プロローグ2:この命果てるまで
2nd Lifeは【異世界で英雄になった剣士】を優先的に更新しているので、こちらはのんびりと更新しています。
基地から飛び立ったヘリは、アマゾンの湿地帯でジャックを降ろす。プロペラの風圧で水しぶきが立ち上がる。ロープをつたってジャックは湿地帯に脚を下ろした。
銃を構えて周りを警戒する。敵影なし、オールクリア。ジャックは、人差し指を立てて手を回す。飛び立っていいという合図をパイロットに送る。パイロットもgoodサインをジャックに送って飛び立った。
『さて、まずは目的地近くの村に行って情報屋に会わないと』
オリジナルカスタムを施したSCAR-Hを背負って、M1911A1を片手にジャックは湿地帯に隣接するジャングルへと入っていった。
四方から鳥の鳴き声が聴こえてくる。美しい曲のように聞こえるが、耳を澄ませば鳥以外の鳴き声も聞こえる。ここはジャングル、自然や動物の宝庫であるここには、危険な生物も沢山いる。
敵は人間だけじゃなく、毒を持つ生物や肉食生物がうじゃうじゃいる。足元、周囲、上空をくまなく警戒する。装備が嵩むのが嫌いなジャックは武器庫の時点で、ポーチから医療、食料は置いてきた為、毒を盛られたら現地でなんとかしなければならない。
目的の村を目指して木々の生い茂る、無き道をひたすら歩いた。
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村の空き家に村人から怪しまれないように銃火器の一切を置いていく。もう既に外は暗いので小屋の中で火をつけて、道中で捕まえた蛇を焼き上げて頬張る。
片手に焼き蛇を持って、作戦資料を再度確認する。
「ここから目的地までは約8kmか、侵入の基本は夜だ。どこかで見張れる場所も確保しないと」
パチパチと火花を放つ焚き火の灯りで地図を見る。消し炭の一部で地図に✕や〇等の印をつける。
確認が済むと、焚き火に水をかけて火を消す。そして、ポーチを枕にして一夜を明かすのだった。
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「正面ゲートに2、庭に3、うち1人は入口か。」
人一倍高い木の上に登って、双眼鏡を使い兵士の動きと位置を確認する。木から降りると、SCARに消音器とスコープを装着する。
ゆっくりと腰を屈めて、奴らの集落にゆっくりと近づく。ゲート手前の茂みで門兵の動きを見る。
『装備はAK-47のみで、防弾着を来ている様子もないな』
ジャックは近くにあった石を拾って、反対側の茂みに投げる。ここはジャングル、夜にうろつくジャガー等の夜行性肉食動物がいるのは現地にいる彼らの方が分かっているだろう。そちらに気が向いているうちに、塀をよじ登る。
無事に庭に入ったジャックは近くの木箱の影に身を隠す。そして今まで1度も使っていなかった無線のスイッチを入れて周波数を合わせる。
「こちらゴースト、中庭に侵入した。応答願う」
「こちらホッパー、ようやくつけたか。お前もクーパーも無線なんて要らないだろ」
「...お前も減らず口を叩くんだな」
「ん?なんか言ったか?」
「いや...ところでこの後はコイツを挿せばいいんだろ?」
ジャックはポーチから一つのUSBメモリを取り出して弄る。この中にあるのはハックソフトを壊し、更に奴らの狙う衛星の防衛ソフトを改良する為のウイルス兼ソフトが入っている。
「そうさ、奴らのPCにメモリを挿し込んで送信するのを待つだけ。君には簡単な任務だと思うけどね」
「はぁ、早く帰ってきてくれよ。君のいない間、クーパーの愚痴を聞くのは辛いんだよ」
無線越しにホッパーの溜息が聞こえる。その声の重さからして相当参ってるようだ。
「分かったよ、すぐ戻るから。アウト」
スイッチを切って木箱の影から出る。見た限り中庭の敵兵は門兵に比べてやる気がなさそうだが、ドアの前にいる奴は新兵なのか任務を遂行する意志が見え、なかなか警戒を怠らない。
『しょうがない、眠ってもらうか』
ライフルの照準を奴の頭に合わせて、引き金に指をかける。だが、中から呼ばれたのかそのまま入っていた。
ライフルを収めてハンドガンとナイフに切り替える。ジャックはそのままゆっくりと中に入っていった。
