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23:厄災の使者


Vatican VCSO headquarters


準々決勝、第3回戦、モリガン対ヘリオス



キューブ状の現実ではあり得ない戦場、その外側、上部に吐き出されたヘリオスとモリガン、少しでも踏み外そうものなら、落ちる事しか出来ない奈落がそこには広がっている、密室空間とは違い、周りが何もないために感覚が狂ってしまう。

そんな中でも周りを気にせず、この世界もあいまって不気味な距離を維持する、薄く嘲笑うように見えるポーカーフェイスのモリガン、へらへらと気の抜けた笑みのヘリオス。


「何かここに立つとこの世界って気持ち悪いッスね」


「普通の人間なら狂うんじゃないのかい?」


「何か俺が普通じゃないみたいじゃないッスか?」


「今頃気付いたのかい?君が普通だとしたら“普通”という基準がいらないと思うよ」


モリガンが馬鹿にしているのがヘリオスには分からないらしい、そんなのモリガンは承知済み、ヘリオスに遠回しの表現が通じると思っている人間など神選10階にはいない。


「そんな馬鹿面してないで始めないかい?」


膨れっ面のヘリオスを馬鹿面と切り捨て、モリガンは提案しつつも腕輪に触れた、得物は直径2m程の鉄球、そこから鎖が伸びている、名はシヴァ。

モリガンはそのまま迷わずヘリオスにシヴァを投げた、シヴァは着地すると同時に、脆いキューブ状のフィールドをヘリオスごと破壊する。


「危ないじゃないッスか!」


「戦いは始まってるんだよ?」


ヘリオスは不意打ちにも関わらず既にモリガンの背後を取っていた、それは技名破棄のベロシティ、ほぼ一瞬でモリガンの後ろを取ってしまった、そしていつの間にか手には得物が握られている、得物は片手剣、名はレーヴァテイン。


「もう良いッスよ!俺も行くッスからね!」


ヘリオスは大きく跳躍してモリガンとの距離を詰める。


「グラビテーション」


モリガンはヘリオスに手を向けると空中にいるヘリオスの速度が一気に増し、モリガンとの距離を一気に詰める。

それはヘリオスの重力をモリガンに向かせ、一気に引き寄せたから。

体勢を崩してしまったヘリオスの腹に拳を打ち込む。


「クッ!」


しかしヘリオスは怯む事なく、腹にめり込んでいるモリガンの腕を掴み、そのまま投げ飛ばした。

モリガンが着地すると既にヘリオスは目の前にいた、ヘリオスはレーヴァテインを思いっきり振るが、鎖で防がれてしまう、しかしそのまま力で押し切り、モリガンを弾き飛ばした。

モリガンはフィールドの場外へ弾き飛ばされてしまう、その下は奈落、あるのは何よりも深い闇のみ。


「もう終わりッスか?つまんないッスね」


ヘリオスはレーヴァテインで手遊びしながらバチカンに吐き出されるのを待った、あまりに呆気ない幕切れ、口に出さずともヘリオスは最強候補、故に同じ神選10階と言えど、その力には差がある、ヘリオスはそう思っていた。

しかし、急に背中に突き刺さるような殺気を感じた、それはヘリオスが今までに感じて来た中でも類を見ない程の殺気、それだけで何かの神技と勘違いするような威圧感。

ヘリオスは極度の緊張状態に陥り、ぎこちない動きで殺気の主に目を向ける。

そこにはシヴァをぶら下げながら浮かぶモリガン、まるでそれは決して死なない、幽霊を相手にしているような感覚だった。

ホーリナーの世界では霊などは恐れるに足らない存在、しかしそこにいるのはまさに人外の生き物に見える。

破壊神、それに目を付けられ、破壊の対象となったヘリオス、その時始めて知った、本当の破壊とは内側から蝕むものだと。


「なんか凄いムカつくね」


「化け物ッスか?」


「酷い言われようだね、神技は使い方次第だよ?」


モリガンはグラビテーションの対象を自分に代え、無重力状態にしたからだ。

モリガンはシヴァを振り上げると、そのままヘリオスに向けて放つ、自然の重力と、モリガンがグラビテーションによる操作で、シヴァは凄まじい勢いでヘリオスへと向かう。

ヘリオスは何とか後方に避ける、目の前にはフィールドを貫いたシヴァの鎖が見えた、自分を鼓舞して地面を蹴るヘリオス。


「インフェルノ!」


炎に包まれるレーヴァテインを手に、ヘリオスはモリガンの手から伸びる鎖を駆け上がった。

何故かモリガンに近寄るにつれ、肌寒くなったような感覚を覚える、普通ならば殺気、そう捉えるであろうが、ヘリオスは本能から飛び退き、フィールドに着地して再びモリガンを見上げた。

モリガンはゆっくりとフィールドに近付き、ゆっくりと着地した、その時も確かに感じる、殺気とは違うその肌寒さ、悪寒ではなく寒気。


「君、本当にムカつくね、普通だったらあれでゲームオーバーだったよ?

