表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

AtoZ短編集

世界の話

作者: 原雄一

 コメディーのような、コメディーじゃないような……。

 この世界には、夜が来ない。

 昼が来ないのではない。『夜』が来ないのだ。それはつまり、ずっと昼である事を示す。

 Iはそれを不思議に思っていた。Iの職業は『勇者』で(この世界は魔王に支配されている)、職業柄なにか変な事があると全て魔王の所為にするのが常だが、夜が来ない、と言うのは一体どういう事か。勇者Rも魔王の心理を測りかねているのだった。

 勇者Iはパーティーを組んでいる。賢者、戦士、剣士の三人。そして自分だ。この世界では、どうやらこれ以上増えないらしい。

 更に、不思議な事はまだある。どうも上手くいきすぎているような気がするのだ。自分がやられそうな時は、敵が他の味方に攻撃したり、死んでも都合よく『蘇り草』が手に入ったり、と言う訳である。

 その上、一定まで進むと、一旦進めなくなる。その状態が一週間続き、一週間すると急に動けるようになるのだ。これも魔王の力か、とも思うが、どうも思惑が読めない。動きを止めたいならずっと止めておけばよいのに。

 勇者Rはある日、道端で拾った『ぎゃぐまんが』と言う奴を読んでみた。これがなかなか面白い。フクロウのようなキャラクターがツッコミ役の友人と共にハチャメチャするのだが、ギャグが冴えているしツッコミもいい。コマ割りも上手だ。

 賢者たちにも好評だったので、勇者Iは『まんが』がたくさん載っているという雑誌を購入した。一週間に一度発行されるタイプのもので、一回買ってしまうとなかなかやめられないのだ、と言うのはあとで知った事である。

 中には自分たちのような冒険ものもあった。しょっちゅう読んでいる訳にもいかないので、休憩のときだけ読む事にしているが、一話一話が短いので割とさらっと読める。それがまたよかった。

 週刊誌を買い始めて一か月ほど。勇者Iは不意に気がついた。

 自分たちの住んでいるこの世界もまた、漫画なのではないか、と。

この雑誌に載っている漫画はどれも、夜のシーンがない。それはつまり、夜が来ない事を示す。この世界もそうなのではないか。一週間に一度しか動けないのも、これが週一連載である事を暗示しているのかもしれない。

勇者Iはその予想を立て、それはやがて確信に近づきつつあった。

 そして同時に、漫画には『作者』と『主人公』がいるのだ、と知った。この世界が漫画だとすれば、主人公は恐らく自分だ。そして、主人公が死ぬ漫画など見た事がない。

 つまり、何をしてもやられる事はない、と言う事だ。少なくとも、パーティーは生き残る事ができる。

 勇者Iは調子に乗って、バッサバッサと敵を切り刻み、大してレベルを上げる事もせず魔王の城に辿り着いた。


   * * *


『次のニュースです。えー、本日、有名な漫画家で現在「クエスト!」と言う漫画を連載中のS先生が、自宅で首を吊って死んでいるのが発見されました。死亡推定時刻は本日未明、原稿を取りに行った編集者が発見したそうです。えー、警視庁は自殺の線が強いとして捜査を……』


   * * *


 そびえ立つ城を前に、勇者Iは恐怖など感じていなかった。ここが漫画の世界であり、自分が主人公である事を知っているからだ。ならば、死ぬはずがないと思うのは当然の事だろう。

 勇者Iは魔王の城に足を踏み入れた。

 やがて魔王の前に辿り着く。

「よく来たな、勇者よ……。世界を平和にしたくば、わしを倒してみるがよい!」

 魔王が言った。戦闘モードに突入する。


 まおう の こうげき!

 デスハンマー!


 瞬間、勇者Rの身体に凄まじい衝撃が走った。


 ――めのまえ が まっくら に なった……

 2012/09/18 修正

 R→I


 2012/10/13 誤字訂正

 三行目、カッコの中

 真王→魔王

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