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メイドインカフェ

 翌日から俺は会長が提案した生徒の勧誘をするため一年の教室や近くの廊下などを彷徨いていたが、見た感じでは"金持ちでコスプレに興味のある"というカテゴリーに該当する都合のいい存在など見当たらなかった。

 まあ、それもそうか。そんな奴が入ればすぐ噂になるだろうし、当然と言えば当然だ。

 であればどうするか。片っ端から生徒に話しかけ該当者を探し出すローラー作戦も考えたが、この学校は一クラス三十人前後と特段多いわけではないが問題はクラスの数だ。


 世間で何故か有名な高校でこの辺りでは珍しく在籍生徒数一五〇〇人を越えるマンモス校だ。問題のクラス数が一学年十七クラスもあるというのだから驚きだ。

 単純計算で一学年五〇〇人超という、そんなに必要かと思うほどの数だけにローラー作戦を実行する気にはならなかった。

 だが問題はそれだけではない。探す方法は後々考えるとしてまずは現在進行形の問題を解決しなければならない、と思い俺は肩越しに後ろを見る。


「何でついてくるんだ?」


「あなたが監視してればいいって言ったんじゃない」


「確かにそんなようなことは言ったが、それが俺である必要はないだろ」


「串木野先輩は神出鬼没で何処にいるのかわからないし、教室にいたとしても三年生の中に入っていくなんて私には……」


 ん? 最後のほうが聞き取れなかったが……まあいいか。


「俺を監視対象に選んだのはわかった。だがだからといって、ついてくる必要はないだろ。監視すればいいんだからな」


「そ、それはそうだけど……べ、別にいいじゃない! どうせゲームばっかりしてるあなたのことだから友達なんていないんじゃないかと思っただけよ」


「あんたには関係ないと思うが?」


「か、関係なくはないわよ。クラスのその……交友関係を知って、孤立している人がいないかを見るのも……クラス委員長の、仕事なのよ」


「俺は間に合ってるから大丈夫だ」


「そ、それでも!それでも……私はあなたが気になるから……」


「は?」


「いやいやいや!い、今のは、い、異性としてじゃなくて、えぇとそのぅ……」


「ゲーマー?」


「そうゲーマー! じゃなくて! ……委員長としてっていう意味よ! それ以上でも以下でもないの! わかった? と、とにかくそういうことだからバイバイ!」


 そう言って教室に戻っていった。


 バイバイって、また教室で会うのに……。っていうか途中からものすごい勢いで動揺してたけど大丈夫か? 転んで怪我とかしなければいいが……。


「なんというか……結局何だったんだ?」


 クラスの模範になるべき生徒が走って行った廊下を、俺はチャイムの音を聞きながらゆっくりと歩いていった。


 そして翌日も……。


「はあ……」


「どうしたのよ」


 傍から見れば悩みを抱えた男子生徒と相談に乗っている女子委員長という図ができているのかもしれないが、残念ながらその悩みを作っているのがいつの間にか隣を歩いている委員長氏である、という事実を誰も知るはずがない。

 一般的な男子であれば諸手を挙げて喜ぶシチュエーションだとしても、正直俺には諸手どころか片手を挙げられる自信すらない。

 何故ついてくる?と聞いても昨日と同じ答えが反ってくるだけだし、変な質問をしたらまた一人で暴走する可能性も否めないので今日は大人しくしているのだが……。


「悩みがあるなら聞くわよ」


「いや、金持ちいないなあと思って」


「それはいないでしょ。そういった人達ならもっと有名な学校に通うはずよ」


「だが何事にも例外は存在する」


「まあそうだけど……」


「そう言えばあんた同好会に金持ち勧誘するの反対じゃなかったか?」


「どうせそんな人現れないと思ったのよ」


「なるほどね」


 それから数分歩いたところで「教室戻るわよ」と言って半ば強制的に自席まで連れていかれた。

 座って落ち着こうとため息をする。何を見ていたのか後ろから楽しそうに声をかけられた。


「なあなあ、最近彼女と何してるんだぁ?」


「気になるか?」


 相手に合わせてわざと面白い話題であるかのように振る舞う。


「あ、ああ気になる気になる」


 そこでニヤニヤとした笑みから一気にスッと真顔に切り替える。


「ただの部員勧誘だ」


「部員勧誘?お前何か部活入ったのか」


「まだ仮入部だけどな」


「指宿さんと一緒に?」


「まあな」


 これ以上聞かれるとあいつがコスプレ同好会に関わっていることを隠すのが難しくなってくるため、俺は強引に話題を変えた。


「ところで諏訪部は最近何処で何してるんだ?休み時間になったらすぐ居なくなるし、放課後だって気づいたらもう外にいたりするし」


「オレかぁ? オレは……」


 なんだ?


「オレはそのことについてはまだ言うわけにはいかないんだ。ワリィな」


「いや別に構わない」


 ただ話題を変えたかっただけだしな。


「それよりさっきの話がまだ終わってないぞ」


 なっ!?こいつなかなか侮れないな。


「おっと、先生が来たみたいだぞ。さてゲームゲーム」


 ちょうど先生が教室に入ってきたため、授業を受けるふりをしてゲームを起動し態勢を整えた。


「また後で聞くからな」


 諏訪部も諦めが悪いな。ここは何か策を考える必要がありそうだ。

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