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一/恋、願う(希う)

 童貞とは、いつ卒業するかではなく、誰で卒業するかが重要である――と、誰かが言った。というか僕だった。

 言い訳じみているかもしれないけれど、これは大事なコト。決して軽視できない問題だ。

 友達やクラスメイトが次々と大人の階段を昇っていくという焦りに駆られて、一時のテンションに身も心も任せてその辺のどーでもいい凡庸の塊のような女性と合体を果たす……なんて事は死んでも避けたい。いや、死ぬのは嫌だけど。

 大体、童貞は早めに卒業した方が良いという風潮は誰が生みだしたのだろうか。

 きっと僕とは縁の無い、悪い意味で頭の悪そうな奴に違いない。

 そして何故、在学している者には悲哀の眼差しを向けられるのだろう。正直、放っておいて欲しい。僕はまだ卒業するには単位が足りないだけだ。

 そういう、卒業しなければマズいなんていう世の中の固定観念には反吐が出そうになる。

 僕は絶対に、心に決めた女性ひとに初めてを捧げると決めているのだから。


 ところで僕は眼鏡をかけた女性、いわゆる眼鏡っ子に魅力を感じて止まない。ともすれば、性的な興奮を覚えるほどだ。

 たとえどんな美人であっても、眼鏡をかけていなければセミの抜け殻に等しいとさえ思っている。

 何がどうブッ壊れてこのような趣味というか性癖となったのかは、正直言って全く心当たりが無い。気付いたら眼鏡っ子が好きなってしまっていたのだ。そこに眼鏡っ子がいる、だから眼鏡っ子が好き。理由はそんな感じでも構わない。

 まあとどのつまり、僕は僕の初めてを眼鏡をかけた女性に捧げたいと常日頃から至極真面目に考えているのである。

 しかし現実は厳しい。運命の人というものは思いの外そう簡単には現れてくれないものだ。

 いや、だからこそ『運命の人』と言えるのかもしれない。そうホイホイと現れてしまっては、ただの人だ。一般人だ。

 なればこそ僕は待ち続けよう、運命の人との出会いを。胸躍るボーイ・ミーツ・ガールを。

 たとえ友達やクラスメイトに彼女ができようとも、僕には関係ない。

 たとえ友達やクラスメイトが彼女と夜な夜なベッドをギシギシと軋ませていようとも、僕には関係ない。

 何故なら、僕にはいつしか現れるであろう運命の人がいるのだから――。

「――要するに、ひがんでるだけだろお前」

「うんそうだね」

 ……まあ、何というか。

 ここまで的確に言い当てられると、人って何も言い返せないんですね。

 そう。大志の言う通り、僕はメッチャひがんでいた。

 白状すると今すぐにでもリア充共には爆発して欲しい。日常生活に支障をきたさない程度にたくさん骨折していただきたい。


 高校二年生の夏。

 未だに、僕こと一之瀬公平いちのせ・こうへいには、女性経験というものが無かった。

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