第1話 ゲームの始まりです!
戦争に勝つには3つの条件がある。
1つは絶対的指導者がいること。
2つ目は戦略的に勝ること。
そして3つ目は運を味方につけることである。
どんな苦しい戦いでも運が味方につくことで一気に逆転する。
ストラテジーゲーム。俗に言う戦略ゲームも根本的には一緒だ。しかし上記の条件を満たしてなくても勝てる。逆にリアルの方で運が良くてもゲームでは乱数という原理が使われているため関係ない。
ではリアルでストラテジーゲームをしたらどうなるのか?
戦争に勝つための条件を満たしていない。しかし乱数によって勝敗が決まることもある。果たしてそれを戦争と言っていいのか?
ゲームはゲームであり、それ以上の存在にはならない。戦争とストラテジーゲームは違うのだ。
◇◇◇
ある昼下がり、高折鷹斗は高校特有の憂鬱にふけていた。高校2年の2学期、夏休みが終わりこれから少しずつ進路を考えていく大切な時期だ。昨日始業式があり、夏休みからまだ2日なのにいきなり6時間の授業。そんな過酷な日の半分が過ぎ鷹斗はストラテジーゲームを片手にご飯を食っていた。
友達はそこそこいるが親友と呼べる者はいない。別に自分から人を遠ざけているわけではない。しかし理由は簡単だった。
大のストラテジーゲーム好きなのだ。小難しいゲームを好きなやつなんて限られてくる。結果友達付き合いは悪くなってしまうのだ。
誰にだって熱中するものはある。
それがストラテジーゲームだったってだけ。
ストラテジーゲームでは自分の発言は絶対、しかしリアルでは違う。そのギャップこそがストラテジーゲームに熱中する理由だ。
戦略を立て、軍に命令するだけで戦争に勝ってしまう。こんなに素晴らしいゲームは他にないと思う。
そんなことを他の人に言ったら、まず間違いなく引かれる。
そんなことを考えていると、
「またゲームやってるの?そんなにゲームしてたら目が悪くなるわよ」
楽しいストラテジーゲームをやってる時に横槍を入れてくるのは誰だ?と思いつつ声の主に目を向ける。
声の主はこの学校の現生徒会長、天音千鶴だった。高校1年の時に立候補し見事当選。容姿端麗、成績優秀、才色兼備、どこをとっても完璧な非の打ち所がない俺のクラスメイトだ。長く黒い髪は日本人の血を間違いなく引いていると思う。彼女との関係は浅くもなく深くもない。1年2年とクラスが同じでお節介焼きだからずっとゲームをしている俺を見てよく話かけてくる。
向こうは良かれと思ってやっていることだろうが、こちらからしたら迷惑でしかない。
「いいんだよ、ゲームで目が悪くなったらそれが本望だよ」
テキトーな返しで流そうとする。
「なにそれ?本気で言ってんの?バカなの?」
少し切れ気味に千鶴が返す。少しというか完全に火をつけてしまった。
こうなった千鶴はめんどくさい。
「高折くんはいつもそう!そうやってテキトーに流そうとするんだから!こっちは高折くんのためを思って言ってるのに!」
それが迷惑なんですがね…とはいえずに説教を淡々の食らっている最中もゲームはやめない。ゲームの方にチラチラの目を配る。今やっているゲームは自分が戦国武将になって兵を動かすゲームだ。よくありがちのゲームだがこれがなかなか面白い。
ちなみに真田軍がお気に入りだ。
「はぁ…って、ねぇ聞いてるの?」
いつの間にかチラ見がガン見になっていたらしく千鶴の話なんか聞いてすらいなかった。まぁこれがいつものやりとりなのだが。
「はいはい、聞いてますよ千鶴様。だけど早く準備しないと次の授業に遅れますよ?」
次の授業が移動教室なのを思い出しそう言って話を変える。
「あっそうだったわね。高折くんも遅れることがないように」
どこの先生だよ。そう思いながらも素直に授業の準備をする。もちろんゲームはやりながら。
それから5、6時間目を終わらせ、待ちに待った放課後。鷹斗は部室に向かう。家という部室に。帰宅部だから当たり前である。
いざ帰ろうと鞄を持ち上げたとき、
「鷹斗ー」
遠くから俺と同じクラスで学級委員の蝉川健斗が呼び止めてきた。
彼はサッカー部に所属していて見た目はチャラチャラしているが、責任感が強くここぞという時に力を発揮してくれる。はずだ…
「うん?どうした健斗?」
健斗が呼び止めてくるのは珍しい。
「いや〜それがさぁ〜俺と同じ班のやつが二人休んじまっててよ、掃除当番を代わりとして一緒にやって欲しいんだ」
そんなことだろうとは思っていた。掃除といっても教室のゴミを箒で掃くだけの簡単な掃除だからそのくらいだったらゲームしながらできるし、
「いいよ、別に」
とくに表情を変えることなく答える。
実際ちょっと嬉しかったりもした。あまり人付き合いがうまくない自分を誘ってくれたんだ、断るわけにはいかない。そう自分の本能が告げていた。
ゲームを左手に持ち、健斗が持ってきてくれた箒を右手に持つ。ストラテジーゲームを恩恵なのか、二つのことを同時にできる。特技ではないが自慢は出来るだろう。
しかしどうも引っかかった。
健斗の言っていた二人というのは1年生のとき同時に皆勤賞をとっている真面目なやつらだ。夏休みで体調を整えて迎えた新学期の2日目に皆勤賞の2人が揃って休みとは…
底知れぬ違和感を覚える。
その違和感が答えるかのようにゲームでは、真田軍が押されつつあった。
掃除はさっさとおわり、今度こそ帰ろうとする。その時ピローンと言う音が聞こえた。携帯にメールがはいった音だ。学校ではマナーモードにしているはずなんだが、この時はし忘れていたようだ。
ピローンと言う音にクラスに残っていた数人が反応する。なんとも言えない空気が漂う。
「ごめんなさい…」
と小さくつぶやき教室をあとにする。教室をでてすぐにメールを開いた。内容はAEというゲーム会社からだった。
『おめでとうございます!あなたは当選しました!これから行ってもらうゲームはあなたにとって至福のひと時となるでしょう!ぜひ楽しんで下さい!
