7/8
ごまかし
キリがニコニコしている。
「どうしたの?」
「なにが?」
「なんだか、嬉しそうだから」
「そう?」
僕らは街を歩いていた。
「私、ケンのこと、好き!ケンは?」
「…好きだよ」
「よかった」
今日はキリはこういうモードらしい。
気まぐれ。
僕の心は、ナオに傾いていく。
ナオと約束して、会った。
キスした。
「もう、ごまかすの、やめよう。自分の気持ち」
「…うん」
手をつないで街を歩く。
幸せな気持ち。
…道の先に、キリがいた。
「そうだったんだ…」
キリが走っていなくなった。
僕とナオは、どうしようもなくて、つないでいた手を放して、呆然とその場に立っていた。