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31:怒り、そして悲しみ

2発目です!



Vatican VCSO headquarters


タナトスは得物を顕現して天照と素戔嗚と対峙する、しかし、怒りに呑まれたヘリオスは黒い炎を撒き散らしながら二人に向かう。

タナトスは焦っていた、目の前にいる二人があり得ない力を持っているのは容易に想像出来る、しかし、肝心のヘリオスがまともな思考を失っている今、勝ち目は少ない。


「おいおい、感情任せじゃ勝てないぜ?お前らの本気が見てぇんだよ」


「素戔嗚、好機です、今は任務遂行を最優先にしましょう?」


「だけどよ姉ちゃん、あの女剣士もクソ以下に弱くて運動不足なんだよ」


その瞬間タナトスの殺気が一気に膨れ上がる、それはヘリオスの炎と同じ様に辺り一帯を呑み込むまがまがしいもの。


「緊那羅をやったのはテメェか?」


「緊那羅?女剣士がそうなら拙者だぜ」


タナトスは走り出した、それは天照や素戔嗚の方ではなく、我を忘れているヘリオスの方へ。

タナトスはそのまま顔面に回し蹴りを放つと、ヘリオスを吹き飛ばした。

ヘリオスは顔面を強打して、流血しながら事態を把握していない間抜け顔でタナトスを見る、しかし、ヘリオスが冷静さを取り戻したのも事実だった。


「ヘリオス、奴らを本気で殺すぞ」


「そんな事したらバチカンが壊れちゃうッスよ?」


「大丈夫だ、俺様達のホームはバチカンじゃなくなったらしいぜ?ここは戦場だ」


「なら気にする事はないッスね」


ヘリオスは立ち上がり、得物を顕現した。


「素戔嗚、後でお父様に怒られるんでしょうね?」


「姉ちゃん助けてくれないのかよ!?」


「私は忠告しました、残念ですけど………」


天照は目を伏せる、素戔嗚はショックに打ちひしがれていると、タナトスとヘリオスの気配が一瞬で膨大なものと化す、その威圧感に天照と素戔嗚は冷や汗を流す、相手の力を見誤っていたと。


