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05:パーティー

大変遅くなってすみません。色々と書いていたらおろそかになってしまいました。

今後は少しでもペースを上げて頑張るので、出来る限りお付き合いください。


Vatican VCSO headquarters


早くも一日目が終りホーリナー達は小休止、夜は息抜きや支部間との交流も兼ねたダンスパーティー。

無駄にドレスコードがしかれており、今まで自分達が動きやすい団服に身を包んでいたホーリナーもドレスや自国の正装をしている。

日本支部や神選10階の面々も例外ではない。


阿修羅は真っ赤なドレスで長い髪の毛を結い上げている、緊那羅は華やかな着物で阿修羅と同じく髪を結い上げている、摩和羅女まわらにょはプリーツスカートにブレザーにネクタイという制服のようなスタイル、沙羯羅はパンツスタイルという若干ラフな洋装。

そして周りの目を引くのが神選10階、あのヘリオスまでもがスーツを着ている、アルテミスはノースリーブのYシャツにブーツカットのスーツパンツ、祝融は赤いチャイナドレスで髪の毛はお団子を二つ、ダグザはタキシードに眼鏡で更に堅物のようになっている、モリガンはホットパンツにダッフルコートにハンチグ、ニヨルドは蝶ネクタイにサスペンダー付きのホットパンツ、ククルカンは不参加、そして何故かダグザと帝釈天がいない。


元神選10階と日本支部は阿修羅を通じていつの間にか一塊になっていた。


「阿修羅綺麗ッスね!」

「貴方が綺麗っていうなんて珍しいわね」

「それよりヘリオス、タナトスと帝釈天の馬鹿共は何処に行った?トーナメントの抽選もあるんだぞ?」


そう、このパーティーの本来の目的は明日あるホーリナー最強を決めるトーナメントのくじ引きが目的、それなのに大本命の二人が来ないと企画倒れの可能性すら出てくる。


ダグザのイライラがたまってきた頃、会場の外から口喧嘩をしているような声が聞こえる、こんな時に喧嘩するのなど二人しかいない。


「テメェがグダグダしてるからいけねぇんだろ!?」

「誰が待ってろと言った?先に行けば良かっただろ」

「テメェが俺様の靴を間違えて行ったからいけねぇんだよ!」

「貴様なら靴を履かなくても良かろう」


大きな声を張り上げながら入って来たタナトスはスーツでYシャツを大きく開け髪の毛を総結いしている、帝釈天は袴姿に長い髪の毛の後ろを高めで結んでいる。

そしてダグザはイライラしながら二人の前に立つ、その後ろにちょこちょこと着いて行く祝融。


「貴様ら、遅れといて何か言う事はないのか?」

「俺様は何も悪くねぇんだよ!このクソが――――」


ダグザが二人を睨む、それだけで普通の人間なら殺せそうな殺気を込めて、ダグザや帝釈天ですら息を呑むその力。


「……………わ、悪かった」

「申し訳ない」


ダグザはため息と共に頭を抱えて後ろを向く、それを気遣う祝融。


「ダグザ様大丈夫デスか?」

「いや、憂鬱だ」


この日本支部と元神選10階の一塊の団体に近寄る一人の小さな少年、ちょっと大きいスーツでバンダナは健在。


「あのぉ、すみません、神選10階さんですよね?」


全員がその少年を見る、少年はビックリして後退りをして何故か顔を保護するような恰好を取った。


「おぉ!ズルワーンじゃないか!久しぶりだな、元気にやってたかい?」

「はい、覚えててくれたんですね」

「当たり前じゃないか、アンタの事を忘れるわけないだろ」

「ククルカンさん、お気の毒ですね」

「あぁ、―――――」


色々な話に華を咲かせるアルテミスとズルワーンなる少年、ダグザはアルテミスの肩を叩いた。


「アルテミス、誰だコイツは?」

「コイツは創造神の“万状のズルワーン”だよ、ホーリナーラグナロク前の護衛でアタイとククルカンが護衛したホーリナーだ」


そしていつの間にかズルワーンの隣には摩和羅女がいた、ズルワーンを舐め回すように見る摩和羅女、同じくらいの歳と思われる二人、ズルワーンは見えているが知らないフリを決め込んでいる。