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中に入った後は簡単だった。士官の奴らはTVに夢中で酒を飲んでいた。その隙に2階のサーバールームに置いてあるPCにUSBメモリを挿して、アップロードを待っていた。
そして100%の表示を目視するとメモリを抜き取り、窓から出ようとPCから離れた。
だが、離れる前にこちらに近付く足音が聞こえ、ドアの開く壁に隠れた。入ってきたのはドアの前にいた新兵。確認に来たのだろうか入ると周りをキョロキョロと見渡す。
ジャックは既に背後に立っており、ナイフを使って引き倒す。何が何だかわからない新兵は、自分の置かれた状況に気がつくと、銃を捨てて命乞いをする。
震える彼にナイフを突き立てる。普通の常人なら未来ある若者新兵を逃すだろう。しかし相手は死についてなんの躊躇のない男だった。
彼が最後に何を思ったかなど知る由もない。既に生気が失われた目で天井を仰ぐだけだった。
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「こちらゴースト、回収ヘリの要請を頼む」
「了解、到着まで待機せよ」
敵集落から5km先の開けた土地で無線要請をする。到着するまで近くの岩を背に、懐にあった葉巻に火をつける。吸い込む度に芳醇な香りが口に広がり、鼻で息を吐くと素晴らしく至福だった。
数分後、ヘリが到着し、ジャックは乗り込んで椅子に座る。バックミラー越しにパイロットにサインを送るとその場から飛び立った。
機内では優雅に葉巻を吸い、椅子の上で寝そべる。BOSSと仲間のいる基地に戻ること時が一番好きだった。
海上を飛行中、ジャックの無線に赤いランプが光った。この光を見たジャックは飛び上がって、無線に応答した。何故そんなに焦っているのかと言うと、赤いランプは危険信号。無線を持っている者が危険を察知すると、赤ランプのボタンを押す。すると全無線のランプが光るようになっている。
今回、任務に出ているのはジャックだけ。つまり、ジャック以外の兵士が赤ランプをつける事は【基地で何かが起きた】事になる。
「頼む!もっとスピード上げてくれ!」
「了解!」
ジャックはパイロットを急かした。パイロットも勿論そのつもりだろう、何せ自分達の基地に危険になっているのだから。
暫くして、真夜中に一際明るい島があった。そこはルークが作り上げた傭兵組織の基地だった。司令塔のビルや兵舎が燃え、時々爆発が起きていた。
へリポートに着陸と同時にすぐ様ヘリから飛び降りた。弾薬箱越しに戦う仲間が何人もいた。ジャックも敵に向かって発砲しながら仲間の方に向かう。
「RPG!!」
仲間の声の方へ振り返るとロケット弾がこちらに飛んでくる。間一髪で身を捻り、躱すことが出来たが、弾は乗ってきたヘリに被弾。ヘリの爆風でジャックは吹き飛ばされて気を失った。
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「クーパー、弾をくれ」
「悪いがこっちもピン切りだ、そこのヤツを使え」
落ちている仲間の武器を拾い、弾倉を抜く。ベルトにある手榴弾と閃光弾も取っておく。
「敵は?」
「さぁな、俺らと同じ稼業だろ。うおっ!この野郎!」
彼らは傭兵だ。どこの国にも所属しない彼らは、逆に【どこの国からも雇われる】訳だ。それを良いように思わない奴等もいるのだろう、それがとうとう攻めてきたわけだ。
「数と向こうの兵器は?」
「悪いが俺は武器屋じゃなくてな、それならホッパーに聞いてくれ」
再び無線のスイッチを入れて周波数を合わせる。
「こちらジャック、ホッパー大丈夫か?」
「良かった戻ってきたんだね」
「敵の戦力を教えて欲しい」
「監視カメラで確認したけど、敵の装備はM16とM9、それとグレネードと起動式粘着爆弾だよ。施設の爆発はC4のせいだ。」
「それと話によると戦車が2両来てるみたいだよ」
「戦車だと?!一体どこから...」
「元々近くの島に隠しておいて輸送船で運んだんだと、――うわ!」
無線から爆発音が聞こえた、しかも無線が途絶えたせいで状況が分からなくなった。
「はぁはぁ、ホッパーは何だって?」
「敵の装備は――、それに戦車が二両」
「戦車だって?!奴等潰す気だな」
「とにかく司令塔に向かうぞ、そこにBOSSやホッパーもいるはずだ」
「分かった、おい、他の奴をヘリに向かわせろ」
「了解であります」
クーパーは近くにいた味方に脱出退路の確保を命じた。彼は仲間を集めてへリポートに向かった。
