第八話
こんな事をまるで走馬灯のように考えながら一つだけ分かっている事があった。
それは死ぬ事ばかり考えていても仕方ない。
実在の人体に影響が及ぶとしても俺は今ゲームをしているんだ。
大好きなゲームを。奈々にはあんな事言ったが本当にオタクと呼ばれても仕方ないくらいに俺はゲームが好きだ。
こんな化け物が出てくるんだ、ファンタジー系なのだろう
そして、ファンタジーの醍醐味は熱く手に汗握るバトルだ。
逃げてるだけじゃレベルも上がらないし、先にも進めない。
だったら、やる事は一つ。
コイツをぶっ倒す!!
決意した俺はその場で立ち止まり、化け物の方に振り返る。
と、そこである事に気がつく。
......でもどうやって? 俺武器持ってないよ?
じわじわ向かってくる化け物に眉間から汗が伝う。
汗は徐々に吹き出してきて化け物が眼前まで接近してきたその時、
「やっぱ無理ぃ!!」
再び全力疾走した。
いやだってさ、丸腰だよ? 丸腰だよ俺
丸腰であんな化け物に挑むって全裸で好きな子に告白して成功するぐらい難題だよ!?
そんなの無理に決まってんだろ! こんなもん桃太郎でも金太郎でも逃げ出すわ
カッコ悪くて悪かったな、どうせ俺は主人公にはなれねぇよ
その時だった。突然俺の前を何かが横切ったのだ。
それは何と人間の女の子。しかも俺と同い年くらいのだ。
「あぶね!?」
女の子と目が合い、足にブレーキを掛けるが急に止まるなんて出来るわけもなくそのまま女の子に突っ込んだ。
「いてて......あっ大丈夫か?」
頭をさすりながら俺は体を起こした。
「う、うん。その手を退けてもらえれば」
そう言う女の子の胸には誰かの手が包むように置かれていた。
って俺の手だよ!?
「悪い!」
すぐさま手を退けると女の子から視線をずらす。
チラッと見たその子の顔が紅潮していたのは間違えではないだろう。
と、そんなどぎまぎしていると化け物は俺達の目の前に立ちはだかっていた。
怒号の叫び声を上げると右腕を振り上げる。
思い切り振り上げた腕で俺達の目の前の地面をボコッとへこませた。