ゲームの詳細URLxxxx//xxx…』
なんとも胡散臭い文面。他の人が見たら詐欺か何かと思うだろう。だが鷹斗には身に覚えがあった。夏休みの初めに俺宛てに届いた手紙。よくゲーム会社のアンケートに参加している。そのこともあったからだろう。手紙は封筒に入れられ何か大きな印鑑がおしてあった。俺は恐る恐る封筒の中身を確認する。
『新作のストラテジーゲームをいち早く体験してみませんか?今応募すると新作ストラテジーゲームのβテストの権利が当たる!』
そんなような文面だった。有名な会社でもあるし、ストラテジーゲームのβテストが出来るなんて願ってもない話だ。そう思い俺は応募することにした。昔から運はいい方だった。だが本当に当たってしまうとは…
さっきも言ったがこの会社はゲーム会社としてかなり有名で数多くのゲームを排出している。その中でもストラテジーゲームは最高品質といっていい代物だ。そんな会社のゲームβテストに当選したんだ。倍率も高かったはず。やはり運がいいと思った。それと同時にさっきと似たような違和感を覚える。
妙な胸騒ぎがした。
またメールに目をやる。そしてゲームの詳細と書かれたURLをタップするとインターネットの方であるページが開かれた。どうやら今回のゲームの専用ページのようだ。下にスクロールすると「当選した方へ」と書かれた箇所をみつけた。なんの躊躇もなくタップする。すると何故か警告メッセージが表示される。
『このサイトはサーバーが確立されていないため、安全なセキュリティーの確認が出来ません。このページを開きますか?』
まだサイトが出来てすぐだから仕方ないか…と気にも留めない。
はいと書かれた場所をタップする。
表示されたサイトはいかにも戦略ゲームっぽい雰囲気に仕上がっていた。少々不気味ではあるがそれがこのストラテジーゲームの醍醐味なのだろう。下にスライドをしていくと初期設定と書かれた欄を見つけた。そこには氏名、住所、年齢、Eメールアドレス、ペンネーム、暗証番号の設定、いくつかのアンケートのようなことが書かれた項目があった。
俺は順番に設定をしていきアンケートの項目まできた。しかしそのアンケートは少し普通ではなかった。
1、あなたはゲームが好きですか?
もちろん『ハイ』だ。ゲーム好きじゃなかったら応募していないだろう。ましてやストラテジーゲームという特殊なゲーム、興味本位で手を出す人などいないはずだ。続きの回答を始める。
2、あなたはストラテジーゲームが好きですか?
これももちろん『ハイ』だ。上の理由と全く同じなんだがな。
3、あなたは人の上に立つことが好きですか?
好きでなければストラテジーゲームなんて主導者を語るようなゲームはやっていない。だが勇気がないからリアルでは人の上に立つなんて夢のまた夢だ。
4、あなたは人を殺せますか?
いきなりの不穏な質問に困惑する。
人を殺す。生き物の中には同種を殺す生き物はたくさんいる。例えばカマキリは同種を食す。これも同種を殺していることには変わりないが、カマキリのような生き物は本能で動いている。そうしなければ生きていけないのだ。
人間がそれをしてしまうと、生まれ持っている理性を否定することになる。
人として越えては行けない線がそこにはある。
答えはもちろん『イイエ』だった。
5、最後にこの世界に未練はありませんか?
ゲームとは全く関係ない質問である。この世界に未練?これといってない。元々未練を残さないように毎日をエンジョイして生きてきた。ゆえにストラテジーゲームというものにハマってしまった。
答えは『ハイ』
最後の質問を終えると別のページに飛ぶ。何やらゲームのスタート画面のようだが、バグなのか『ここを拠点としますか?』という文字以外見当たらない。画面は真っ暗で赤い文字だけが異様な雰囲気を醸し出していた。ストラテジーゲームは最初の拠点で勝負が決まるような不公平なゲームではない。多少の格差はあるもののそれぞれに特徴がある。その特徴をいかに伸ばせるかが重要なのだ。
俺はランダムな拠点も面白いと思い『ハイ』を押した。
瞬間目の前が暗転し、深い谷へ落ちていくような感覚に陥る。意識が段々遠のいていく。
俺はそのまま意識を失った。
みなさん初めまして。新庄エイカと申します。
まずこの作品を目に留めていただきありがとうございます。友人に教えてもらったこのサイトで影に隠れながら、作品を投稿していきたいと思います。
書くこともないので、私が小説を書こうと思ったキッカケを綴ります。キッカケはその友人が小説を書いていることから始まりました。友人は文系でとても語学力があって、彼の書く小説はとても綺麗ですごくいいものばかりで最高です。そんな友人みたいに小説を書きたいなと思ってこうして執筆している所存です。アドバイスをくれた友人にこの場でお礼したいと思います。ありがとう。
まだ小説を書き始めて日が浅くいろいろ足らない部分が多いですが、頑張って参りますのでよろしくお願いします。