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11:違い


Vatican VCSO headquarters


ベスト16第三回戦、タナトス対アカ・マナフ。



競技場にいる二人、本来ならば競技が行われるであろうこの場所、しかし二人が持っているのは得物、タナトスは大鎌、名はスケイル、アカ・マナフはブーメランの様な形をしたナイフ、ククリ、名はナフト。

死神と悪神の戦い、恐らくこの二人程戦いを好んでいる者はいない。

しかし大きく違うのはタナトスは殺す事を楽しむ、そしてアカ・マナフは相手をいたぶり楽しむ事、それが大きな違いである。


「そういえばテメェ、帝釈天の女と踊ろうとしてつまみ出されてたな?」

「あの女は良い女だよ、だがあの帝釈天の女だったなんてな、手を出さなくて正解か」












その会話はバチカンにも筒抜け、そして二人の戦いよりも誰が帝釈天の女かというほうが話題になっている。

元神選10階の待合室では帝釈天が明らかにイライラしている。


「どうしたんだい?帝釈天、君にしてはそんな事で平静を乱すなんて」

「黙れモリガン」

「沙羯羅は良い女の子じゃないッスか!俺は良いと思うッスよ」

「殺すぞヘリオス」

「まぁ貴様は護法神だ、誰かを守りたいと思うのは必然、何も恥じる事ではない」

「死にたいのか?ダグザ」


皆クスクスと笑う、帝釈天は珍しく貧乏揺すりをしている、それを見て更に笑い声が大きくなる。













どちらからという事ではなく、お互い同時に構えた、お互いの出方を伺い、硬直する二人、先に動き出したのはアカ・マナフの方だった。


「ダークネス【暗闇】」


その瞬間真っ暗になる競技場、バチカンのモニターも真っ暗、そしてタナトスの視界も然り、その中でも唯一正常な視界をしているのは神技の発動者であるアカ・マナフのみ。


「見えないだろ?俺の前では誰もが無力なんだよ!

まぁ俺も鬼じゃない、あっけなく心臓一突きとかはお前のために控えてやるよ、じっくりいたぶって、死の恐怖をじっくりと染み込ませてから殺してやる」


だがクスクスと笑っているタナトス、アカ・マナフにしか見えないがタナトスはスケイルを引いた、そしてそのまま投げる。

他の者達には金属音しか聞こえない、それはタナトスの投げたスケイルをアカ・マナフのナフトが弾いた音。


「声で位置を判断しやがったのか!?でも移動しちまえばこっちのもんだ!」


アカ・マナフは音も無く走る、タナトスは腕輪に触れてスケイルを顕現する。

アカ・マナフはタナトスの後ろに回り込みナフトを振り上げる、しかしタナトスはアカ・マナフ目がけてスケイルを振った、アカ・マナフは慌てて受け太刀する、タナトスはそのままアカ・マナフを蹴り上げ、スケイルの背で弾き飛ばす。

アカ・マナフは受け身を取ってタナトスを焦りを含めた目で睨んだ。


「何でだ!?何で勘でそこまで分かる!?」

「勘じゃねぇよ、テメェの居場所なんて目が無くても分かる、足音、息、鼓動、風切り音、それだけあれば充分だ

今度は俺様から行かしてもらうぜ」


タナトスは走り出した、それは的確にアカ・マナフに向かっている、アカ・マナフは構えるとタナトスの横薙の攻撃を受けた、そしてスケイルを掴むとナフトで突く、タナトスはそれを軽々と避け、アカ・マナフの顎を蹴り上げた、アカ・マナフがスケイルを掴んでいるのを気にせず、そのままスケイルごと地面に叩き付ける。