僕が負けるなんてあり得ない事さ、だけど事実は変えられない、実際僕は一度死んでいてもおかしくない。

始めてだよ、他人に負けるかもって思ったのは、それが本当にムカつくね、僕は最強になりたいなんて思っちゃいないよ、ただ、破壊する立場の僕が壊されるのが堪らなく許せないだけさ。

だから僕はヘリオス、君を壊すよ、僕が壊されるその前に、ね?」


ヘリオスは恐怖を覚えた、いつも饒舌ではないモリガンが、今はココまで喋っている、本当にモリガンの触れてはいけない部分に触れてしまったのではないのかと。

しかし全ては思い過ごしではなかった、寒気も、いつもと違うモリガンも……………。












ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ










「フリーズ」


シヴァが氷の塊のようになり、フィールドは全て凍り付く、モリガンの足首までは氷に包まれ、ヘリオスの周りだけはなんとか炎で事なきを得ている。


「ま、まさか、新しい神技ッスか?」


「ヘリオスのお陰さ、感謝するよ」


モリガンは凍ったフィールドを滑らせるように、シヴァを放った、凄まじい勢いでヘリオスに向かう。

ヘリオスは避けようと思ったが、踏み出した瞬間に足元が滑ってしまった。


「マジッスか?」


冷や汗が流れる、ヘリオスはレーヴァテインの炎を白い炎、つまり火力を強め、シヴァを真っ正面から受け止めた。


「甘いよ」


シヴァはレーヴァテインにぶつかると同時に、表面の氷が砕け散り、全てヘリオスに刃のような鋭さで襲い掛かる。

避けることも防ぐ事も出来ず、氷により無数の傷を作るヘリオス。

ヘリオスの全力の炎ですら凌ぐその氷、ヘリオスの炎が灼熱だとするならば、モリガンの氷は絶対零度、空気をも燃やす炎と空気をも凍らせる氷、自然を破壊する二つの災い、それがこの二人だ。



















バチカンではその莫大な力のぶつかり合いに会場全体が呑まれていた、モニターの前にいる帝釈天とタナトスも同じ、二人の下馬評ではヘリオスの勝利だった、しかしそれを覆すモリガンの第三の神域、その計り知れない強大な力は最強と言われたヘリオスの炎をも凌ぐ。


