アイスクリーム
6月下旬。
「今日も暇でしょ?放課後付き合ってよ」
「まぁいいけど、どっか行くの?」
「それは後でのお楽しみ」
「わかったよ、終わったら玄関にいる」
この日の放課後までの時間は妙に長く、授業も少し憂鬱な気分で乗り越えた。
玄関で小説を読みながら待つ、ゴムがこすれる音、以前よりも早く彼女だと気づき、小説を中断する。
「どこ行くの?」
「アイスクリーム食べたいなーって」
「今日そんなに暑くないよ?」
「暑くないからアイス食べるなってルールないでしょ、それに新しくできたアイス屋さん行ってみたかったの」
「あんなカラフルな店入ったことない」
「あとさ、車椅子の女の子が一人でってのも変じゃない?」
「そんなことないと思うけど、周りは不思議に思うかもね」
彼女の車椅子はずるい。いつもあれには逆らえない。
「さ、はやく行くよ」
「あ、ごめん、車椅子押す」
アイス屋さんまでは彼女は親友の話をしてくれた。
「そんな友達羨ましいよ」
「君も作ろうとしないだけで良き友達できると思うけどなー」
「友達作ろうって思うことまでもが難しいんだよね」
「じゃあさ、私は友達?」
「僕に話しかけてくる人なんてめずらしいよ」
「それ質問の答えになってないんですけど、私はあなたの友達ですか?」
「…唯一のね」
「よかった、そう思っててくれて、私が一方的に友達だと思ってるだけかと心配だった」
「友達じゃなかったらアイス食べに行こうなんてならないでしょ」
「まぁ、それもそっか」
…
「あ!もうすぐだね、初めて入るお店ってなんかドキドキするなぁ」
「君でドキドキするなら僕なんて心臓何個あっても足りないよ」
そして僕たちは甘い香りのする未開の地に足を踏み入れる。
入ると彼女は5歳児のように目を輝かせ、気難しい 55歳のように腕を組み、どれにするか考えていた。
「君はどれにするの?」
「チョコミントかな」
「そうかぁ…」
するとすぐにレジへ車椅子を動かした。
「バニラ1つとストロベリー1つください」そう言って会計を済ませ席につく。僕は唖然とした。
「なんで僕のも勝手に」
「私が二番目に食べたいもの食べてよ、そして一口ちょうだい、お願い!」
思考までもが5歳児のようだった。そしてバニラの方を僕にくれた。
「バニラ嫌いじゃないから許すよ」
彼女の笑顔は溶けなかった。