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スケッチブックに描くもの

「なあ、ちょっと見せて。スケッチブック」

「えー。まあ、いいけど辛口な批評はやめてよ!」

「わかったって」


 スケッチブックを取り出して、涼に渡す。それからスケッチブックの絵を見ては話をしてそのうち別の話題になって行く。涼と話を続ける。いつまでもこの時間が続けばいいのに。


「じゃあ。な!」

「うん」


 うちの前でいつもの様に別れた。


「ただいまー」


 部屋に入りカバンを置いて思い出した。

 あ、スケッチブック! もう! 涼が持って行ったんだ。

 まあ、いいか。明日返してもらえるし。



「おはよう」


 教室に入り莉子に声をかける。涼とはテニスコートで会わなかった。


「おはよう、ね、アリスの机にスケッチブックあるけど?」


 見ると本当に置いてる。涼なんで直接渡さないのよ!



 スケッチブックを持って涼のクラスに行ったけど涼はいない。涼の机ごと。

 何? どうなってるの?



 自分のクラスに戻りスケッチブックを握りしめ、必死に考える。何? 何があったの?

 始業式が終わりみんなが帰る用意をしてる頃、莉子が私のところに飛んできた。


「佐伯君転校したって! アリス知らないんだよね?」

「へ!? なに?」


 涼が転校って何?


「やっぱり。今さっき佐伯君のクラスで聞いてきたの」


 莉子がスケッチブックを握り続ける私の手に手を重ねて言う。


「アリス。大丈夫? アリス?」


 涙がやっと出てきた。この事態に気づかない、いや気づいてないフリをしようと必死にあがいたけど、涙が追いついた。


「アリスー!」


 莉子が私を抱きしめる。莉子は何がなんだかわからないだろう。私もわからないから。



 いったいどうやって学校から家に帰ったのか思い出せない。きっと莉子が送ってくれたんだろう。


 私は部屋に入り泣き続けた。涙っていつ枯れるんだろう。って思いながら。

 涙は結構早くに枯れる物だ。1日泣いて、涙の欠片も出なくなったけど、なぜ涙が出ないのに泣けるんだろう。ずっと心が泣いてるからだろうか。


 一体何日部屋にこもっているのかそれすらわからなくなった。母はいろいろしてくれるがなにも喉を通らない。

 ふと手元を見るとスケッチブックがあった。何気なくパラパラとめくる。そこにはたくさんの涼がいた。

 目が霞む。ああ、また涙だ。涙って時間が経つとまた出るんだ。

 最後のページで手が止まる。絵じゃない。私は書いてない。

 もう一度今度はちゃんと開く。涙を拭う。


「涼! バカ! 大っきらい!!」


 そこには涼からの手紙が書いてあった。

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