「「シンクロ!」」


黒いローブに包まれ死神と化したタナトス、全身が炎に覆われ太陽と化したヘリオス、その力は素戔嗚や天照の想像の遥か上空を行っていた。

推測でしかないが、今のヘリオスやタナトスは元帥や元老、もしくはそれ以上の力。


「姉ちゃん、マジでコレは謝んねぇとな」


「本気で行きますよ」


天照は悲哀の薙刀を構え、目には梵字が浮かぶ、素戔嗚は破壊の剣を構え、全身を梵字が覆う。

最初に駆け出したのはヘリオスだった、一瞬でその場から消え、気づいた時には素戔嗚の後ろにいる。


「見えるぜぇ!」


素戔嗚は破壊の剣ぎでヘリオスを薙払うが、ヘリオスは揺らいで消えてしまう、そして、横からタックルを食らい、派手に転がり壁に叩き付けられる。

それだけでは終わらず、ヘリオスは火球を何発も浴びせる。


「素戔嗚!」


「ユダンハキンモツダゼ?」


天照の目の前にはタナトスがいた、天照はタナトスの斬撃を紙一重で避けるが、体に紐が巻き付いていた。


「シヌナライッショがイイダロ?」


一瞬重力を失い、気付いたら宙を舞っていた天照、そして、素戔嗚が叩きつけられた方へと吹き飛ばされる。

それだけでは終わらない、ヘリオスは口を開けてエネルギーをタメ、一気に天照と素戔嗚に向けて照射する。

建物を貫き、炎上させて全てを破壊する、タナトスは勝利を確信してシンクロを解く、ヘリオスも照射を止めるとシンクロを解いた。

二人が笑いながら炎上していると、そこから2筋の赤い光が放たれ、タナトスとヘリオスの肩を貫く。

その瞬間、凄まじい風が吹き荒れ、炎が一気に晴れていく、中から現れたのは予想以上に傷の少ない天照と素戔嗚だった。


「素戔嗚、叔父様のためにバチカンを壊すまいと思いましたが、私たちが負けては意味がありません」


「そうだな、容赦なく行かせてもらうぜ」


素戔嗚は一瞬で消え、二人が気づいた時には後方にいた、そして、一拍置いて二人の体は急に切り刻まれる。


「クソ!」


「な、何スか?」


二人は片膝を着きながら素戔嗚を見る。


「ツイスター!」


破壊の剣から伸びる竜巻が二人を呑み込む。


「レイン!ライトニング!」


竜巻の中に豪雨が振り始め、凄まじい落雷が二人を貫く。


「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁ!」


「―――――くっ!」


片膝を着くタナトス、レーヴァテインに支えられながら何とか上体を起こしているヘリオス。


「まだ起き上がれる力があるんですね?」


天照は二人に向かって人差し指を向ける。


「レイ」


指先から2筋の赤い光が放たれ、タナトスとヘリオスを貫いた。

二人は必死につなぎ止めていた意識を手放し、その場に倒れてしまう、とどめを刺そうと近寄る天照と素戔嗚。


「そこまでよ!」


声がバチカンに響き渡り、天照と素戔嗚のみならず、金色孔雀や迦楼羅達まで止まり、声の主を見た。


「貴方達、私に死なれちゃ困るんでしょ?」


そこには首に夜叉丸を突き付けている、全員が青ざめる、阿修羅を奪還しようとしていた者も、阿修羅を守ろうとしていた者も。


「あと、もう一人はどこに行ったの?」


「ここだ」


今まで隠れていた月夜見が現れる、月夜見は帝釈天の首もとに不浄の苦無を突き付け、阿修羅を睨む。

しかし格好がおかしい、それは今まで阿修羅を守っていたアルテミスの体をしているからだ。


「得物を下ろせ、さもなくば………」


アルテミスの格好をした自称月夜見の不浄の苦無が帝釈天の首を傷付ける。


「アルテミスに化けてたのね?ただ、それじゃあ私は夜叉丸を下ろさないわよ?」


「だから交換条件」


月夜見は一瞬で元の姿に戻る、全員が見ている中で誰にもタネがバレずに姿を変えた。


「拙らは、ここにいる、全員の命と引き換えに、阿修羅様を、要求する」


全員の顔が強張る、いくら金色孔雀と迦楼羅、そして沙羯羅が戦える体勢にあったとしても、辛うじて息をしている者達の事まではフォロー出来ない、つまり、交換条件を呑むか却下するか。

そんなせめぎ合いの中、阿修羅はボロボロになり倒れているヘリオスを見た、そう、阿修羅が死ねば少なくとも今倒れている者達の、僅かな生への望みが消えてしまう。


「嘘だったら、死ぬからね?」


「嘘吐かない」


「その条件、呑んでやるわよ」


阿修羅は夜叉丸を消し、月夜見に近寄る、帝釈天と目が合い、帝釈天は無言で阿修羅を止めるが、阿修羅は軽く微笑むと月夜見の腕を掴んだ。


「離しなさい」


月夜見はコクリと頷くと、帝釈天の背中を押して遠ざける。

阿修羅が月夜見に近付いた瞬間、素戔嗚、天照、大黒天が阿修羅を囲んだ。


「迦楼羅、退避だよ、ヘリオスとタナトスをよろしく」


迦楼羅がいなくなるのと同時に、ヘリオスとタナトスの姿も無くなった、これで全員の命が繋がれた。


「貴様ら、今日を忘れるな、すぐに潰しに行く」


「テメェらじゃ無理だ!分かってんのか?叔父ちゃん達に刃を向けたって事はVCSOに刃を向けたのとおんなじなんだぜ!?」


「これだからガキは困るんだよねぇ」


金色孔雀のふざけた笑みに殺気がこもる、それは素戔嗚が一歩退く程の威圧感。


「日本支部は彼らを全面的に擁護する、そして、VSCO、天竜家、ひいてはクロス一族、カリルドール、コルトヴィレツィアに宣戦布告する!」


大黒天、そして元帥、ランギ、毘沙門天の顔が驚愕に染まる。

そう、金色孔雀が宣戦布告したのは天竜家と同じ様な力を持つ一族、そして、その全てが特別な力を持っている、阿修羅の“紅蓮の剣”、帝釈天の“白銀の盾”の様な強力な力を持った一族。


「金色孔雀!テメェは戦争ふっかけてんのが理解出来てるのか!?」


焦っている毘沙門天を睨む金色孔雀。


「日本支部をナメるなよ?」


そこに凄まじい轟音を上げ、瓦礫を破壊しながらバチカンに突っ込んで来た武装された大型トレーラー、運転席には迦楼羅がいる。


「早く乗りなよ」


今にも噛みつきそうな帝釈天を金色孔雀が担ぎ、トレーラーの貨物部分に乗り込む、沙羯羅は相手に注意を向けながら乗り込んだ。


「阿修羅!絶対に迎えに行くからね!」


扉を閉めるのと同時に走り出し、邪魔な物を破壊しながらバチカンから去って行った、阿修羅を残したまま。





次回は最終回!

最後までお付き合い下さい。

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