第一話
俺の今の気持ちはずばり″死ぬ″だ。
どうしてこうなったのか思い出す暇もない位絶望的状況に直面している。
今まで16年生きてきて一度も会った事のないこの世の者とは思えない化け物と呼ぶに相応しい者に追いかけられている。
化け物は下半身が馬のようであり、上半身は人間の姿をしているが首がない。
頭部は肩のすぐ上にあり、目が赤く、口からは何やら紫色の毒ガスのような息が漏れている。
腕は人間のそれと比べ物にならない位にバカ長く地面に付いてしまう程だ。
そして上半身には見事に皮膚がなく、グロテスクな事この上ない。
当然皮膚がない為、筋肉や血管は露出している。
そんな見た感じからやばさMAXな奴が今俺の後ろを鬼の形相で追いかけきているのだ。
そりゃ泣きたくもなるし、死ぬと思うのも当然の事だろう。
しかもコイツ初見からめちゃくちゃ凶暴で手にはそれがなんだったのか分からないくらいぐしゃぐしゃに食い荒らされた血みどろでピンクの塊を持っている。
多分......うえっ、考えるだけで吐き気がする。
奴に捕まったら確実に俺もあんな風になるに違いない。
それだけは絶対阻止しなければならないが、現在とにかく前に全力疾走しているだけで特にこれと言って作戦があるわけではない。
というか、こんな時に冷静に作戦なんて考えられるか!
かれこれ、数十分は走っていると思う。
流石にそろそろ体力は限界だぞ、どうにかしなければ......
全く腹が立つ事にいい作戦は全然思いつかないくせにどうしてこんな事になったのか走馬灯のように思いだしてきた。
えっ? 何、俺死ぬの?
冗談じゃない、こんな所で死ぬなんて御免こうむる。
てか、ゲームの中で死んだらどうなるの? セーブポイントからやり直しとかそんなん?
いや、でも俺セーブなんてしてないし、セーブポイントなんて見てないし
そう、ここはゲームの中なのだ。
俺は今いわゆるVRゲームと呼ばれる類のゲームをプレイ中で初めは街にいたのだが、状況を全く理解せずなんとなくで入った森でさまよい、その結果こうして化け物に追いかけられている。
そして何故、こうなったかだ。
あれは、現実でついさっき起こったのだ。