バチカンの者達は何が起こっているが分からないが、二人の会話からタナトスが有利なのは容易に想像がつく。


「タナトス凄いッスね!俺なんてあんなになったら戦えないッスよ」

「アイツは野生的だからな、それにタナトスは神の前はフランスの元SPだ、直感は人一倍優れている」

「でもアレはあり得ないね、普段目を使わずに戦っても充分じゃないか」


ヘリオスやモリガン、その他面々は驚きを隠せずにいるがダグザは当たり前と言った表情。






日本支部の面々も驚きを隠せずにいた、しかし緊那羅に限っては何故か惚れ惚れとした顔になっている。


「やっぱり良いわね、私が目を付けただけある」

「はぁ、貴女本気で惚れてたんだ?」

「当たり前でしょ?」


阿修羅はため息と共に力が抜けた、まさか緊那羅が本気でタナトスに惚れていたとは思ってもいなかったからだ。


















既に暗闇など意味がなく戦っているアカ・マナフとタナトス、最初は動揺から体が硬かったが、今は切り替えた事により本来の力を出せている。


「そろそろこの暗闇を解いたらどうだ?意味が無い事くらい分かっただろ?」

「お前が必要以上に体力を使ってるのは分かってるんだよ、集中力をあり得ないくらい使ってるんだろ?それなら使い続ける価値はある」

「テメェの死様をバチカンに見せたかっただけなんだけどな、まぁテメェのプライドのタメにも見えないまま殺してやる」

「強がり言ってる割には息が上がってるぜ?」

「カット【切断】」


タナトスは一瞬でナフトを斬り刻んだ、アカ・マナフは一旦間合いを取ってナフトを顕現するが、タナトスは構える暇を与えずスケイルを振り下ろす、アカ・マナフはスケイルの柄を蹴り飛ばした。

完全に体勢を崩すタナトス、アカ・マナフはそのままナフトを横薙に振る、タナトスは避け損じて軽く腹を斬られてしまった。

タナトスは一旦間合いを取り傷口を抑える、大した出血は激しくないが、ダメージを受けた事がタナトスの怒りに触れた。


「テメェ、絶対に殺す」

「次は急所を外さずに当ててやるよ」


タナトスが走り出した、アカ・マナフの手前でスケイルを後ろまで引く、そして横薙に振るがアカ・マナフは体を退け反らせて避けた、アカ・マナフはそのままがら空きになったタナトスを突こうとするが、スケイルは一瞬で切り返してきた、アカ・マナフはそれに反応出来ずにスケイルの背で頭を思いっきり殴られる。

派手に転がるアカ・マナフ、しかしタナトスはそれを追いかける、アカ・マナフが止まった瞬間、スケイルを振り下ろした、アカ・マナフはギリギリで後ろに避けるが、タナトスはスケイルを地面に刺したまま突っ込む、そして体勢が不安なアカ・マナフの顔面を蹴り上げた、宙に浮いたアカ・マナフを顕現したスケイルで斬ろうとする、アカ・マナフは何とかナフトで防いだが、そのまま飛ばされてしまった。


