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メイドインカフェ⑤

二週間も間が空いてしまいすみません。ようやく話が動きます。感想等もお待ちしていますのでよろしくお願いします。

「ここがメイド喫茶まゆうかふぇだ」


 外観は至って普通の喫茶店のようで中にメイドが居るとは思えない。


「じゃあ入ろうか?」


「そうですわね」


 ウキウキとした様子で二人が店内に入っていく。俺も入ろうと思ったがなんとなく嫌な予感がした。


「おーい、何やってたんだ?」


「置いていってしまいますわよ」


「ああ、すぐ行く」


 立ち止まっていても仕方ない。今さらここで帰るわけにもいかないし、そうしたところで嫌な予感がなくなるとは限らない。

 俺は新たなるダンジョンに臨むときのような心持ちで、メイド喫茶まゆうかふぇに通ずる扉を開けた。



「お帰りなさいませ、ご主人様!」


「うおぉ……」


 いきなりの出迎えに一瞬怯んでしまった。

 店内に入ってしまえばまるでそこは別世界。視界に映るのはメイド、メイド、メイド。正にメイド喫茶だった。


「おーい、麟こっちだぞぅ」


 引きつった笑みを浮かべながら直立不動で固まっている俺に、一番奥の席から手を振ってくる。

 俺は何をしているんだと思い直す。このメイドたちはただ金を稼ぐためにここで働いている社蓄でしかない。こんな奴らに惑わされるな。

 心を落ち着かせ通常時の自分を思い出す。


「あいつらと一緒に来たんだ」


「そうでいらっしゃいましたか。足元にお気をつけください」

 目の前のメイドはペコリと頭を下げ、会計を終えた客の座っていた席を片付けに行った。


「全く遅いぞぅ。何してたんだよぅ」


「心の準……ああいや、ちょっと迷惑メールが来てたから着信拒否に設定してたんだ」


 本当のことを言うところだった。危ない危ない。金髪改めACが訝しげに睨んでくるため、追求を逃れるように口を開いた。


「お前らは何か頼んだのか?」


「オレもクレミーもまだ頼んでないぞぅ」


 そうかと言ってメニューに目を落とす。まあ何でもいいか、ここに来た目的はただあいつがいないか調べるためだし。


「メニュー決まっ……」


 たか?と聞こうとしたところで視界の端で何かを捉えた。その正体を確かめるため顔を右へ向ける。

 心臓がドクンと跳ねた。まさか……そんな馬鹿な。捉えたのは一瞬だったが、正体を判明するには十分な時間だった。


「……委員長氏」


「ん?どうかしたのかぁ?」


 俺は無意識のうちに立ち上がっていた。


「何かあったのですの?」


「……ちょっと手、洗ってくる」


 それだけ言ってそのメイドが消えた方に歩いて行った。不自然だっただろうか?だが今の俺ではあれが限界だったと言わざるを得ない。

 スタッフオンリーの扉の前で待っていると、俺が入店したときに出迎えたメイドが出てきた。


「ご主人様、いかがなさいましたか?」


「ここに今、指宿柚奈が入っていなかったか?」


「な、なぜそれを……」


 目の前にいる黒髪のメイドは額に冷や汗を流し、身体をわなわなと震わせている。

 やはりか。これは面倒なことになったな。だが黒髪メイドの反応を見る限り彼女は、委員長氏がここで働いていることを他人に知られたくない、ということを知っているのではないだろうか?それなら――。


「落ち着いてくれ。俺はあいつがここでメイドしてる事実を隠すために来たんだ」


 正確には《まゆうかふぇ》で働いていることは知らなかったが……。


「そ、そうなのか」


 メイドモードが剥がれ素が出ている。


「委員長氏の秘密はこの前知ったばかりだ。正直驚きはしたが俺は別にメイドをしていても気にはしない。ただこの事実がクラスや学校に広まった場合、コスプレについてよく思わない奴もいるから、最悪居場所がなくなる可能性もある。だからこそこの事実は隠蔽しなければならない」


「……つまり、今の君の話を聞くと学校で事実を知っているのは君だけなのかい?」


「実はもう一人いるが……まあ、その人は問題ない」


 自称王子様のことを話すのも面倒なので説明は省いた。


「君のつれは二人だったね?」


「元々は一人の予定だったが、成り行きでもう一人増えた」


 黒髪メイドはふむう、と唸っている。


「君は……」


「ん?」


 何かを考えながら話しかけてきたが……。


「すみませーん、注文いいですか?」


 諏訪部の声だ。


「いや、何でもない。とにかく今はお客さんも少ないから彼女は裏に居させておくよ。君も戻るのが遅いと怪しまれると思うから、一旦席に戻った方がいい」


「わかった、こっちも早めに切り上げて帰るように促してみる」


「いや、せっかく来てもらったんだ。さっさと帰ってしまったら来た意味がなくなってしまうだろう?」


 何言ってるんだ?と言おうと思ったが、彼女の顔を見て改めた。優しい顔をしていた。客……いやお客様が来てくれること笑顔で楽しんくれていることに、心の底から嬉しいという気持ちが伝わってくる。

 この人はただここで働いているだけじゃないような気がした。


「そうだな。友人たちも楽しみにしてたみたいだし、自由にさせとく」


「うん、そうしてくれると嬉しいな」


 俺は二人の待つテーブルへ戻った。よしこれで大丈夫だろう。もう何も心配することはない、はずなのだが嫌な予感はまだ残っていた。

次回は早めに上げだいと思います。

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