旧条紀香—キュウジョウノリカ― ④
四年前。二〇一三年九月。
息子が自殺してから、私も後を追おうと必死になった。全てを話すことは誰にもできなかった。旦那が私を引き留めてくれた。最愛の一人息子を犯した自分をこれ以上ないほどに責めた。警察へ出頭し、自首まで考えた。それでも、あの不埒な行動を警察に話すことは、死ぬよりも苦痛に思えた。
それぐらいの時期に、私は乳がんになった。左胸を全摘出した。どうしてか、みすぼらしくなった私の身体が私を落ち着かせてくれた。いっそ下腹部を縫いきってしまおうかとも思った。踏みとどまるための、全摘だったのかもしれない。
冷静さを徐々に取り戻し、私は自身が置かれていた状況に違和感を覚えた。そして、久しぶりに戸田くんに連絡をした。自分の罪を、唯一の友人である戸田くんに話した。彼は笑っていた。「こんなことがあるのか」と言っていた。私は一つの精神的病気だと診断された。名は『ソリロクイ症候群』。初めて聞く病名だった。戸田くんも、医学上はまだ存在していないことになっていると言っていた。独占欲の制御に困難を覚え、精神がフロイトの精神領域説によるところにエスに支配される状態。大人の精神退行の究極形。戸田くんはそう教えてくれた。
以降私は、ソリロクイという病について研究した。時間の全てを費やした。准教授から教授へのステップアップは捨てた。息子の辛そうな顔が何度も頭を過ぎった。壊したのは私だ。殺したのは私だった。




