勇者、急襲!?(主に性的な意味で)
「ブレンネン・シュラーク!!」
ヤケクソのようなアイカの一撃で崩れ落ちるエロ触手ども。
俺たちが駆けつけると、アイカはほぼ全裸状態ながらもなんとか敵を殲滅していた。
不意に、目の前が真っ暗になる。
それと同時に、柔らかな手の感覚が瞼の向こう側に広がる。
「ユーリ様……」
「す、スマン、そんなつもりでは……」
アイカのあられもない姿を数秒近く見てしまったのはここだけの秘密だ……。
「今回、私はただの傍観者だった……。アイカがあんなことになっているのに、何もできないなんて……」
口では悔しそうに言っているコウダイだったが、その表情は思ったよりも悔しそうではなかった。
むしろ、
「鼻の下、伸びてるぞ」
嬉しそうですらあった。
「な、何を言うか!? わ、私は断じて鼻の下など伸ばしていない! 恋人のピンチで喜ぶ男などいるわけが、」
「はいはいエロスワロス」
「こらユーリ! 人の話は真面目に聞かんか!」
「エロ師団長さん……」
「聞こえてるぞイズミッッ!」
その後しばらく俺たちとの応酬が続いた……。
イズミの治癒術で、(あっさり)イズミとアイカの衣服は復活し、俺たちはようやく一行が滞在するキャンプへと戻ってきた。
「…………」
「…………」
俺の前方を歩くイズミとミナトから漂うのは、何とも言えない気まずい空気。
お互い目に見えない電撃を飛ばしあっている。
「ちょっと、あの2人どうしたのよ? なにかケンカでもしたの……?」
事態を見かねてか、アイカが尋ねてきた。
「俺に聞くな……」
俺はそう答えるのがやっとだった。
深夜、見張り役以外の隊員が皆寝静まった頃、俺は1人焚き火を囲いながら物思いにふけっていた。
イズミもだが、ミナトもどうかしていると思う。
彼女らは、どうしても揃いも揃って俺なんかを好きになったりするんだ?
それはやはり、俺が勇者だからだろうか?
ではもし、俺が現実世界のようなただの一高校生だとしたら、彼女らは俺をどう思うんだろうか?
見向きもしないだろうか?
恐らくそうだろうな。要は、彼女らは俺という人間に惚れているのではなく、勇者という肩書きに惚れているにすぎないのだから。
「くだらないな……」
そんなのどっちだっていいじゃないか。どちらにせよ、俺は恋愛なんぞに興味はない。
俺には守ってやらなければならないやつがいるんだ。
あいつを探すためにここに来たんだ。
それを忘れてはならない。
「勇者様」
聞き覚えのあるおとなしくて控え目な声。
「ミナトか……?」
闇の向こうでミナトが頷く。俺は忍びのように気配を殺すミナトに向かって「そんなとこにいないで、こっちに来いよ」と言った。
「はい……」
微かに震える声で、ミナトは答えた。
こんな時間に1人で来るからには、何かがある……。俺は嫌な予感を抱きながらも、ミナトをこちらに招き寄せた。
焚き火に照らし出され、ミナトの軍服に包まれた小さな身体が鮮明になる。
「そこ座れよ」
「……はい」
彼女はチョコンと丸太の上に腰掛けた。
「食うか?」
「……あ、ありがとうございます」
俺が手渡したべロッサの実を受け取るミナト。
「飲むか?」
「……いただきます」
俺は俺の足元に置いてあった飲み物の入った竹筒を一本彼女に差し出す。
だが、すぐに、
「あ、それ酒だ……」
渡すものを間違ったことに気付く。
ちなみにこの世界は飲酒に年齢制限は特にない。
だから、俺やミナトが酒を飲んでも別に問題があるわけじゃない。
ちなみに、俺は残念ながら下戸らしく、すぐに真っ赤になるから自ら進んで飲むことはない。
恐らく今ミナトが飲んでいるのは、他の隊員が忘れていったものだろう。
止めようかと思ったが、ミナトは渡されたものをすぐさまグイっと飲み干してしまっていた。
「お、おい、大丈夫か?」
竹筒を掴んだまま微動だにしないミナトを気遣って尋ねる。
「……うぇ?」
「…………うぇって、もう、酔ってやがる……」
明らかにミナトの目が座っている。そのスピードたるや、もはや漫画だった。
「勇者様ぁ!」
「は、はい!?」
大声でミナトが俺を呼ぶ。
するとミナトは眼鏡を外し、遠く、闇の彼方に投げてしまった。
そして次の瞬間には、
「うわーい!」
「うおぉ!?」
俺に飛びかかってきやがった!
僅かに酒臭いが、同時に心地良い女の子の香りを振りまくミナトは、俺に被さるようにのしかかってきた。
「こ、こらミナト! お、お前何考えてんだ!?」
「勇者さまぁ……わたしは、もう我慢出来ないのですぅ……」
「が、我慢っておま……え!?」
気付くと手足がガッチリ光のバインドのようなもので固められていた。
俺が驚いていると、ミナトは不敵な笑みを浮かべた。
「これなら、動けませんね……?」
「お、お前、なんてこと……を!?」
今度はなんと、ミナトは自分の服のボタンを外し始めていた!
「お前! なに服なんて脱いでんだ!?」
俺の言葉を無視し、ミナトはジャケットを投げ捨て、今度はスカートのホックを外した。
スルスルとスカートが腰から下に落ち、下着が完全に露出する。
フリルも、柄も何もない、純白なそれは、実に透明な彼女らしかった。
……って、何俺はマジマジと女の子のパンツを観察してるんだ!?
「ミナト、も、もうお前の気持ちは分かったから、脱ぐのはやめてくれ! これ以上は、マジでシャレにならん!」
俺は目を瞑り、必死で説得を試みた。だが、
「嫌です。今日は勇者様にわたしを抱いていただくと決めてきたんです。だから、絶対にやめません……」
ミナトは左手で俺の目を見開かせようとしながら、ブラウスのボタンを右手だけで器用に外していく。
俺は必死に目を瞑り続けた。
手足が塞がれてるならもう俺にできる事なんてそれしかないのだ!
それでも、
「うおおおおおッッ!?」
俺の大事な部分にミナトの手が伸びた時、俺はついに目を開けてしまった。
「…………」
眼前には、上半身が完全に露わになった少女の姿があった……。
夜の闇の中でも分かるほど、透き通るように白くて、僅かに汗ばんでいる肌。他の人間に比べれば華奢ながらも、それでも軍人らしく引き締まったお腹。
そして、小振りながらも、綺麗な形をしている、おっぱ……
「だー! それ以上は年齢制限かかるっての!!」
思わずメタなツッコミをする俺。
「勇者様……」
「な、なんだ……!?」
「やはり、下も脱がなければいけませんか……?」
「いやダメ! これ以上はマジでダメ! ってかもうすでにアウトだけど!」
「そう、ですか……。では、今度は勇者様が脱ぐ番で……」
「誰が、脱ぐ、とおっしゃいましたか……?」
「「ッッ!?」」
唐突に訪れた第三者の声に2人は一斉に振り向く。
そこには、やはりというか、展開的に当然ながら、
「ゆー、うー、りー、さー、まー!?」
怒り狂ったご様子のイズミさんの姿があった。
いやいや、俺が怒られてるのおかしくね!?