「しっかし、久し振りだな。お前と2人で戦うのも」
空弾倉を放り投げて装填しながらクーパーは告げた。
「あー、最後についた任務は「新型兵器の設計図奪取だろ?」
ジャックが話している途中で横から入るように答えを出す。
「横から言うなよ」
「悪い悪い」
ケラケラと笑いながら発砲するクーパーの肩に手を当てる。意味は突撃や突破だ。
「行くぞ、悪友」
「怖けりゃ俺の後ろに隠れててもいいんだぜ?」
「バカ言え」
「ムーブ!!」
ジャックとクーパーの悪友コンビは団内でも優秀な成績を叩き出していた。お互いに悪い所をカバーしながら司令塔に向かった。
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「スリー、ツー、ワン――フラッシュ!」
バシュッ!と音ともに激しい閃光が管制室を照らす。その光で視界を奪われた敵に銃弾を浴びせる。
「オールクリア」
「こっちもクリアだ」
ジャックとクーパーは拘束されていた職員達を解放してやる。そこに入ってきたのと別のドアが大きな音を立てて、開けられた。
2人ともドアに銃を構えて警戒するが、入ってきたのはルークだった。
「お前らよくここに辿り着けたな、いやお前達なら当たり前か」
ハンドガンを装填し、笑いながら近づいてくるルークに2人は銃を下ろした。
「BOSS、他の兵は既にへリポートに向かって、脱出の準備をしています。我々も向かいましょう」
「分かってる、だがここのデータを残してはいけない」
ルークはTNTをサーバールームに貼り付ける。
「じゃあ行くぞ」
「「了解」」
3人は職員達を誘導と護衛をしながら、へリポートに向かった。管制塔から出るとルークがスイッチを起動する。塔の一部が爆発を起こす。
これで我々の身元がバレる心配はなくなった。
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離陸準備が出来ていたヘリやVTOLに仲間や職員が乗り込む。ルークは別のヘリに、ジャックとクーパーと他2名がヘリに乗る。
「デズモンド、集合場所は分かっているな?」
「分かっています」
「ならいい、向こうで落ち合おう」
無線で話を済ませたジャックは椅子に座る。ルークは既に座り込んでいた。チラリと島を見ると、未だ建物が燃え上がっていた。なんとも言えない憎悪が今頃になって出てきた。
「くそっ!俺達の家が――」
悔しいのはジャックだけじゃない、クーパーも他の仲間達も皆同じ気持ちなのだ。今回、死んで行った仲間達も無念だったろう、とクーパーは胸の中で考えていた。
「おい、俺らの退路に俺ら以外のヘリがいたか?」
「さあ?途中で変わったんじゃ?」
2人の兵士が開いているドアから向かいを飛ぶヘリに不信感を唱えていた。次の瞬間、無数の弾丸が彼等を襲った。1人は落下、もう1人は後ろに倒れた。
「おい、あいつは味方じゃない敵だ!」
クーパーが叫ぶと、パイロットはヘリを反転させた。その後ろを敵のヘリがピッタリ着いてくる。
「ジャック!これを使え!」
渡されたのは対物ライフルだった。ジャックは死んだ仲間を引っ張り退かして、空いたドアから狙いを定めた。
そして敵パイロットに向かって1発。見事命中したヘリはそのまま墜落した。
「やったか...」
ホッと一安心していると、「下にいるぞ!」とクーパーの怒鳴り声が聞こえる。反対側には敵ヘリからこちらに向かってRPGを撃とうとしている敵がいた。
急な登場に対応が追いつかなかったジャック。だが、クーパーが敵を撃ち殺した。しかし、既に敵は引き金を引いていた。こちらに向かってロケット弾が飛ぶのが見える。弾自体を狙撃しようにも時間がなかった。
次の瞬間、クーパーがジャックを蹴り落とした。落ちる瞬間にクーパーは笑顔で、
「生きろジャック」
と一言。落下するジャックが見たのは、落ちて数秒後に爆発するクーパーを乗せたヘリだった。これまで幾度となく人間の命を奪ってきたが何も感じなかったジャック。
だが、目の前で散った親友を見て、
「クゥゥゥパァァァ!!!」
名前を叫ばずにはいられなかった。これが死を悲しむ事なのかは分からなかったが、日々を過ごした親友の死で学んだこともあったのだ。
また数秒後、ジャックは海面に落ちた。それも大量の装備を積んだジャックは、深い深い海の底へ吸い込まれて行った。