第九話
あかん。洒落にならんぞ、これは
眼前のべっこりへこんだ地面を見て額から大量の汗が吹き出る。
「うわっ!? 大きいなー」
言ったのは女の子。その様子はかなり冷静で落ち着いている。
何でこんなのが目の前にいるのに平然してられるんだよ!?
「まさか何か知ってるのか!?」
思わず女の子の両肩に手を置く。
「えっ、ちょ!?」
「どうなんだ!」
俺は女の子の肩を大きく揺さぶった。
「危ない!」
刹那、轟音と砂埃が辺りを埋め尽くした。
どうやら、化け物が連続パンチを地面に放った様で女の子の方に体を向けていた俺はそれに気付く事が出来ず、女の子がスライディングの様に助けてくれたらしい。
「あ、ありがとう」
周りは砂埃で化け物の姿は見えない。
すると少女は俺の耳元で小声で話しだした。
「静かに聞いて。奴はナックラヴィー、倒し方を知っているからついてきて」
そう言うと少女はなんと大声を上げだした。
「化け物さんこっちよ! ついて来な!」
その後、俺の手を引くと走り出す。
「ちょ......ちょっと!? 何でわざわざ居場所バラすんだ?」
「すぐわかるよ」
後ろを見ればナックラヴィー?が当然の様に追いかけて来る。
森の中を駆け抜け、目の前に森の出口が見えた。
「出るよ!このままのスピードで出口まで走って。森を出たら右によけなさい」
「えっ? どういう......」
「じゃあ行くわよ!」
まだ話の途中......
状況が終止飲み込めないまま、作戦が決行された。
仕方ない、やってやる!
俺達は並列に森の出口目掛けて全力疾走。森を出たその時、
「!?」
眼前に広がったのはナックラヴィーと遭遇した湖に酷似しただだっ広い湖だった。
俺は湖に突っ込む寸前で地面を蹴り飛ばし、右に体事吹き飛んだ。
地面に体を擦り、動きが静止した所で森の中からナックラヴィーが飛び出してきた。
ザバンともの凄い水しぶきを上げて、真っ逆様に湖に落ちていく。
水しぶきをまるで、返り血の様に真っ正面から浴びる。
湖に落ちたナックラヴィーは時間差で水面に浮かんできた時には動かなくなっていた。
「これ、どうなったの?」
「死んだ」
「えっ!?」
「ナックラヴィーはね、水の妖精なんだけど淡水に浸かると死んじゃうんだよ。おかしいよね?」
何だよ、それ。てか、あの成りで妖精はねぇだろ
「でもコイツ、この森の反対側にある湖から出て来たぜ?」
「あれは湖じゃなくて海」
「はぁ!?」
「湖に見えるよね? でも海と繋がってるから塩水なんだよ」
「コイツは塩水は大丈夫って事か?」
「うん、水の妖精だから」
淡水はダメだけどな
「でもここまで大きいのは初めて見たけどね」
少女がそう言ってナックラヴィーを木の棒でつんつんしている。
「なぁ? 何でコイツの倒し方知ってたんだ?」
「君、新人でしょ?」
質問を質問で返すなよ
「あぁ、さっきダイブしてきた」
「だよね。そんな格好してるし」
「格好?」
格好と言えばリアルまんまのTシャツに短パン。