はじまり
学園。
僕がナオにキスすると、ナオは不思議そうな顔をした。
「どういうこと?」
「…え?」
「ケン。あなたがどうして私にキスするわけ?」
「だって、彼女だろ?」
?
不思議そうな顔をして、ナオがこっちを見ている。
「どうしたんだよ?ナオ」
僕は不安になって、彼女に言った。
「今のはなかったことにしてあげる。じゃあ」
ナオがどこかに行ってしまった。
帰り道。
女の子がいきなり抱きついてきた。
ナオだろう。と、当然僕は思う。
しかし、いつもと香りが違う。
「ケン、ゴメーン。お待たせ!」
ついでに声も違う。
女の子の顔を見る。
カワイイ…。
じゃない。
抱きついてきたのは、クラスメートのキリだった。
「な、何だよ。キリ…」
「えっ?」
公園。
ベンチで、今日起こったことを、素直にキリに話した。
「…じゃあ、あなたは、ナオが自分の彼女だと思ってるわけね」
「…うん」
「変わった思い込みねえ…」
「思い込み、なのか?」
「そうよ。まわりのみんなも、みんな、私とケンが付き合ってるって知ってるよ」
そう言ってキリはクラスメートの何人かに電話をかけた。みんな同じ答え。僕が付き合ってるのは、キリ…。
自分の部屋。
思い込み、なんだろうか?
ナオとの思い出。あれは全部、幻影?
そんなわけ…。
わけがわからず、気がつくと僕は眠っていた。