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洞窟の深層部

 冒険に向いた一般的な剣、シーカーソードを抜き放つ。普通のシーカーソードは大した攻撃力はないが、俺の剣は強化や改造によりレベルが二六六で更にあらゆる付与効果がついている。

 奴の狙いは俺かルナか。数秒間動かないことを確認し、俺は地を蹴り一足飛びでふところに潜り込む。ルナの照明魔法によって、鈍い輝きを放つ刀身を力の限り振るった。

 ゴッドキマイラは少しだけ身体をよろけさせると銃弾並みの速さで数十メートル後方に跳躍した。


A:ルナ、追うぞ!


ルナ:……うん。


 小さくこくりと頷くのを横目で確認し、行動速度を最大三十倍まで上昇させるスキル『疾風』を発動しモンスターの後を追った。

 可能な限りの速度で追いかけたが奴の姿を捉えることが出来ない。


A:どれだけ早ぇんだよ。


 それでもここで止まるわけにはいかない。俺達が入ってきた箇所以外出口は存在しないため逃げられることはないが、今まであまり対峙たいじしたことのない強敵を相手に本気でのぞまないのは、俺のロープレ魂に反する。


A:さて、何処行ったかね?


 辺りに視線を巡らせながら標的を捜す。だが周りにはよく見るモンスターばかりで、圧倒的な存在感を放つキマイラの姿は見えない。


A:ここまで来て居ないってことは……やはり奥か。


 速度を緩めないよう洞窟の最深部を目指す。何度となく通ったゴツゴツとした地面を駆け抜け、進路を阻もうと立ちはだかる雑魚モンスターを一薙で蹴散らす。


A:この辺りのモンスターは特に変わってないようだな。


 俺が現役で雑魚狩りしていたあの頃も、一撃に耐えられず悲鳴を上げ霧散していく様子を当たり前のように眺めていたな。

 そんな想いを脳内で巡らせていると、ようやく洞窟の最深部が見えてきた。


A:予想通りだな。


 目を向けた先、前方に広がるエリア『現在と永遠の狭間』の中央にそいつは居た。巨躯を支えるための四本の脚は勿論のこと背中に生える翼、存在感すらも並みのものより一回り二回りも大きく、その獰猛たる顔つき、半開きされた口から覗かせる何をも噛み砕かんとする牙、現存する肉食獣よりも鋭利な爪。俺が今まで葬ってきた魔物の中でもこれほどまでに威圧感のあるものはそうそう居なかったように思う。


A:キマイラ!ここがお前の墓場だ。遺言を残すなら今のうちだぜ。


 シーカーソードの切っ先を魔獣に向けそう言い放つが、グルルと唸り声を上げるだけで、俺を見下ろす眼球は光を失うどころか輝きを増しているように見える。


A:面白ぇ……。


 剣を持つ右手に力を込め、いつでもスキルを放てる構えを取る。


 グオオォォォォォォオオ。


 魔物が耳をつんざくような咆哮を轟かせると同時に、地を揺るがす勢いで蹴りつけ巨躯を宙に躍らせる。

 ほんの数秒で右前脚の鋭く尖った爪が俺へ切迫。瞬時に身を捻らせ、すんでのところで攻撃を回避。


 次いで左前脚の爪が迫るが、対象の筋肉や視線から相手の行動を予測し後方へ下がることで回避。

 そうすることで互いに僅かな距離ができるが、その空間を俺は利用する。


 一旦間を置いたあとすかさず魔物へ向かって駆け出す。一秒にも満たない僅かな時間、緑色の光がシーカーソードを包む。俺はそれをチラリと横目で確認し、その勢いを殺さぬように巨躯を右から左へ薙払った。


 刹那、キマイラの悲鳴と咆哮が混じり合ったような叫び声がとどろく。斬りつけたあとには緑色の光が僅かに残り、会心の一撃が当たったことが解る。


 先ほど放ったのは武器の剣レベル一二〇で習得できるアビリティ『デッドリースライダー』。発動までの時間が短く、コンボや連携にぜながら使用することで短時間で大ダメージを与えることができる使いやすい技だ。欠点としてはこの『デッドリースライダー』を単体で使用する場合、連続で発動することができないことだが、コンボの途中に別の技や通常攻撃を挟むことでその欠点はカバーできる。


 怯んだゴッドキマイラにスキル『観察』を発動。敵の頭上に存在するHPバーは満タンの青色からやや減少し、今は緑色に変わっている。


 数秒間互いに相手の様子をうかがっていたが、先に動いたのはキマイラだった巨大な身体に似合わず、俊敏な動きで俺の周囲を回っている。


 油断をすれば一瞬でHPバーを削られ、瀕死の赤色まで持っていかれる。高速で移動する対象を視界で捉えるため神経を集中する。だが何かおかしい。このモンスターがこんなに攻撃を仕掛けてこないなんて……。ふと視界に映るもの、それは……。


ルナ:エースはホント足速いね。すぐ見えなくなっちゃった。


A:ルナか、いいタイミングだ。どうやら数が増えているようだな。


ルナ:数?


 彼女は呟き視線を巡らす。無数に光る赤い瞳が俺達をジッと見ている。そう、先ほど感じた気配はルナのものではなく、いつの間にか現れた数え切れないほどの魔物のものだったのだ。


A:俺はキマイラをやる。ルナはそいつらを頼む。


ルナ:了解。


 その返答を受け、俺はもう一度キマイラに神経を集中させた。

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