「おい、お前」

「な、何ですか?」

「その服大きいぞ」

「言わないで下さいよぉ、間違えられちゃったんですから」

「直してもらえ!うん!それが良い、行くぞ」

「え!?あ、ちょ、ちょっと!いきなり、ってあぁ!」

「摩和羅女!あんたちゃんと戻って来なさいよ」

「当たり前だ!」


無理矢理引きずられて摩和羅女に拉致されたズルワーン、それを暖かい目で見守る緊那羅と沙羯羅、他の面々はため息と共に頭を抱えた。


「うわぁ!モリガン見付けた!キャー!仮面取ったんですか?やっぱり可愛いですね」

「今度は誰だ?」


疲れ果てたダグザの視界に入ったのはスカートタイプのスーツを着た女性、阿修羅よりも下か同じくらいに見える。

その女性はモリガンに抱きついて頬擦りをしている、モリガンは嫌がって突き飛ばそうとするが中々離れない。


「モリガン、今度は誰だ?また護衛した奴か?」

「そ、そうだよ、商業神の、“舞踏のメルクリウス”、だよ」

「どうもよろしくお願いします!……………アストライアさんは残念でしたね。

…………でもアタシがその穴を埋めて見せます!それでモリガンさんと…………」


ヨダレを垂らして妄想の世界に耽っている、全員は呆気に取られて何も言葉が出ない。


「ねぇ阿修羅、なんか沙羯羅に似てない?」

「はぁ、確かにね」


二人は沙羯羅を見て納得する。

キャイキャイメルクリウスが騒いでいる時、ニヨルドが両手に大量の食料を持って帰って来た。


「ニヨルド気が利くじゃねぇか!」

「さすがだ、ありがたくもらっておこう」

「あぁ!それ僕のタメの物だよぉ!」


ニヨルドの食料を奪うタナトスと帝釈天、それによってメルクリウスはニヨルドの存在を把握し、目の色が変わった。


「ま、また美少年………」

「ん?モリガン、誰それ?」


何とか奪い返したケーキ一つを食べながらメルクリウスとモリガンを見た、それが運の尽き、メルクリウスの目が獲物を狙う目に変わる。


「キャー!可愛い!」

「うわぁ!な、何だよ!?」


メルクリウスはニヨルドに抱きついた、獲物は二人の美少年、名はモリガンとニヨルド。






メルクリウスに捕まったモリガンとニヨルドを無視して、元神選10階と日本支部はバラバラになって食事を採っている。

当然阿修羅はヘリオスに捕まり、アルテミスはその二人の側で黙々と食事。

一人になりたがる帝釈天には沙羯羅の質問攻め、ダグザの後ろには当たり前のように祝融、そして緊那羅はタナトスをからかっている、それをダグザは珍しい物を見るような目で見ている。

