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出来上がった絵

 夏休みに入ってすぐに私の絵は完成した。あーどうしよう。涼とこのままここにいる時間を過ごしたかった。でも、わがままだよね。ルール無視でここにいるんだから。


 後ろで気配がする。


「何だ鏡野これじゃあ、テニスの良さが全く伝わらないじゃないか。ここにずっと居座っておいて」

「あ、はい。すみません。佐々木先輩」


 まさかの佐々木部長から絵のダメ出し。あー最悪だ。


「これじゃあ困る。もう一枚描け!」

「え!?」


 ここに私がいるのあんなに迷惑そうだったのに? っていうか小突かれた。


「テニス部がこんなだと思われたら困る」

「はい。次は頑張ります」


 なんだろめちゃくちゃ絵を批判されたけど、結果オーライ?



 取り敢えず顧問に見せに行くと


「よく描けてるじゃないか。頑張ったな」

「あのそれが、テニス部からクレームが来て……これじゃあ困るって」

「そうか、いい絵だが。まあ、もっと迫力とか欲しいんじゃないか。頑張ってるからなテニス部」

「なのでもう少し描いてみます」

「ああ、そうだな。上達してるし、もっと迫力ある絵がかけるといいな」


 顧問は相変わらずポジティブだなー。



「えー。あの絵俺気に入ってたのに。佐々木部長なんの部長だよ」


 確かに何部ですか? だけど。


「でも、これで夏休みもテニスコート入れるし大会とかも全部!!」


 そう試合観には行けるけどあの席は用意されてないんだ。



 夏休み次々にくる試合に備えてテニス部は練習漬けの日々。そして私は日焼け止めを塗って帽子の陰で絵を描く日々。



 ついにきた。関東大会準々決勝!!


 試合当日も暑い。つい探してしまうあの子。いた、いつもいる。私の事気にならないのかな? っていうか私の方が気にしてるのがおかしいのかな?


 一回戦岡田先輩敗退。


 やっぱりここまでくるとみんな強い。



 二回戦負け知らずの駿河先輩が接戦でようやく一勝。


 やっぱり強い。あの駿河先輩が苦戦してるなんて。



 三回戦のダブルス。コンビネーションが上手く取れず敗退。



 四回戦。涼だ。ここまで負けなしだった。というか負けたら終わる。


 ガタイがいい三年生相手にコートをかけまわる。暑さと体力の違いが浮き彫りになる。ああ、もう見てるの辛い。


 涼は粘りに粘り最後にサーブを決め、勝った。はああ。息をした。息してた私?




 最後は佐々木部長だ。何あれ? 高校生? 普段は大きく見える佐々木先輩が細く見える。


 大丈夫なの? 私の不安をよそに涼しい顔で勝ち進む佐々木先輩。なんなんだあの人。


 これでようやく準決勝へ進む!!


 帰りの電車は佐々木先輩が何度も注意するほど部員たちは大はしゃぎ。なぜか、部員でない私もいれて打ち上げまで。


 何にもしてないマネージャーの気分になる。



 涼も今日の勝利は嬉しかったのかすっごいおしゃべりになっていた。ああ、こんなに楽しい日々がくるって。




 やってきました準決勝!


 問題大ありなダブルスを抱えて不安はあるけど頑張って! みんな!



 一回戦いつもと違い駿河先輩。初戦を落として士気が落ちるのを防ごうとしたのかな。


 やっぱり強い駿河先輩が大苦戦している。朝だけど、汗がコートを濡らしている。ようやく一勝。



 二回戦岡田先輩。駿河さんだと思って合わせてきたのか、すっごい強さで、あっさり負け。



 三回戦ダブルス。問題大ありなダブルスなところを見せつけて負けとなる。



 四回戦。涼です。あ、あれ? 相手は向こうの部長のよう。部長の声援が飛んでいる。どうやら佐々木先輩ではなく涼を狙ってきたみたい。


 さすが部長なだけある、相手は強い。なんか涼がコートを泳がされてる。炎天下、体力なくしたらもう終わり。あ、ああ。


 最後これを決められたら終わり。涼から汗が流れ出てる。相手はまだ余裕そのもの。


 パーン


 最後の一球を決められた。一勝しかしてないのでもう負けとなる。



 帰り支度をしているみんなは無言。時々泣き声を殺しているのが聞こえる。


 私はテニス部のみんなとは別に帰った。涼とも。なんと言葉をかければいいのか。そして、言葉を返してもらうのが辛くて。




 次の日涼はいつもの涼だった。テニス部のみんなもまた新たな目標に向かって動き出したみたい。



 夏休みが終わり明日は始業式。テニス部の部活が終わり涼といつものように帰ります。


「佐伯! じゃあな」


 突然後ろから佐々木先輩が涼に声をかける。


「何?」

「さあ?」


 そろそろ佐々木先輩部活卒業かあ。次の部長は駿河先輩かなあ。テニスの実力からみても。


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