「力の差ってもんが分かったか?テメェには負けないんだよ、コレが一支部員と神選10階の差だ」


ボロボロになりながら血が混ざった唾を吐き出し、タナトスを睨んだ、タナトスは睨まれている事に気付いていないが、アカ・マナフの息が上がっているのは気付いている。


「まぁテメェは弱くねぇよ、気落ちするな」

「お前、化物か?」

「悪神さんにしては気弱なセリフだな、安心しろ、強いだけだ」


アカ・マナフは立ち上がって構える、タナトスは気配だけで構えた。


「エキサイティメント【興奮】!」


その瞬間暗闇は無くなり、正常な世界になった、しかしアカ・マナフの肌は紅潮し、目は充血している、鼻息は荒く、過呼吸気味に思える。


「う、うがぁぁ………」


大量の汗を流しながらタナトスを睨む、タナトスは慎重に構えると、アカ・マナフは走り出した。

その速さは人間のそれを遥かに超えている、そして凄まじい高さまで跳び上がるとナフトを振り上げる。


「があああぁぁぁぁ!!」

「テメェが化物じゃねぇか」


タナトスは笑いながら受け太刀する、その力は尋常ではないが、押し潰されそうになる程の力ではない。


「カット【切断】」


タナトスはそのままナフトを斬り刻んだ、アカ・マナフはそのまま手を地面に着いた。


「ぐがああああぁぁぁぁぁ!」


アカ・マナフはなるふり構わずタナトスにタックルした。


「かはっ!」


一気に体内の空気が体外に押し出され意識が遠退く、しかし奥歯を砕けんばかりに噛み締めて踏ん張る。


「楽しくなって来たぜ」


タナトスの目が野生の目になる、もう一度タックルをしようとしたアカ・マナフを踏みつけた。


「ぎゃぐううううぅぅ!」

「いちいち気持悪いんだよ!」


タナトスはそのまま顔面を蹴り飛ばした、アカ・マナフは流血しながらもナフトを顕現してタナトスに突っ込む。


「テメェはダークロード以下だな」


タナトスは突っ込んで来たアカ・マナフに対してスケイルを振り下ろした、しかしアカ・マナフは寸前で後ろに避けたせいでスケイルは空を斬った。

アカ・マナフは無駄無く突っ込んで来るが、タナトスの口角は更に上がる。


「甘いんだよ、だからダークロード以下なんだぜ?」


タナトスはスケイルを切り返し、アカ・マナフの腹をスケイルの背で殴り上げる、軽く宙に浮いたアカ・マナフを踵落としで叩き付ける。


「さぁ、コレで終わりだぜ」


地面から跳ね上がったアカ・マナフにスケイルの切っ先を向ける、そして躊躇無くスケイルを振り下ろした。






















バチカンに弾き出された二人、バチカンは震えるような歓声と拍手、タナトスは妖しい笑みを溢しながらアカ・マナフを見た、そこには怒りや悔しさ、負の感情に包まれたアカ・マナフがいる。


「俺様に当たったのを後か―――!?」


アカ・マナフは腕輪に触れてナフトを顕現した。


「死ねぇぇぇぇぇ!」

『おいおい!そりゃあり得ないぜ!』


完全に気を緩めていたタナトス、反応が遅れてしまい成す術がない。


「ありゃりゃ、あれは頂けないなぁ」

「はっ!恥の上塗りなんて男の風上にもおけねぇ!」

「最低弱者」


一番早く動き出したのは阿修羅とヘリオスだった、しかし距離が遠い、いくら技名を破棄したベロシティ【光速】でも届くかは分からない。

開場の全員がタナトスの死を察したその瞬間、アカ・マナフの体に元帥の獲物の鞭であるヴァルナとランギの獲物の紐であるアヌが絡まる、そして…………。


「大人しくしてろぉ!」


毘沙門天がアカ・マナフにタックルした、アカ・マナフは吹き飛ばされ、アヌとヴァルナに引っ張られ元の位置に戻ろうとする、そこには毘沙門天がいた。


「チェストォォォォォオ!」


毘沙門天はラリアットをしてアカ・マナフを気絶させた。


「何がチェストだよ?」

「不可解用語使用禁止」

「チェストは立派な言葉だ!日本をナメるなよ!?」


アカ・マナフを縛って消えていく3人を呆然と見つめる面々。


『と、とりあえず勝者はタナトスだぁ!いくら神選10階レベルでも本物の神選10階には及ばねぇって事だぁ!』





執筆しているうちに思ったんですが、今作の主役は阿修羅というよりは帝釈天やタナトス、ダグザって感じが強いですね。

今まで阿修羅やヘリオスの影にいたので表には出て来ませんでしたが、今回は阿修羅よりも出番が多いような気がします。


次回作の設定を練る過程で、どうしてもこの3人は外せないのでこういう形になったんでしょうね。


ちなみに次回作のキャラクター数は倍近くになる予定、只今キャラクター設定を必死に考えています。

また今まで語られなかったあんな話やこんな話、伏線も散りばめてあるので、そこら辺も見て頂けたら嬉しい限りです。

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