手直ししてもらったズルワーンは摩和羅女から逃げようとするが、摩和羅女はズルワーンに興味津々で離れようとはしない。



タナトスとダグザは意外と仲が良い、嫌味等を言い合うが、一番神選10階に一緒にいるのが長い二人、それは挨拶に似たようなもの。

ダグザとタナトスを含めた4人の近くでイチャイチャしているカップル、2人はそれを見て脂汗を流し、目を反らした、緊那羅と祝融はそれを不思議そうに見る。


「おい、俺様は悪夢を見た、アレは幻覚か?」

「それはあり得ない、俺も悪夢が見えた」

「ダグザ様どうしたんですか?」

「何よ?幽霊でも見えたの?」


緊那羅は皮肉も込めておどけて見せるが二人はそれを処理するだけの余裕がない、この2人が動揺を見せる等皆無に等しい。

冷静、冷徹を絵に描いたようなダグザ、冷徹、冷酷を絵に描いたようなタナトス、恐らくこの2人は原爆がバチカンに落ちても動揺等しないであろう。

そんなカップルの男、悪夢が2人の存在に気付いてしまった。


「ダグザさんにタナトスさんじゃないですか?」

「ダーリン、こちらは何方ですか?」

「ハニー、この方々は私の命の恩人だよ」

「あら、それでは私からもお礼を言わなくてはいけませんね。

どうもお二方、ダーリンことベラルーシ支部のケツァルコアトルがお世話になりました、私はベラルーシ支部、支部長のコアトリクエです、今後お見知り置きを」

「「人違いだ」」


二人は顔を合わせようとはせず、まったく違う報告を向いたまま言い放った、それにベラルーシ支部長、コアトリクエは首を傾げる。


「酷いではないですか?ほら?私の顔を覚えていますよね?」


ケツァルコアトルは二人の顔を覗き込んで訪ねた、しかし二人はすかさず腕輪に触れ、ケツァルコアトルの喉元に得物を突き付ける予定だった。


「相変わらず怖いですね、しかし私の前ではどんな攻撃も当たりませんよ?」


ケツァルコアトルはいつの間にかコアトリクエの肩を抱いて2m程下がっていた。


「さすが“雲避のケツァルコアトル”、並の攻撃では当たらないか」

「何だそりゃ?」

「雲の様に相手の攻撃を避ける事からその二つ名が付いたらしい、コイツに攻撃を加えた、いや、受け太刀をさせた者はそこにいる“鎖蛇のコアトリクエ”以外いないらしい」

「良くご存知で、私に触れるのはハニーだけ、そう!私に見合うのはハニー、君だけなのさ」

「嬉しいわダーリン、私の攻撃から逃れられるのもダーリン、貴方一人だけよ」


抱き合う二人、緊那羅と祝融は悪夢の意味をやっと理解した、コレは悪夢というよりはトラウマ、頭から離れないおぞましい光景。




その頃、一人で飲み物を持って退散しようとした帝釈天だが、沙羯羅がしつこく付きまとうせいで一人になれずにいた。


「ねぇねぇ、本当の名前は何なの?」

「俺の名は帝釈天のみ、産まれた時からホーリナーだ」

「かっこいい!」

「な、何がだ?」


叫びに近い大声にビックリする帝釈天、沙羯羅の元気さに圧倒されつつも、“普通の18歳”というものを観察しているのもあった。


「だって本物の神様みたいじゃない?」

「辛い事しかない」

「そうかなぁ?ホーリナーって皆優しい人ばっかりじゃない?神選10階の人達も良い人ばっかりだし、少なくとも一般人やってるよりは楽しいと思うよ」

「そうなのか?」


普通の暮らしを知らない帝釈天にとって普通の暮らしを一番知っている沙羯羅は興味深かった、自分の知らない世界を自分と同じだけ生きてきた。


「そうだよ、こんな皆仲良しってのもあり得ないもん、裏では妬み合ったり嫌いだったりだよ?

それに帝釈天って悪魔だったんでしょ?」

「耳が痛いな」

「そういう意味じゃないよ!」


目を背けた帝釈天を覗き込む沙羯羅、幼い頃から他人を受け付けない帝釈天にとってはこんな間近に顔があるのはあり得ない事、それが女性となれば必然的に顔は紅潮する、それに沙羯羅は全く気付いていない。


「だから帝釈天はちゃんと信念というかプライドっていうか、何だろう?…………とりあえず欲で動いたわけじゃないんでしょ?」

「当たり前だ、復讐、それに囚われていた俺は愚かだった」


過去の自分を愚かと片付けられる程帝釈天は変わっていた、神選10階に入って全員が対等な立場になった事で自分に意見する者が出た、それは帝釈天に‘自分’という物を考えさせるきっかけになった。


「でも一般人ってのは欲のためにしか動かないんだよ?」

「何故だ?」

「知らない、でも一番醜いのはお金や地位、地位も憧れとかじゃなくて結局はお金になっちゃうから同じようなものだけど。

それにね、表の人達が争うのは帝釈天みたいに復讐みたいな信念を持って争うんじゃないんだよ?ムカついたからとかお金が欲しい、お金になるとか下らない理由で争ってるんだ、私はそんなちっぽけな人達が嫌いだったなぁ。

