっ」と叫び、そのまま後ろに何歩か下がる。清坂は完璧に決まった蹴りにカッコいー、と調子に乗っていると先ほどまで壁に寄りかかっていたリーダー格の男は話しかけてくる。


「・・・お前、ここの道場の人間か・・・?」

「ああ、名は清坂タケル・・・お前は?」

「松本ケンだ・・・」


そう言うと松本は倒れた男と共に壁に吸い込まれるようにして何処かへ消えていく。夕日はビルの向こうへと落ちかけており、空は暗褐色に輝いていて、どこか不気味ささえ感じられる。


「あれがアイツの<能力>・・・?あんなのは見たことがないな」

「あの・・・助けてくれてありがとうございます!」

ようやく状況が理解できた少年は、タケルに感謝の言葉を述べる。


「気にすることなんてねーよ、この辺は物騒だからな、気をつけろよ」

そう言いタケルは道場へと足を運ぶ。しかしそれを引き留めるようにして少年は声をかける。

「待って下さい!清坂さん!お願いがあります!」

「何だ?俺はしつこいのは嫌いだぞ、早くしろ」

「やっぱりなんでもないです・・・」

「なんだよ、それじゃあな。」

「はいぃ・・・」




この少年の名前は岡島 (ソウ)、外見は中学生そのものだが、意外にもタケルと同じ高校生。

自分に能力が無いことに劣等感を抱いている。



「ところで、松本ケンという人物なのですが・・・聞いたことがあります。」

急に怪談話の如く暗い話し方をする岡島。それにタケルと隆は耳を傾ける。


「本当か?」興味津々な清坂


「彼は松本組という組織の次期組長という噂があるんです・・・」

「もしかしたらヤバイ奴に喧嘩を売ってしまったという訳じゃな、まあ世界最強の雷坂流には勝てんじゃろ」隆はいつになく余裕ぶっこいている。


「確かに、俺とジジイとトオル、三人居れば負ける事はまず無いからよ、安心してくれ」

タケルも調子に乗る。こうなるともう手が付けられなくなる。


(自分たちの強さに絶対的な自信を持っている・・・すごい人たちだ)

岡島も、少し違うがこの人たちのような”余裕”を身に着けたいと思うようになった。


_突如ガラッと玄関が勢いよく開けられる。足並みの乱れは、木製の廊下を通じてタケル達のいる部屋まで判るほど明確なものだった。異変に気付いたタケル達が玄関に向かうと、そこには血を吹き出し、今にも息絶えそうな程瀕死のトオルの姿があった・・・

初心者ですが練習がてら作っていきたいと思います。

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