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お茶会は王宮の庭園で開催された。
王子の周りには、あわよくば友人・婚約者になろうとする令息・令嬢達が群がっている。王子は自分が持て囃されて至極ご満悦の体だった。
皆が王子の気をひこうと様々な話をするうちに、話題は以前開催されたお茶会へと移っていった。
「○○子爵のお茶会で─────」
「××侯爵家の時に────」
「そういえばあの時の────」
いつしか周囲は王子の事を忘れ話に夢中になっていた。所詮はまだ子供、初対面の王子より幾度と出合い気心が知れた友人達と話す方が楽しかったのである。
「先日のエリザベス様のお茶会で」
「何だそれは、俺は知らないぞ!!」
自分の知らない話題で盛り上がる周りにイライラしていた王子がとうとう声を荒げ周囲を睨み付ける。その声と表情を見て周りは自分達が失態を犯した事に気付き顔を青ざめさせた。
「大体、俺は一度も茶会に呼ばれたことが無いぞ」
「それは最初のお茶会に欠席されたからで・・・」
「欠席が何だというんだ!」
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「ですから本日が初めてですし・・・」
「私達からは・・・」
怒れる王子を前に誰も彼も上手く説明出来ず話す言葉も尻すぼみになっていく。
「お前達は俺を馬鹿にしているのか!!」
「違います。本当はお呼びしたかったんです」
「なら何故呼ばない!!」
「それは・・・」
王子に詰め寄られたひとりが、助けを求めるようにこちらを見てくる。その視線の先を追って私に気付いた王子が怒りの形相で近寄ってきた。
「お前かっ!」
王子に呼び掛けられた瞬間脳裏に見たことの無い映像が浮かんできた。
「誰もこの俺を呼ばないのはお前の差し金か!?」
『─────していたのは貴様の差し金だろう!!』
「お前は以前から────」
『君は前から────』
「─────相応しくない」
『─────相応しくない』
「お前との婚約は破棄する!!」
『君との婚約は破棄する!!』
王子の言葉と映像が交差し、何が起きているのか思考が追い付かない。
しかしこれだけは言わなくては、
「わたくしは貴方の婚約者ではありません」