だからホーリナーは大好き!皆裏表がないし毎日を自由気ままに楽しく過ごしてるから、そりゃ戦いは辛いよ?でもタダで楽しい思いしたら神様だけど神様に怒られちゃうでしょ?」

「プッ」

「笑った!?」


帝釈天が微妙に笑った、沙羯羅は大喜びで帝釈天の顔を覗き込むが帝釈天は違う方向を見てしまう、沙羯羅が更に覗き込もうとするが、手で沙羯羅の頭を押さえて近寄らせようとしない。


「神が神に怒られるか、貴様、気に入ったぞ」

「貴様じゃなくて沙羯羅!人の名前はちゃんと呼ばなきゃいけないっておばあちゃんが言ってたんだから」

「なら沙羯羅、頼みがある」

「なになに?俺と付き合えとか?」

「沙羯羅と話したら腹が減った、何か持って来てくれ」

「それってパシリ!?」

「如何にも」

「やだよぉ、それに帝釈天の好み知らないし」

「俺は薄味なら―――」

「めんどくさい!一緒に行こう?」


沙羯羅は帝釈天の手を取って笑顔で顔を見た、それに帝釈天は固まってしまうが、沙羯羅は気にせずというか気付かず二人で食料調達に向かった。




ダグザと祝融やケツァルコアトルとコアトリクエから離れたタナトスと緊那羅、正確に言うと全員から離れようとしたタナトスを緊那羅がいじっているのが正しい。

恐らく嫌味等を抜くとタナトスをいじれるのは緊那羅だけであろう、タナトスが心を許しているのか、緊那羅が反撃を許さないのかは定かではない。

そしてタナトスの前でも変わらないつまみ食い、タナトスが取った食料を横から緊那羅が食べる。

我慢していたタナトスだが、しかし、切り分けしていない巻き寿司をつまみ食いした時、遂に火が付いた。


「テメェ、それだけは許せねぇ」

「ふぁにが?」

「俺様の寿司だけは取るんじゃねぇよ」

「はら、ふひしゅひはの?」

「テメェに言う筋合いはねぇだろ!?」


巻き寿司をくわえた緊那羅の胸ぐらを掴み上げたタナトス、それでも全く表情が変わらない緊那羅。


「ひふ?」


緊那羅は巻き寿司をくわえたまま目を瞑り、巻き寿司をタナトスに差し出す。


「い、いらねぇよ!」


タナトスは顔を真っ赤にしながら新しい巻き寿司を口に放った、緊那羅は全て食べ終えると緊那羅を見ないようにしているタナトスを覗き込んだ。


「お寿司好きなんだ?」

「……………悪いか?」

「意外なだけよ、まぁこんなお寿司よりも今度私がもっと美味しいお寿司を作ってあげる」

「テメェに作れるのかよ?」

「馬鹿にしないでほしいわね、これでも表にいた時はおじいちゃんのお寿司屋さんで手伝ってたんだから」

「どうなる事やら」


二人は軽く笑いながら食事を取り直した、不思議と溶け合えた二人。



そして元帥のトーナメントを始めるとの声がかかった、それによりステージの前にホーリナーが集まる。

トーナメント表の一番端にはアルテミスと摩和羅女の名前がある、持ち越された遠距離型最強を決める戦い。


まずは元神選10階から引き始める、元神選10階同士が潰し合えば自分達にも万が一があり得る。

しかし神選10階というのは運も神クラスらしい、潰し合うどころか当分はお互い当たらない、そう、肝心なベスト16になるまで元神選10階は当たらない。


「上手い具合に別れたねぇ」


元帥はニタニタしながら次に引く者を指名する。



そして粗方注目株が引き終っても結果は同じ、戦闘神の阿修羅、音楽神の緊那羅、創造神のズルワーン、文化神のケツァルコアトル、地母神のコアトリクエ、商業神のメルクリウス、悪神のアカ・マナフ、この7人が上手くバラけている、このまま行くとベスト16まで元神選10階の9人と神選10階クラスの7人が残る事になる。




そして、このトーナメントが元帥と元老の3人の楽しみにタメに仕組まれたとは誰も知らない。

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