「こりゃヘリオスが負けるってのもあり得るかもな」


「モリガンに勝ち目が出たのではなく、ヘリオスの勝ち目がなくなった、それだけだ」


「まぁあいつにも隠し種があるらしいからな、アイツの“本当の力”が見れる良いチャンスだぜ」


「それなら安心しろ、力に関しては貴様と同じ力だ」


「まさかヘリオスもシン―――」


タナトスは途中まで言いかけて辞めた、ヘリオスもシンクロが使えるのか?と。

それは途中で気付いたからだ、帝釈天がカマをかけている事に、帝釈天の妖しい笑みで悟る、完全に次の戦いで見せなくてはならないだろうその力、早くも見破られてしまった。


「お互い少なくとも準決勝にはバレる事だ」


「まぁヘリオスがシンクロを使えるのだとしたら、モリガンの神技では勝ち目はねぇな」


「ただ、ヘリオスはタナトス、もしくは阿修羅にしかシンクロは使わないだろうな」


「俺様とは違ってアンフェアが大っ嫌いだからな、あの力を自分の力と取るか、ただのチートと取るかは難しいところだぜ」


確かにシンクロは強力すぎる神技、故にヘリオスは避けているところがある。


「俺様は迷わずテメェに使うけどな、ヘリオスの野郎と痺れる戦いがしたいんでな」


「貴様、何か忘れていないか?俺にも天竜の血が流れているいる事を」


「まさか、テメェも?」


明らかな同様を滲ませるタナトス、もし帝釈天に阿修羅と同じ力があったとしたら、タナトスやヘリオスと同等、もしくはそれ以上の力と言えよう。


「安心しろ、ただのハッタリだ」


「驚かすんじゃねぇよ」
















既にボロボロのヘリオス、ヘリオスの周り以外はモリガンの冷気により凍り付いている、ヘリオスの周りだけは炎により凄まじい熱をほこっている。


「ずいぶん惨めな姿だね?ほら、本気を出してみたらどうだい?」


「俺が本気を出したらモリガン負けちゃうッスよ?」


「甘いね、そんなんだから君は大切なものを逃すんだよ」


その言葉にヘリオスの顔が始めて怒りに歪んだ、それは普段ヘリオスが見せない顔。


「何も守った事のないモリガンには分からないッスよ」


「僕は自分の身一つあればそれで満足なんだよ、君みたいに手に負えなくなるような事はしないからね」


それは完全に挑発、ヘリオスに本気を出させるためにモリガンが仕掛けた罠、皆ヘリオスの本気を倒さなきゃ意味がないと分かっている、故にモリガンはわざとヘリオスを怒らせたのだ。


「君か何を思って阿修羅に肩入れしてるのか知らないけど、君には無理な事じゃないのかい。

阿修羅も、ママの阿修羅(あすら)も、お互いホーリナーラグナロクの引き金になったじゃないか?それだけ天竜の巫女ってのは危険な人物ってのを理解してるのかい?」


ヘリオスは怒りで俯いている、怒りに呼応して神技が暴発し、ヘリオスの周りは炎の海と化している。

モリガンはあと少しと口角を上げるが、それも一瞬、ヘリオスの小さな変化に気付いてしまった。

ヘリオスの真っ白だった炎が徐々に黒く染まっている、白い炎とは温度の変化で作り得る、しかし、黒い炎というのはまずあり得ない、黒煙はあれどそれは煤によるもの、つまり、ヘリオスの力が加わり炎がまがまがしい変化を遂げた。


「もしかして怒りで炎が変わったって言うのかい?」


「阿修羅は俺が守るんスよ、モリガンが何と言おうが、俺は諦めたりしないッスからね!」


黒い炎が一気にモリガンの氷を溶かし、フィールド全体を覆うように拡大する。


「グラビテーション!」


始めてモリガンの声から焦燥感が滲み出る、重力でなんとか炎を押しつぶし鎮火するが、既にヘリオスは飛び上がっていた、モリガンは慌ててシヴァの付け根を持つ。


「フリーズ!」


氷に包まれるシヴァ、冷気と熱気が二人の間でせめぎ合い、温度の急激な波により風が吹き荒れる。

漆黒に染まるレーヴァテインと純白に染まるシヴァがぶつかり合った瞬間、炎と氷が急激にお互いを浸食しようとして爆発が起きた。

二人はその衝撃で弾き飛ばされる、モリガンは何とか踏ん張り、シヴァを氷で包みヘリオスを睨んだ瞬間、既にヘリオスはレーヴァテインを振っていた。

レーヴァテインから伸びる炎は自ら意志を持っているかのように一直線にモリガンに向かう、モリガンは思いっ切り神技を発動し、シヴァの氷は1m程になった。

漆黒の炎は純白の氷に包まれたシヴァを捉えた瞬間、一気に燃え上がりシヴァもろともモリガンを飲み込んだ。


「コレが太陽の怒りに触れた人間の末路なのかい?」

























上を向いているモリガン、肩で息をしているヘリオス、ヘリオスはそのままモリガンを睨むと一歩を踏み出し、拳を振り上げた。


「もう終わりで良いでしょ?」


振り上げた拳は阿修羅に掴まれ、モリガンは上を向いたまま微動だににしない、ヘリオスは阿修羅の顔を見た事により平静を取り戻した。


「モリガンも貴方の本気が見たかっただけよ、そうよね?」


「ヘリオス、君はどこまで強いんだい?僕は100%を超えたのに、まだ君は本気を出してない、最大の屈辱だよ」


モリガンは薄ら笑いを浮かべながら唇を噛む、まだモリガンも本気のヘリオスに負けたのなら納得がいく、しかし、あれは怒りから出た力、モリガンからしたらあの黒い炎の方がイリーガルな力だった。


「あの黒い炎もそれなりの力があったんスけどね、いずれ見せる事になると思うッスけどね」


ヘリオスはモリガンに背を向けて歩き去る、その後ろにはモリガンをみる阿修羅、そしてモリガンは鼻で笑うとその場を去った。


『何か俺の存在忘れられてるみたいだな、とりあえず説明や感想は抜きにして、勝者は太陽神のヘリオスだ』



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