旧条紀香—キュウジョウノリカ― ③
五年前。二〇一二年六月。
私が母になって、十五年の歳月が流れた。同様に、准教授という地位も確立した。しかし、私はこんなタイミングで壊れてしまった。四十の女にしては、少々派手な壊れ方をした。
仕事の方は順風満帆だった。家族との関係も一時期までは良好で、文句なしの円満な家庭、そのはずだった。誰にも言えない秘密ができて、その幸福はゆっくりと崩れ始めた。私は、最愛の一人息子に恋をしてしまったのだ。
行きすぎた過干渉をよく旦那に咎められた。非行とはかけ離れた息子だと分かっていたものの、どんな相手と仲がいいのか気になって仕方がなくなった。
高校受験のタイミングで、携帯を買って欲しいと息子に強請られた。最新のスマートフォンを買い与えると、すぐに友人とやりとりをするようになった。私は、こっそりとスマートフォンをチェックした。やりとりをしていたのは友人では無かった。息子は、ネットいじめの被害にあっていた。愛する息子はクラスで「ヤリチン」という綽名で呼ばれていた。
私の過干渉が気づいた問題だった。すぐに旦那に相談したが、取り合ってはくれなかった。私より十も上の旦那は、男ならそんなもの、下ネタで盛り上がったりするもんだ。と一蹴してしまう。私は許せなかった。息子を卑猥な綽名で呼んでいる連中がいることを。
どうしてまたそんな不埒な綽名が息子についてしまうのか気になった。息子が部屋を空けている間に、私は私物を漁った。引き出しやベッドの下からは、大量のコンドームと避妊用のピル、それに覚醒剤が発見された。
私は息子を問い詰めた。「スピードは先輩に貰ったんだ。ピルは、俺の意志じゃない」中学生とは思えない語彙の数々。息子の貞操と倫理感を疑うべきだった。最初に薬物の使用を叱咤するべきだった。最近じゃ、息子のことが不安で毎晩私は泣いていた。息子を前にした今ですら泣いていた。泣きじゃくる私が息子に問うのは、「どんな女の子としてるの」という、母親らしからぬ質問だった。
息子が顔を歪めていた。私も自分を抑えられなかった。息子が同級生を犯す姿を想像するだけで気が狂った。甘い言葉を同級生に言って欲しくはなかった。お母さんだけだと、私の下へ駆け寄ってきて欲しかった。
「なんでそんなことが大事なんだよ」
「大事に決まっているでしょ!」
「母さんも、そっち側かよ」
「どういうこと……?」
息子は泣いていた。苦しみ故に薬に手を出したと言っていた。避妊具たちは、息子に群がる女性達の未来を心配してということだった。息子は「俺、モテ過ぎちゃうんだよね」と笑っていた。近寄ってくる女性は、息子との深い繋がりを求めていた。息子はそれが嫌だと言った。だから逃げた。安寧の場所を求めた。家にすら、それは無かった。息子曰く、私はその女性たちと同じ顔をしていたらしい。「俺を独占しようとする目」息子をヤリチンにした女性達は、皆息子を溺愛していた。狂喜的なほどに。私もその一人だった。息子の涙を見て、欲情していた。そのまま、旦那が出張中なのを良いことに、休日の白昼夢にさらされながら、息子を無理矢理犯していた。エクスタシーは私の脳漿を刺激し、蕩けるような快楽に満ちていた。




