第七話
じわじわと森中を漂う紫色の息。やっぱりだ、間違えない。これは毒ガスだ。
慌てて手で口元を押さえると既に吸っていた少量の毒ガスにむせそうになる。
ダメだ! むせるな! 今むせたら確実にバレる。奴はもう真後ろにいるんだ、堪えろ
必死に息を殺したがダメだ。堪えきれず思い切り吹き出した。
「ごふっ!」
そのむせ声のわずか1秒後。俺の隠れている茂み、俺の真横から皮膚がなく筋肉や血管が露出した腕が飛び出してきた。
「!?」
ここはダメだ。
俺は結局走り出した。とにかく無我夢中で全力疾走する。
その後を木をなぎ倒して猪突猛進してくる化け物。
「くそ!」
同じ猪突猛進でも妹のものとは衝撃も迫力も凶暴性もだいぶ違う。妹の猪突猛進が可愛く見えてくる。
「ん!?」
一瞬、後ろを振り返ると化け物は手に何か持っている。
肉!? さっきまで持ってなかったのになんだあれは
それにここには人っ子一人いないはず
ますますヤバさ急上昇だ。そんなの上がられても困るのに
そして、冒頭のあれに繋がるわけだが
奴は依然として諦める気配がない。そして重要なのが俺がもう体力の限界という事だ。
このままだと確実に死んでしまう。
今のVRゲームは現実を忠実にをモットーに創られている。
だから走れば当然疲れる。
お腹も空くし、眠たくもなる。
ゲームだからご飯も睡眠もいらないなんて事はないのだ。
あれ? てことはこれ捕まったら死ぬんじゃね?
いやでも、今までゲーム内で死ぬと現実の自分も死ぬなんてゲーム存在しなかった。
てか、そんなもの存在しちゃいけないだろ、ゲームが人殺しの道具になるなんてあっちゃいけない。
大体そんな事が起きたら社会問題になるに決まってる。ゲームが規制されかねない。
そういうゲームが今でもなかったからゲーム文化はここまで来れたし、その一線に踏み込まない事で今もちゃんと機能しているんだ。
それに従来だとゲーム内で死ぬとコンテニューに戻るだけだからまた始められる。
だから死ぬ事は......多分ない。しかし可能性は捨てきれない。
誰が運営しているのかも分からないし、突然送られてきた制作者不明の謎のゲームだ。
何か、あるならそこなんだか